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ランカーズエイジ  作者: 朝倉牧師
ランカーズ編
7/98

完全廃棄地区 二話

 完全廃棄地区の続きになります。

 楽しんで頂ければ幸いです。



「それじゃあ俺達はAGEの事務局に向かう。索敵とGEの監視、頼んだぞ」


「何か異常があればすぐに知らせるから。あの……無茶だけはしないでね」


「ここにもGEが攻めて来る可能性だってあるんだ。それを忘れるなよ」


 何故此処に普段は同行させる神坂や霧養を残したのか、その事を楠木はまだ理解していなかった。


 これだけ多くの物資が残されているにも拘らずAGEに登録している部隊が滅多に回収に来ない理由、それは此処にいると噂されるFタイプのGEが原因だからだ。


 魔物類幻想目魔物魔法生物種、及び魔物類生物目魔物幻想生物種、通称F。


 ファンタジー小説に出て来る様な魔物そのものの姿をしており、サイズは小型(ライトタイプ)GEから大型(ヘビータイプ)GEまで存在し強敵である場合が多い。


 また、確認されているドラゴンタイプでは、口から吐く炎で包まれると焼け死ぬ事は無いが、その炎が消えた時その炎で包まれていた人間が全員石の彫刻に変わっていたという報告もある。


「本当にこの場所にFなんているんですか?」


 普段は無口な竹中が珍しく凰樹にそんな事を聞いて来た。

 

「ああ、その可能性は高い。誰かに退治されたって話は聞かないしな」


「そうでんな。出来れば会いとうないですが、こればっかりは運次第ですし。その為に蒼雲はん達を残しはったんしょ?」


 こちらのメンバーはFに遭遇してもそれ程問題では無い。


 最悪、高純度の特殊弾を竹中に使わせた上で、凰樹が特殊マチェットで斬り刻めば討伐が可能だろう。


 しかし、残している蒼雲、楠木、霧養の三人は若干不安が残る。


 最悪、車で逃げてくれればいいんだが、その為に運転手として神坂と霧養を残し、撃退と牽制用として霧養にも割と高純度の特殊弾が詰まったマガジンを渡してあった。



 凰樹達は彼方此方が欠けた石像の立ち並ぶメイン通りから少し離れ、入り組んだ裏通りへと進んでいく。


 完全廃棄地区(かんぜんはいきちく)には人間が滅多に近寄らない為、GEと遭遇する事は少ない。


 逆に犬猫や鳥などの動物が集まる場所にはGEの出現率が高く、ペットショップや犬猫の溜まり場になっている場所などは特に警戒が必要になる。


「AGEの事務局は元コンビニの居抜きを利用した建物だったな。外観で見分けが付きそうなんだが……。アレか?」


「間違いなさそ~ですね~。あの外観、学校前のコンビニとそっくりです」


 AGEが設立した経緯からも分かるが、民間企業の援助や募金で運営していた初期の事務局には基本的に予算など掛けられず、国からの援助が本格的に始まった二〇一一年前以前に出来た事務局は、コンビニなどの居抜きや立地条件の悪い小さな店などを利用している。


 出来た当時はソコソコ栄えていたこの地区でさえコンビニ後の居抜きを利用していた辺り、当時のAGEに対する期待度が窺い知れるという物だ。 


「GEの反応は無し、ドアも……開いてるな」


「この辺りはGEの襲撃があった時間が、お昼って話ですからね。入り口とかは開いてると思いますよ~」


 AGE事務所の中は既に荒らされており様々な書類が机の上や床に散乱し、武器庫に収められていた武器や特殊弾などは残されていなかった。


 特殊弾などはこの時代の物よりも、現在使われている物の方が精度も威力も上な為に好んで使う者はいないが、弾幕としてバラ撒く為に回収する者は存在していた。


「パソコンのハードディスクも抜かれてまんな。めぼしい物は……」


「引き出しの中にある小物入れの裏に、メモが張ってあるな。二六・一三・三七・一四……。金庫の番号か?」


「武器庫の奥に金庫があるね。まだ無事みたいだけど……」


 武器庫の奥には縦長の金庫があったが、何故かそこだけが不自然に無傷なままで残されており、金庫には【試作兵器】と書かれていた。


 武器庫の中にあった鍵が掛かっていないロッカーにも、【試作兵器一号】・【試作兵器二号】などと書かれたメモが張ってあり、その前にはおかしな形の銃や、大き目のナイフなどが転がっていた。


「……アルミが使われていない旧型のGE用ナイフ? こっちは七発しか装弾できない上にコッキングのハンドガン……。ガバメントっぽいけど」


「この街が襲われた時期は、まだ強化型の政府公認の特殊改造タイプが開発されていない。特殊弾の威力を上げる為に色々知恵を出して試作を重ねてたみたいだな……」


 おそらく、この試作品(ゴミ)の山と、残されていた資料から金庫に納められている物に価値が無いと判断し誰も手を出さなかったのだろう。


 窪内が金庫の鍵を発見し、先ほどの番号を合わせて金庫を開けると、中から大量のパーツ、それに鉄パイプと銃のパーツを組み合わせて作られたグレネードランチャーもどきが出てきた。


「わざわざ加工した専用弾(カート)まで用意したのか……。しかし、この重さに見合うだけの戦力になるとは思えないな……」


 そんな事を考えながら、手渡されたそのグレネードランチャーもどきを調べていた凰樹は、ある事に気が付いた。


 凰樹は専用弾(カート)とグレネードランチャーもどきを手にしてある答えに辿り着く。


「コレは拠点晶(ベース)破壊用の試作兵器だ。この構造だと多分ゲージをかなり消費するし、拠点晶(ベース)を破壊するなら此処までする必要は無い筈だけど」


拠点晶(ベース)破壊用でっか? そりゃ凰さん位にしかその価値は分からんでしょ」


 拠点晶(ベース)破壊用の兵器は、基本セミランカーかランカーが所属する部隊でしか申請が通らない。


 その為、セミランカーが所属しない部隊ではそれがなんなのか理解できず、所属する部隊ではこんな試作品に価値を見い出す事など無く、金庫に手も触れずに放置されていたという事だ。


 それに加え、現在では拠点晶(ベース)破壊用兵器の改良速度が速い為、五年程で消費ゲージが半分以下の拠点晶(ベース)破壊用兵器が出現し、それ以前のモデルを使う者はいなくなる。


 その際、旧型モデルを返却すれば、格安で新型モデルを入手できる他、それを使用して破壊した拠点晶(ベース)のデータなどを提出すれば報奨金なども貰えたりする。


 こんな個人が開発したような試作品では、拠点晶(ベース)破壊用兵器の新型と交換して貰える事など無いがその変わった構造に興味を持ち、凰樹はその試作兵器を持ち帰る事に決めた。



◇◇◇



 窪内は試作品のロッカーの中にあった大量のパーツと、コッキングのハンドガン等をカバンに詰める。


「他にはめぼしい物は無さそうでんな。まあ、この大量のパーツも使い様でしょ」


「あまり収穫は無かったけど、こんな物だろうな。まあ、大量の食料品が入手できたのは大きいかも知れないが」


「大収穫ですよ~♪ あれだけお砂糖や蜂蜜があれば、たっくさんクッキーが作れますよ~」


「クッキーを作るなら小麦粉やバターも必要だろう? 次の申請の時に部隊の食糧用として小麦粉やバターを発注してもいいぞ」


「ホントですか? すっごく助かります♡ 前に貰った小麦粉やバターもお店で買うより品質も良かったですし、それなのに量も多くて……」


 セミランカー辺りが所属する部隊は、整備や支援系などを重視している為、大所帯な場合が多い。


 その為、小麦粉を初めとする食糧に関しては、キロ単位の発注も可能だ。


 以前別の部隊で量産体制が整っている為に比較的価格の安いジャガイモを発注した時、間違えて桁を一つ多く入力した為に五十キロを超える大量のジャガイモの詰まった箱が届き、その処理に苦労したという話まで存在する。


 対GE民間防衛組織の資材部に物資の発注をするには、GEを討伐して撃破ポイントを貯めるか、副産物である魔滅晶(カオスクリスタル)を対GE民間防衛組織に提出し、発注申請に必要となる【ポイント】と交換して貰う必要がある。


 拠点晶(ベース)を破壊すればそれだけでその部隊には最低百万ポイントが支給され、破壊した功労者にも同額である百万ポイントが支払われる。


 更に、拠点晶(ベース)が中継する支配地域が大きければ追加報酬まで支払われる事があり、危険度の大きな地区にある拠点晶(ベース)を破壊出来れば、それだけでその部隊は最高五百万ポイントほど入手する事が出来た。


 この部隊が毎回大量の特殊弾を消費しても経済的に破綻しない理由は、拠点晶(ベース)を単独で破壊できる凰樹がいるからに他ならない。


 もし他の部隊が同じような運営法をすれば、ひと月も経たずに蓄えていたポイントを全て吐き出し、正規ルートでは無く怪しい裏ルート製の格安特殊弾等に手を出さなければならないだろう。


「緊急連絡、緊急連絡!! 百メートル先のペットショップ跡に中型(ミドルタイプ)GEと思われる紅点を確認。数は一、単独行動するなんて珍しいから、Fの可能性もあります」


「こちらの端末でも確認した。極力戦闘は避けるが、気付かれた場合は応戦する。いつでも退却できるように準備してくれ」


「了解。非常時特例で霧養にもう一台の車の運転を任せます」


「霧養に運転は仕込んであるが、戦闘区域を離脱後に俺が運転を変わる。無茶だけはするなよ」


「了解っス!!」


 通信を終え、其々が武器を手にして慎重にAGEの事務局を後にした。


 GEが何を頼りに人間を初めとする生物を察知しているのかは分からないが、MIXなどは組み込まれた素体の能力に依存していると考えられている。


 しかし、Fだけは元の生物が本来地球上に存在しない為、どんな能力を持っているのか戦うまで分からない。


「紅点に動き!! 凰さん、やっこさんに気付かれてますわ!!」


「らしいな、周囲を警戒、他のGEが押し寄せる前にこいつを片付けるぞ」


「「「了解」」」


 凰樹達は周りにGEの存在を示す紅点が無い事を確認し、大通りに続く十字路の前で迫り来るGEを迎撃する事にした。


 待ち構える路地にはただの石像()と化した元人間の障害物が多数。


 路地の正面に姿を現した中型(ミドルタイプ)GEは、その石像を砕きながら凰樹達へと向かって突進してきた。


「GEを肉眼で確認。過去のデータからF、魔法生物種蜘蛛型リビングアーマーと判明」


 幻想目魔物魔法生物種、【リビングアーマー】。


 これまでに人型・虫型・動物型・竜型が確認されており、特殊弾が利きにくい装甲で身を包んでいる事もあり、中型(ミドルタイプ)GEであっても並みの大型(ヘビータイプ)GEより手強いと言われている。


 ドラゴン型の炎のブレスの様な特殊能力は持っていないが、襲われた者の多くは、リビングアーマーの頑丈な装甲で覆われたその身体に圧し掛かられると身動きが取れず、碌な抵抗も出来ずにゲージを削られてそのままの姿で石の彫刻に変わっていく。


「凰さん、装甲の隙間から覗く関節部や、胴体にある目玉が弱点らしいですわ。ゆかりんもそこ狙ってくださいな」


「了解」


 竹中はPSG―1に高純度の特殊弾が詰まった弾倉(マガジン)を差し込み、蜘蛛型リビングアーマーの足の関節に狙いを付けた。


 その竹中に合わせて伊藤がフルオートで胴体を撃ちながら横に二メートルほど移動し、そこで立ち止まってマガジンが空になるまで特殊弾を撃ち続けた。


 蜘蛛型リビングアーマーは狙いを伊藤に変える為に一瞬動きを止め、僅か数秒、脚を同じ位置に留めた。


 竹中はその僅かな隙を逃さず、脚の関節の一番柔らかい部分に高純度の弾丸を撃ち込み、その僅か一発で蜘蛛型リビングアーマーの右前脚を根元から切り離した。


「ナイスです」


 窪内も自前で用意していた高純度弾の弾倉(マガジン)に切り替え、胴体に出来た赤黒い傷痕目掛けて特殊弾を叩き込んだ。


 特殊弾が激しい光と共に弾けて蜘蛛型リビングアーマーに出来た傷痕を大きく広げ、頭胸部の半分と隣接していたもう一本の右第二脚も吹き飛ばした。


「もう少し頭胸部を削ればこいつは終りだ。傷痕目掛けて集中砲火しろ」


「りょ~か~い」


 伊藤も空になった弾倉(マガジン)を差し替え、普通の純度の特殊弾を傷痕目掛けて撃ち始めた。


 凰樹達が、脚を二本も失いバランスを崩して動きが鈍くなった蜘蛛型リビングアーマーに苦戦する筈も無く、凰樹が特殊マチェットを使うまでも無くあっけないくらい簡単に幻想目魔物魔法生物種蜘蛛型リビングアーマーはソフトボール大の超高純度の魔滅晶(カオスクリスタル)を残して消滅した。


 これだけの大きさの超高純度の魔滅晶(カオスクリスタル)であれば、少なく見積もっても数十万ポイントと交換できるだろう。


「こちら凰樹、Fの撃破完了。何か動きはないか?」


「もうですか? えっと……、ペットショップ方面から五百メートル先に紅点多数出現!! そいつ、死んだ瞬間に仲間呼ぶタイプみたいです!!」


 凰樹の持つ端末にも無数の紅点が映し出された。


 数は少なく見積もっても三十以上、それがこの路地に向かって突き進んでいた。


「ええい厄介な。急いでこっちに車を回してくれ。あんなに運よくFを退治できるなんて思えんからな」


「今大通りを走ってます。……見つけました、急いで乗り込んでください」


 凰樹と窪内は荷物運搬用のライトバンタイプに荷物を投げ込み、ドアを開けて伊藤と竹中を座席に押し込んだ。


「霧養は何処だ?」


「大通りの入り口です。あ、こっちに来ました」


 運転に不慣れな霧養は通りに点在する石像を避けながら、ゆっくりと近づいてきた。


 普段であればあの慎重な運転は評価できるのだが、今のような非常時にはそんな悠長な事を言っている暇はなかった。


「窪内は助手席に乗って蒼雲達と先に離脱しろ。俺は霧養と運転を変わって後から脱出する。合流は国道沿いにある例のレストラン跡だ」


「了解……、でも大丈夫でっか?」


「手荒な運転なら任せとけ、乗ってるのが霧養だけなら問題無い」


 凰樹は大通りをゆっくり走るもう一台のライトバンに向かって走り、十秒程でライトバンの傍まで辿り着いた。


「運転を代われ。急いで脱出するぞ!!」


「了解っス」


 霧養はすぐに運転席から降り、そのまま反対側に回って助手席に乗り込んだ。


 運転席に座った凰樹は霧養がシートベルトをした事を確認し、その場で反対方向に転換し、アクセル全開で大通りから脱出した。


 凰樹が運転するライトバンが大通りを抜ける直前、後方の十字路に無数の蛛型リビングアーマーが姿を現してそのまま大通りを埋め尽くしていた。


 あのまま蒼雲の後を追って反対側に抜けていたら、十字路付近であの蛛型リビングアーマーの群れに巻き込まれ、凰樹と霧養は新たな石像の仲間入りをしていた事だろう。


「間一髪って所か。映画だと良くあるシーンだが、体験するのは御免蒙(ごめんこうむ)りたい所だな」


「まったくっスね。俺の運転、遅くてすんません」


「いや、普段ならあの位慎重な方が良いんだ。俺も蛛型リビングアーマーがあそこまで動きが素早いとは思わなかった」


「というか、Fがあんなに大量に存在するなんておかしいっスよ。レアなんじゃないんすか?」


 今までF、しかも中型(ミドルタイプ)GEがあそこまで群れで存在しているという報告は聞いた事が無い。


 今回の一件を報告すれば、この第十二完全廃棄地区は最高レベルの危険区域に指定され、遺棄物回収(はいひんかいしゅう)はもちろん、少数でのGE殲滅作戦も認められなくなる。


 隣接した区域の危険度が最低でもワンランク繰り上げられ、様々な問題が持ち上がる事だろう。


「あそこのエリアを支配する環状石(ゲート)は、県内でも最高のゲート(レベル七)だ。次からは支配する環状石(ゲート)は良く調べておかないといけないな」


「俺達の居住区域がゲート(レベル二)で良かったっすよね。Fじゃなくてもあんな数の中型(ミドルタイプ)GEの群れなんて、命が幾つあっても足りないっスよ」


「それは同感だな。実は俺達の居住区域だが、KKS二七六とKKS二七三の拠点晶(ベース)を潰せば、環状石(ゲート)から続く永遠見台高校(とわみだいこうこう)方面の進行ルートが全て無くなる」


「マジっスか?! それで前回の攻撃目標にKKS二七六を選んでたんっスか? 一言そういってくれたら……」 


 少し前に発表があったばかりだが、支配エリアに出現するGEの数やタイプは大元である環状石(ゲート)のレベルによって決まる。


 ゲート(レベル一)環状石(ゲート)は支配するエリアの場合、中型(ミドルタイプ)GE十匹が最大数とされ、絶対に大型(ヘビータイプ)GEは出現しない。


 これがゲート(レベル二)環状石(ゲート)は支配するエリアの場合中型(ミドルタイプ)GE三十匹が最大数とされ、二~三匹の大型(ヘビータイプ)GEの出現が確認されている。


 エリア内の中型(ミドルタイプ)GEが一度一匹残らず襲いかかってきたとしても、あんな光景は見る事が出来ないだろう。


 また、撃破したGEは即座に補充される事が無いらしく、仮にゲート(レベル一)環状石(ゲート)のエリア内に存在する中型(ミドルタイプ)GE十匹を倒しきった場合、次に中型(ミドルタイプ)GEが姿を見せるのは二週間後と言われている。


 その空白期間を狙い、環状石(ゲート)内にある要石(コア・クリスタル)を破壊しようとした部隊はいくつかあるが、いまだに成功した者はいない。


 要石(コア・クリスタル)を破壊するには現在購入可能な拠点晶(ベース)破壊用の特殊ランチャーでは威力が足りず、ゲート(レベル一)要石(コア・クリスタル)を破壊する場合、最低でも三つ以上の拠点晶(ベース)破壊用の特殊ランチャーを短時間で撃ち込むしかないと言われていた。


 防衛軍で使っている要石(コア・クリスタル)破壊用の特殊ランチャーは一般的なAGEには支給されず、トップランカーの所属する部隊にのみ発注申請が認められているが、トップランカーの所属する部隊ですら環状石(レベル一)要石(コア・クリスタル)の破壊に成功した者はいない。


「KKS二七六方面の拠点晶(ベース)周辺にGEが多いのと、拠点晶(ベース)に向かうルートがきついのは間違いない。それにKKS二七六方面の拠点晶(ベース)を破壊できたとしても、KKS二七三に永遠見台高校(とわみだいこうこう)方面のGEが集中するから拠点晶(ベース)の破壊がより困難になる」


 凰樹の部隊だけでは撃破するには難しく、地道にGEの数を減らしていくとしてもいつまで掛かるか分からない。


「その時は何処かの部隊に協力して貰うしかないっスね」


「それが出来りゃ楽なんだが……、各部隊の思惑があるし素直に協力してくれる部隊なんぞありゃしないからな……」


 即席の共闘部隊は些細な事で簡単に破綻する。


 様々な部隊でAGEとして活動し、今まで何度も煮え湯を飲まされて来た凰樹はその事を十分過ぎる程知っていた。


 また、無事に作戦が終了したとして、報酬の分け前で揉めたり運悪くGEに破れて石の彫刻に変わり果てた隊員に対する見舞金を求めたりと、それはお前の作戦指揮が(まず)かったからだろうと言いたいのをグッと堪え双方が納得できるだけのポイントを差し出したりもしていた。


「後二ヶ月か……」


 凰樹はあの時の竹中の顔を思い出し、どうにかしてあの忌々しいゲート(レベル二)環状石(ゲート)要石(コア・クリスタル)を破壊できないか、この日から綿密に作戦を練り始めた。


 一介のAGE隊員に過ぎない凰樹がひとりで考えたとして、何とかなる問題でもなかったのだが……。





 読んで頂きましてありがとうございます。

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