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ランカーズエイジ  作者: 朝倉牧師
居残り組編
63/98

小妖精の少女達 一話

永遠見台付属中学の小妖精達の話になります。

楽しんで頂ければ幸いです




 小妖精(プチ・フェアリー)


 永遠見台付属中学とわみだいふぞくちゅうがくに複数存在するGE対策部のひとつで、部員数は僅かに八名。


 創設の立役者であり、今や時の人のひとりでレジェンドランカーでもある宮桜姫(みやざき)鈴音(すずね)が部長兼隊長を務めている。


 部の創立は意外に最近で、鈴音が永遠見台高校(とわみだいこうこう)に突撃したその日のうちに対GE民間防衛組織にAGE登録を済ませ、その足で学校に部の新設を申請して作り出した。


 創部理由は「今すぐって訳にはいかないけど、私がお姉ちゃんを助け出すんだ!!」という創部を断りにくい理由を学校に叩き付けたのだが、元々この居住区で莫大な権力を持つ宮桜姫家の次女を無下に扱う訳にもいかずに学校側は渋々創部を認めた。



 僅か二日後に姉の香凛(かりん)凰樹(おうき)の手により助け出されるとは思いもしなかった為に、今まで貯めていた小遣いをはたいて最高級の装備を探しだして購入していたが、鈴音はそれが無駄になったとは考えもしていない。



 部員数は八名と少ないがその理由としては、既にGE対策部の部は三つも存在しており、AGE登録している生徒の多くはそちらに所属していた事があげられる。


 しかし、鈴音は小妖精(プチ・フェアリー)に所属する部員全員にひと世代前のフル装備を与え、その上で自らは上から下まで特注品の最高装備で武装し、僅か数週間のうちに他の部を圧倒する勢いで実績を打ち立てていた。


 余程懲りたのか、浅犬(あさいぬ)藤太(とうた)率いる残影(ゴースト)の一件の後、部員全員の装備を最新鋭の物へと換装して高純度弾を用意し、中型(ミドルタイプ)GEや無数の小型(ライトタイプ)に囲まれても十分に対応出来る装備へと切り替えている。




 永遠見台付属中学とわみだいふぞくちゅうがくでも夏休み中の登校日が存在し、八月六日には例年行われていた()()()()()()()の代わりに何処から入手して来たのかランカーズが今まで倒してきたGEや環状石(ゲート)破壊作戦の映像。それに赤竜種(ドラゴン)タイプヴァンデルング()トーア()ファイント()撃破の映像が流されていた。


 W・T・F(ドラゴン)を撃退する為に地元のAGEが壊滅する場面も流され、W・T・F(ドラゴン)に対して通常のAGEが持つ武器での攻撃が無意味である事が証明されていた。



「ひでえ、全滅するまで突撃を続けさせるとか正気かよ」


「でも、あそこで守備隊の人やAGEが何とかしないと、居住区域に攻め込まれたら壊滅しちゃうよ?」


「だから、そうなる前に防衛軍に緊急の援軍要請して手を打たないと……、ああっやっぱりあの小隊も壊滅したじゃん」


 元々攻撃が通用しないというW・T・F(ドラゴン)を、押さえ続ける事が不可能であり、AGEや守備隊を生贄にする様なこんな作戦を実行する方が馬鹿げていた。


 次から次へと集められたAGEや守備隊の小隊がW・T・F(ドラゴン)を取り囲み、そして口から吐き出される炎とシッポなどの攻撃で無残にも石の彫刻へ変えられてゆく様は無残という他無かった。


 その上、W・T・F(ドラゴン)の突進などで拠点としていたパチンコ店やゲームセンターなどを粉々に破壊され、物的な被害も相当な物になっていた。


 このまま居住区域内まで破壊活動を続けられれば、人的被害だけでなく金銭的な被害も相当な額に達していただろう。



「……うちの対GE民間防衛組織事務所の所長が影於幾(かげおき)さんで良かった」


「あの人なら、絶対にすぐ撤退命令を出してくれるよ」



 状況が悪化するような事態が予測されればすぐにAGE部隊に撤退命令をだし、守備隊やそれでも手におえないと判断すれば防衛軍にも即座に援軍要請をする影於幾の評判は概ねよかった。


 方々に裏金を回している為に援軍要請などは直ぐに受理され、救出部隊の編成も急がせる為に影於幾のおかげとはいえ大掛かりな作戦の生還率は他の居住区のAGEに比べて比較的高かった。


 AGEの救援要請に対し、あまりに悪質な物以外はそこまで懲罰などを科さず、次を保証する姿は他の居住区の対GE民間防衛組織事務所所長ではあまりありえない措置でもある。



「画面が切り替わった、ここからがランカーズなのか」


「え? さっきまで全然攻撃が通用して無かったのに、あんなにダメージを……。あっ見る間に再生して……」


「嘘……、こんなのどうやって倒せば……」



 ランカーズの攻撃で身体中を抉り取られながらも恐るべき再生能力でそれを無効化するW・T・F(ドラゴン)


 余裕を持ち、その攻撃を凌いだ後で目の前の人間をその口から放つ炎で石の像に変えてやろうと考えているのか、夥しい銃弾の雨を食らい続けても微動だにしていないようにも思えた。


 しかし、実際は何度か攻撃をしようと試みてはいたのだが、銃弾で翼や頭部などを大きく損傷し続けていた為に飛翔する事も炎を吐く事も出来ずにいただけだ。




「ちょ……、これ、結構恥ずかしいな」


「ちょっとしか映って無かったけど、アレ鈴音でしょ?」


「レジェンドランカーになった時のだよね? 凄いじゃない!!」



 画面には究極システム社(アルティメット)のM4A1-U.S.W.-MAXの次世代ブラックボックス搭載型特殊トイガンで無敵の様に謳われていた赤竜種(ドラゴン)タイプW・T・Fにダメージを与え続けている鈴音の姿も映されていた。


 活動期間を考えれば十分にあり得ない威力の攻撃ではあるが、神坂達と比べればさすがに少しばかり威力に差があり過ぎた。




「何よ、装備のおかげじゃない」


「同じ装備があれば私達も攻撃位できるわよ……、なにあの威力?」



 などと、現実を理解していないAGEなどは口々にそう言っていたが、同じ装備をしていても絶対に出来ない事が画面上で起こり始めていた。


 M4A1改を手に持ち、W・T・F(ドラゴン)に容赦ない銃撃を加える凰樹(おうき)の姿がスクリーンに大きく映し出された。


 凰樹の姿が映っているという事は他の誰かの映像ではあるが、目の前で繰り広げられるその光景は視線が釘付けになっているのも無理の無い光景ではあった。



「あ、凰樹(おうき)さんの攻撃が始まった。何度見ても出鱈目な威力だよね~」


「凰樹さんって例の? そっか~あの人がそうなんだ」



 銃口から発射される完全に融合した光弾の一発一発がW・T・F(ドラゴン)の身体を抉り取るような攻撃力を見せ、着弾後に発生する光球などはどんなことをすればあんな現象が起こるのか、見ているAGEなどは欠片も理解できなかった。


 暫くその攻撃の映像が流れ、やがて凰樹がW・T・Fの正体に気が付いた為に、手にしていたM4A1改から特殊小太刀に切り替えた。



「って画面切り替わった? 何が……」


「え? 消えた?」



 カメラが特殊小太刀を片手に構える凰樹に切り替わった瞬間、そこから凰樹の姿は消えて僅か三秒程で百メートルは離れた場所にいた赤竜種(ドラゴン)タイプW・T・Fの懐に飛び込んでいた。



「はやっ!!」


「なんであんなに速く走れ……え? 一太刀?」


「ウソっ……、なんであんなに簡単に斬り裂けるの?」



 凰樹がW・T・F(ドラゴン)の身体を右斜め上に向かって斬り上げ、まるで豆腐でも切るかのように一太刀で上半身を斬り落した映像が流れると、驚きの声や悲鳴が映像を流していた体育館に響いた。


 偶然が産み出したハーフトリガー機能、特殊小太刀や特殊マチェット系の武器はチャージボタンを押すと内部に力を溜めこみ、引き金を引ききるとそれまでに内部に貯め込んでいる力を一気にバーストするが、ハーフトリガー機能搭載型であれば半分引いた状態で特殊小太刀を使えば本来解放する力を刃に乗せたまま攻撃する事が出来、攻撃力はチャージボタンを使っていた時に比べて数倍にも及ぶ。


 実はこの現象は、チャージしきれない(ヴリル)が特殊小太刀を包み込んで光の刃と化していたのだが、この時は誰もそんな事が起こるとは思ってもいない。


 光の太刀と化した特殊小太刀は無敵と謳われ、多くの国を滅ぼしてきたW・T・F(ドラゴン)の身体を難なく斬り裂き、そしてその内部に隠されていた唯一の弱点である要石(コア・クリスタル)を剥き出しにした。


 凰樹は返す刀で光り輝く特殊小太刀を剥き出しになった要石(コア・クリスタル)に突き立ててその要石(コア・クリスタル)を破壊しW・T・F(ドラゴン)は光の粒子と化した。


 被っていた特殊ゴーグル付きのヘッドギアを外して小脇にかかえ、特殊小太刀を腰の鞘に収め、溢れ出し降り注ぐ光の粒子に包まれた幻想的な凰樹の姿が画面いっぱいに映された瞬間、黄色い声援は一層大きくなり、女生徒の多い体育館に響き渡った。



「素敵……♡」


「なんて神々しい姿なの? こんな人がいたなんて……」



 AGE登録していない女生徒の殆どは、圧倒的な力を持ち勇敢に赤竜種(ドラゴン)タイプW・T・Fに立ち向かって見事に撃退して見せた凰樹の神々しい姿に魅せられてそんな反応をしていた。


 何も事情を知らなければ幻想的なその姿は映画のワンシーンか、神を題材にした絵画の様に見えているだろう。


 しかし、逆にAGE登録している生徒の殆どはそのありえない攻撃力と行動力に圧倒され、背筋が寒くなる事すら覚えていた。


 それと同時にW・T・F(ドラゴン)の異常な再生力に恐怖すら覚えた。


 頭の中でどんなシュミレートを繰り広げても、敗北以外の結末は思い浮かばなかったからだ。



「化け物かよ」


「特殊小太刀で何をどうしたらあんな真似が出来るんだよ……」


「あれが最強のレジェンドランカー……」



 ある程度ランクのあるAGEであれば、近い状態の特殊小太刀を手に入れる事は可能だ。


 チャージボタンの付いていないひと世代前の物であればかなり安く入手できるが、それを使って同じ事をやれと言われても再現できるかどうか判断できない者は一人もいなかった。



「てことはあの特殊トイガンも同じだよ」


「あの人の攻撃だけ異常だったもんな」


「……まあ、あの子も良くやってたじゃない……」

 


 もし仮に自分があの場にいたらW・T・F(ドラゴン)の圧倒的な存在感と畏怖で身体が芯まで凍り付き、震える指先で特殊トイガンのトリガーを引く事が出来たかどうか……。


 AGE経験の長い者であればある程、GEの怖さは骨身に浸みており、今の自分達が相手に出来てはいない中型(ミドルタイプ)GEなど比べものにならない事位は理解できていた。


 自分であればあの状況で逃げずに攻撃を続けられるのか……、それを判断できない程に彼女達は経験が浅い訳では無かった。



 今回の映像は対GE民間防衛組織事務所の所長の影於幾が、ランカーズの宣伝とその活躍を称える為に用意した物だが、一部のAGEには逆効果と言えるような内容でもあった。


 特にW・T・Fへの恐怖は計り知れず、もし万が一に遭遇でもしようものなら攻撃などせずに逃げ出す事は容易に想像できた。



 また、今まで雑誌などで目にする事はあったが実際に映像で凰樹の活躍する姿を見たAGEに登録していない女生徒の反応は正直なもので、写真部など部費の確保の為に凰樹の写真などを非合法に取り扱っている部などは、蕩けた顔でその写真やデータを求める女生徒から受け取った売り上げでおおいに潤っていた。


 一枚一枚、角度や表情などを入念にチェックして納得いく写真やデータを端末でやり取りし、そのお礼として結構高額な利用料を支払う女生徒は多く、この日写真部などは創立以来最高益を記録したほどだ。


 僅か数十メートル先には凰樹本人の通う永遠見台高校(とわみだいこうこう)があるが、今となっては気軽に声をかける事など不可能な状態になっている。


 同じレジェンドランカーの鈴音であれば割と気軽にランカーズのメンバーに会う事は出来るが、他の生徒が接触を試みても何重にも張られたSPの包囲網をかいくぐり、正当な理由を持って申請を出さなければならないような状況だ。


 それだけ家族を助け出して貰った人や凰樹達とパイプを繋ぎたい企業などは多く、特に県外や国外からこの居住区を訪問した者には足を踏み入れた瞬間から捜査員が張り付く程だった。



◇◇◇



 小妖精(プチ・フェアリー)の部室。


 作戦会議などは空き教室を使っているが、装備は高価な為に視聴覚準備室の奥の貴重品を預かるロッカーにしまってあった。


 今は学校の許可で空き教室のひとつを完全に部室として改造し、其処にあるロッカーに装備を仕舞う事にしてある。


 学校側も小妖精(プチ・フェアリー)の活躍と、レジェンドランカーに昇格した鈴音の実績を喧伝する為、永遠見台高校(とわみだいこうこう)のGE対策部の様な大掛かりな施設の建造に入っていた。


 そこには複数のGE対策部系の部が集められることになっており、そのうち情報部系やゲート研究会の様なサポート系の部も充実してくると予想されている。



「う~~~~ん。やっぱり装備をなんとかしないといけないよね……」


「え? 鈴音ちゃんに揃えて貰った装備もそこまで古くないよ?」


「他のAGEさん達よりはひと世代以上うえだよね?」



 特殊改造トイガンなどは世代ごとに性能が段違いだ。


 ひと世代変われば最低でも攻撃力が三割以上劣るといわれ、二世代も変われば同じ純度の特殊BB弾を使った場合でも威力は半減するとまで言われている。


 また、古ければ古い程生命力(ゲージ)の消費量は多く、その割に攻撃力は低いと古い世代の装備を使って良い所など一つも無かった。



「今武器は凄い勢いで進化をしてるの。私の持ってるこの銃だったら、他の銃の数倍は威力があるんだよ……。まあ、使う人次第で威力は変わっちゃうんだけど」


「あの凰樹さんみたいに?」


「う~ん、凰樹さんは別格として、あの映像で他の人の攻撃シーンも見たでしょ? 私も同じの使ってるのに神坂さん達の攻撃って軽く数倍は威力があったし……」



 登録自体は姉である宮桜姫(みやざき)香凛(かりん)よりも数日遅く、本格的な活動開始は少しだけ早いとはいえ、鈴音のAGEとしての成長速度は目を見張るものがあり、天性の才能があったと十分に考えられた。


 にも拘らず、窪内たちの攻撃力はさらにその数倍以上もあり、経験と才能の差を思い知らされるところだが、逆にその才能が災いしてもう少し高純度の弾を使っていたらブラックボックスやその周辺の方が耐えられずに爆散していた可能性も高い。



「最低でもこの装備と同性能。できたら今龍耶(たっち)さん達が使ってる物と同じ性能の武器が欲しいんだよね」


「? そんなのあるの?」


「うん。この装備だと流石に凰樹さん抜きでの環状石(ゲート)破壊は無理だと思う。今使ってるのは最低でもこれよりワンランク……、多分更にもうワンランク上の武器だと思う」



 家事能力は香凛(かりん)の足元にも及ばないおてんばな鈴音ではあったが、リアルを重視し甘い算段をせず確実に目的を遂行するその能力は意外に高かった。


 凰樹には遥かに及ばないが、作戦の立案などをさせれば神坂や窪内より余程現実的で確実な作戦を作成してみせただろう。


 もっとも、凰樹がたてる作戦が現実的かと問われれば、誰もがその作戦内容を聞いた瞬間首を傾げるに違いないが。



「そんな武器……凄い高価なんじゃない?」


「多分凄い高いとは思うけど、今の私ならみんなの分くらい買えなくはないよ?」



 この歳で十五億ポイントも持っていれば欲しい物で買えない物は無い。


 全員に最新鋭の最高装備を買っても十分過ぎるほどおつりがくる。



「それはちょっと悪いよ!!」


「そんな高い物をもし壊したら……」


 中学生にそんな高価な装備など弁償など出来る訳も無い。



「武器はね、壊れるモノだよ。でもみんなの命はモノじゃない。わたしはね、みんなで作戦の成功をいつまでも祝いたいの。誰も欠ける事無く……ね」


「す…鈴音」


 隊長としての資質を問うならば、どんな時でも冷静に判断し冷徹な判断が出来る凰樹の方が優れているといえなくもない。


 しかし、皆を率いる指揮官としてみた場合、鈴音の方を選ぶ者も多いのではないかと思われた。


 誰も失わず、誰も見捨てず、全員で無事に帰還したい。


 そう思いその為には資財を惜しまない鈴音の性格は、一般的なAGEや守備隊の隊長格を見渡してみても頭二つ分以上は飛びぬけていた。



「それに前の時、私の甘い判断のせいでみんなを窮地に追い込んじゃったじゃない。あんな事を二度と起こさない為にも、装備は常に最新鋭の物を揃えたいんだ……」


「でも、そんな装備売ってる店なんてあるの?」


「一か所だけ心当たりはあるよ。でもこれと同じ装備だけどね……」



 鈴音が思い描いた場所は知る人ぞ知る隠れた名店、AGEショップ幽玄(ゆうげん)


 ただ七人分の装備となると、あそこでも即座に入手できるかは保証しかねる所ではあったが……。





読んでいただいてありがとうございます

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