首都への旅路~
ここから少し、凰樹や一般的なAGEの能力についての話になります。
楽しんで頂ければ幸いです。
七月三十一日、一時十三分。
窓の外に高速で流れる風景と、車内にほんのわずかな振動と共にリズムよく響くガタゴトという音。
車内には左右に二人掛けの椅子がずらりと並んではいるが、現在は利用する人の数は少なく、日曜日のこんな時間であるにも拘らず車内には他に人の姿は見受けられなかった。
ガラガラに空いた車内である為に身バレの心配はないが、ここまで少ないとかえってさみしさの様な物を感じていた。
「電車でも県内の居住区域は割と簡単に移動可能なんだが、人が少ないな」
「今では運賃も割高ですし、よほどの事が無い限りは居住区域内で済ませると思いますわ」
凰樹と二人っきりでの旅行。
両親の墓参りという目的もあったが、二人で電車の席に並んで旅行の道中ともなれば、それを頭から追い出しかねない勢いで、昨日一緒に東京第三居住区行きが確定した瞬間、荒城の頭の中は既にその事で一杯だった。
口には決して出さないが『まるで新婚旅行みたいですわ♡』と、荒城は昨日の夜、ベッドの上で全長一メートル程のSD凰樹ぬいぐるみを抱きしめながら、この時が来るのをずっと楽しみにしていた。
抱き枕代わりにしているSD凰樹ぬいぐるみは荒城の自作で、他にも大小様々のSD凰樹ぬいぐるみが部屋中に飾ってあり、AGE関連雑誌の付録に付いていた凰樹のポスターや、スタンドに入れられた写真などもベッドの周りに飾られている。
AGE時代には男勝りな格好をして粗野な物言いで活動していたが、荒城自身は元々お嬢様だった為に、部屋などはとても男装AGE時代を知っている者には見せられない程に少女趣味で統一されていた。
荒城はリッパな屋敷の中におおきな天蓋付きのベッドがある寝室とは別に私室が二つあるが、整理整頓が行き届いている勉強などをする為の部屋はともかく、寛ぐ為の部屋にもウサギやクマなどのぬいぐるみが大量に飾られており、当分その予定はないが人を招くには少しだけ躊躇する状態になっていた。
トランクの中に用意する下着や洋服も、荒城専用の衣裳部屋の中から考えに考え抜いて選び、行き帰りの道中に身バレしない様に用意した変装用の伊達メガネや帽子なども可愛い物をちゃんと選び、それを身に付けて凰樹と並んで街を歩く姿などを想像していた。
新広島西飛行場まで車で直接行く事は難しく、一部の一般道は完全には奪還されていない為に、かなり大回りする事になり、結局電車で移動するのが一番早い手段になっている。
高速道路を使えばいいのだが、行きはレジェンドランカーのAGEが二人も乗っているから問題は無いが、帰りに備えてもう一人誰かを連れていく必要があり、せっかく凰樹とふたりっきりで出かけられるチャンスにお邪魔虫は必要ないと考えた荒城が第二居住区域内の駅で待ち合わせた後に電車で移動という方法を提案し、凰樹がそれを承諾した形になっていた。
待ち合わせをしていた駅には家の車で送らせたが、車のトランクから取り出した持ち運び用のカート付きトランクを二つ出したところで凰樹は驚き、更にもうひとつスポーツバッグを出したところで重い方のトランクを、荒城が何も言わない内に持つと提案してきた。
◇◇◇
人的資源や物資の輸送手段としてGE発生当初から注目され、そして期待以上の成果を上げたモノが存在する。
高速道路以上に優先順位が高く、特殊トイガンや特殊ランチャー開発直後からGEの支配区域より積極的に奪還されたのは電車の路線だ。
避難する人々や貴重な物資を一度に危険区域から安全区域に運ぶ事が出来、車両を使った輸送よりも迅速で遥かに効率がいい。
GEの大発生であちこち寸断されていた本線も奪還と復旧が終わり、現在は在来線だけでなく新幹線もほぼ奪還されている。
GEによる支配区域の拡大による危険区域への移行や、市町村の統廃合や居住区域の再編成により駅の幾つかは現在使用されなくなってはいたが、一部奪還が不可能と思われた場所を避けて新しい線路を引き直したりして日本を縦断させている。
鉄道は今もってなお物資や人員輸送の大動脈であり、環状石では無く、拠点晶を破壊して奪還地区にした場所では、周囲に新しい拠点晶が存在しないかを常に警戒していたりもする。
「着いたな、後は西飛行場まで市電だ」
「駅ビルも改築されていますし、市内も復興と再開発が進んでいると聞いていましたが、第一居住区域も随分様変わりしていますわね」
「首都東京はもちろん、大都市は何処も壊滅的なダメージを受けたからな。ここを支配下に置いていた環状石を破壊出来たのは防衛軍の努力の賜物だ」
嘗て大都市と呼ばれた場所で、いまだに奪還されていない場所も幾つか存在する。
完全廃棄地区に指定された陥落状態の大都市を奪還したいと望む声は多いが、そこを支配下に置く環状石のレベルによっては奪還自体を諦めざるを得ない場所も存在する。
現在、レベル六の環状石を破壊する手段を持つのは世界中の国の中でも日本だけで、その方法も環状石を孤立化させた後も半年間支配下にある拠点晶の破壊を続け、完全に弱体化させて攻略したという念の入様だ。
これがレベル七になると今ある武器では環状石に辿り着く事も困難で、当然、内部にいる門番GEを倒して要石を破壊するなど夢のまた夢だった。
現在世界中にある確認されている環状石の最高レベルは二十五で、これに関しては攻略するのが先か、人類が滅亡するのが先かなどと言われていたりもする。
人類はまだ、一桁中盤の環状石を破壊するのが精々で、レベル二桁の環状石の攻略が出来るまで、どの位の時間が必要であるかすら予測も出来なかった。
「流石に市電は人が多いですわね」
「運賃が安いからな」
市内を走る路面電車である市電に関しては環状石破壊による奪還後すぐに再整備され、格安の運賃で運行し復興する広島第一居住区域で生活する人の足として活躍していた。
再開発が進んで今は地下街も充実しているが、そちらの方は殆どの場所を徒歩での移動となっている。
「大きめの荷物が邪魔にならないと良いが……。いや、必要な物は仕方がない。現地で調達できる可能性は少ないし、使い慣れていない物は嫌な事もあるだろうしな」
凰樹と荒城はそれぞれ大き目のトランクを一つとスポーツバッグを一つずつ持っていたが、凰樹が持っているトランクには荒城の特殊トイガンなどが詰められている。
つまり、本来凰樹の荷物はスポーツバッグ一つだけで、荒城が装備一式を丸ごと輸送し、旅行先での生活必需品なども揃える為には、トランク二つ分の荷物の他にスポーツバックまで必要だったという事だ。
「輝さんは荷物が少ないんですのね」
「装備を坂城の爺さんに送ってるからな。女性は装備以外も多くて大変だろう」
化粧品や、各種スキンケア用品などなど……。
下着から毎日着る服まで、一週間分となればトランク二つ分で収まった事がまさに奇跡だった。
「輝さんが嫌味なんて言わないって分かって無かったら、気分を害してる所ですわ」
「人の気分をわざわざ悪くする必要なんて無いさ……」
周りにいる人は二人の会話を聞きながら、「バカップル爆発しろ」、「昼間っからお盛んで」、「わたしらの気分はわるくなってるっつーの」、などと心で思っていたが、目の前にいるその二人の正体を知れば手の平を返して正反対の反応を見せる事だろう。
今回もサングラスや帽子で変装をしている凰樹は、最後まで正体を見破られる事無く目的地である新広島西飛行場へと辿り着いた。
飛行場には各居住区域への定期便の他、支配区域奪還後に空から生還者を探索する為のヘリポートなどが存在する。
今は燃料なども限られている為に定期便の数は少なく、チケットなどはかなり割高になっている為に一般人が利用する事は殆ど無くなっている。
「凰樹輝様と荒城佳津美様ですね、お待ちしておりました」
首都東京第三居住区域行きの特別機。
特別機はAGEのお偉方や政府要人などが利用する他、各種VIPを安全かつ迅速に目的地まで移送する為に用意された飛行機で、小型ジェット機を改良して対GE用の防御用結界発生装置などが装備されている。
管制塔だけでなく各機体にも高性能なレーダーが装備されており、飛竜種などとニアミスなどしないように常に監視を怠らない。
「すみません。特別機まで用意していただいて……」
「いえ、お二人ともレジェンドランカーなのですから、特別機の使用は当然の事です。目的地まで安全確実にお送りします」
トップランカーでも既にVIP待遇なのだから、レジェンドランカーともなればそれ以上の待遇が約束されていた。
特に凰樹の場合、先日のヴァンデルング・トーア・ファイント討伐の一件で更に政府から注目されており、新たな勲章の創設まで噂されていたりもする。
「フライト時間は一時間ほどになります。途中に高レベルな環状石が存在しますので仕方がないのですが……」
「富士の樹海に存在する高レベル環状石か……。装備が今から幾ら進化したらアレを破壊出来るんだろうな」
「レベル二桁を超えた環状石を破壊出来る日が来るんですの?」
「来るさ、必ずな。その為に俺達はわざわざ東京第三居住区域に行くんだから」
最も高レベルなレベル六環状石の破壊実績があるのは日本の防衛軍だけで、環状石孤立化作戦と大量の高純度弾と特殊ランチャーを使った物量作戦での攻略だったが、現在は各国ともに環状石孤立化作戦を進めており、近い将来は他の国でもレベル六程度までは破壊できるのではないかと噂されている。
「そんな日が早く来てほしいものです。では搭乗の方をお願いします」
安全の為に特殊トイガンなどをはじめとする荷物は貨物室に運ばれており、殆ど手ぶらで飛行機へと乗り込んだ。
小型ジェットといえども機内は広く、元々五十席ほどある小型ジェット機を十人位が寛げる様な内装に改造されていた。
VIP専用の特別機と呼ばれているだけの事はあった。
テイクアウト後には特に大きな事件も無く、予定の一時間後には東京第三居住区域の近くに作られた飛行場に着陸した。
飛行場から東京第三居住区域の入り口までは送迎用の車が用意されており、それに乗って数か所しかない東京第三居住区域内へ繋がる道路を走って内部へと向かった。
ここにも当然、対GE用の守備隊も駐留しているが、対人用に防衛軍の戦車や特殊部隊も待機しており、何かあれば秘密裏に処理される事になっていた。
◇◇◇
午後四時三十分。
「やっと着いたな。ここが宿舎……というよりはホテルだな」
「そうですわね。一見ホテルに見えますが、普通のホテルにはあんな格好の警備兵がいる事は無いと思いますわ」
目の前の建物の看板には、東京第三居住区域第一宿舎と書かれていたが、まるで趣の良いホテルのような外観で、周りには庭園なども造られていた。
土地が貴重な東京の居住区域に此処まで広い庭園を造れるだけの権力を持つ何かがこの場所を支配している事が窺われ、ここで何かしようものなら即座に無数の警備員が飛んで来る事は想像に難しくなかった。
事実として、自動小銃で武装したホテルの内装には似つかわしくない格好の警備兵が数人、ホテルの周りと内部を巡回していた。
その小銃はどう見ても対GE用の特殊トイガンでは無く、対人用の自動小銃である事は疑いようが無かった。
「すいません、ここに何か御用でしょうか?」
「そちらの小太刀は、対GE用ですか?」
二人組の警備員が近付き、凰樹が腰にぶら下げている特殊小太刀を見て一瞬緊張が走った。
一応空港に着いた時、荒城と凰樹はAGEの規定にそって最低限の装備を身に付けており、予備として持って来ていた特殊小太刀も腰から吊るしていた。
トリガーやチャージボタンが付いている為にひと目で対GE用と分からなくもないが、偽装した偽物という可能性もある為、警備員が油断する事は無かった。
「はい、防衛軍特殊兵装開発部の坂城さんから実験の要請がありまして。これがそのメールです」
「拝見します。ら…ランカーズの凰樹……輝?!」
「ほ…本人で間違いないのか? GE共存派の偽物という可能性も……」
GE共存派には整形外科手術に長けた者が協力しているらしく、今まで何度も整形した偽物を使って様々な事件を起こしており、十三年前に研究者と入れ替わったGE共存派の工作員が東京第三居住区域内で爆破テロを起こした事は有名で、十三年経った今でも常に警戒されている。
「本物ですよ、AGE許可証とリングのデータで証明できますし」
「リングは偽装が不可能だから間違いない。も……申し訳ありません。W・T・F討伐の英雄を疑うとは認識不足でした」
「活躍は聞き及んでおります。どうぞこちらに……」
目の前にいるのが誰なのか分かった瞬間、全員見事な敬礼をして凰樹、荒城の両名を受付まで案内し始めた。
凰樹の活躍は今までも首都東京まで知れ渡っていたが、AGEでの環状石破壊も快挙ではあるが、年に十数個は破壊している防衛軍からすればそれ程凄い実績という扱いでは無かった。
政府が凰樹を地方のいち居住区域に放置していたのも、防衛軍と比較してそれ程強力な戦力とは考えていなかったからだ。
しかし、先日米軍が威信をかけて準備し、最終的に一万人以上の犠牲を出して壊滅したW・T・F戦の赤竜種と同タイプのW・T・F討伐後に政府及び防衛軍内部で凰樹の評価は急上昇し、救国の英雄だの、護国の宝剣だのといった様々な二つ名がつけられている。
事実、現段階で対GE戦において世界最高の戦力は特殊小太刀を手にした凰樹であり、同等の攻撃力はおろか凰樹の半分程度の打撃力を持つ兵器すら今の所存在してはいなかった。
「本日より七日間滞在予定の凰樹輝様と荒城佳津美様ですね。はい、防衛軍特殊兵装開発部の坂城様より連絡を受けております」
警備員に案内された凰樹をフロントの女性が対応し、部屋のカードキーを差し出した。
壁には施設内にある各設備の営業時間やサービス内容などが記されているが、大浴場や様々な種類のレストランなどは当然として、映画館やボウリング場など各種遊戯施設や、日用品まで取り扱う売店、理髪店や美容院、歯医者や診療所、薬局なども備えていた。
ここから長期に外出できない場合でも不自由が無いようにという坂城の心遣いはありがたくもあり、迷惑でもあった。
殆どホテルと同じ様な豪華な内装だが、あちこちに偽装して隠されている監視カメラや、周りにいる変装した特部隊員の数から此処も軍事施設のひとつである事が窺えた。
壁なども特殊な素材が使われており、爆破や銃撃にも十分耐える構造となっている。
「ベルマンがそれぞれのお部屋に案内いたします。あと、凰樹様と荒城様にはそれぞれ坂城様より荷物が届いておりますので、お部屋の方に届けさせていただいております」
体格のいいベルマンが二名ずつ、凰樹と荒城を部屋まで案内した。
凰樹と荒城が案内されたのは同じ階ではあったが二人の部屋は結構離れており、妙な事にその間には殆ど扉が存在しなかった。
環状石破壊後に軟禁されていたホテルとは比べものにならず、廊下は広く床はピカピカに磨き上げられており、当然そこにはゴミひとつ落ちてはいない。
この部屋まで案内したベルマンは一見武器などは身に付けていないようにみうけられたが、胸元が妙に膨らんでいるので銃をそこに隠し持っている事は明らかだった。
一応宿泊施設の一職員に過ぎない筈のベルマンに堂々と銃を持たれても困るが、隠せばいいという事も無いだろう。
「こちらになります、必要な物がございましたら、遠慮なくお申し付けください」
「すいません。あ、これチップです」
「ありがとうございます」
現金がほとんど姿を消した現在では、チップの受け渡しも端末のポイント委譲機能などで行える。
稀に現金を所持している者もいるが、ホテルやプールなど一部の施設内では自動販売機で逆に現金が対応していない場合も多く、施設内にある特定の場所で端末や電子マネー機能付きのカードにチャージしなければならない事もある。
チップなどの場合もポイント委譲機能を使って渡したいポイントを事前に入力し、相手の端末で受け取れば簡単に出来る為に一般的なホテルなどでも電子マネー機能付きの端末などで行われる事が多い。
部屋に入った凰樹はその広さと内装に驚いた。
ホテルの一室というよりはバス、トイレ、キッチン付きの豪華なマンションであり、大きなベッドのある寝室の他にリビングなども完備していた。
冷蔵庫内にはソフトドリンクや酒類も常備されているが、当然ながら追加料金が発生しない仕組みとなっていた。
「流石に坂城の爺さんが防衛軍一予算があると豪語するだけあるな。全部コミコミって訳か、至れり尽くせりだ」
流石に各種ルームサービスは有料だが、期間中の洗濯物などは専用の籠に入れておけば、専属のホームキーパーが処理するという事だった。
「とはいえ、明日からの予定は容赦無さそうだがな。明日は午前中に坂城の爺さんの挨拶と身体測定、午後からは体力測定か。荷物は届いているそうだが、これだな」
身体測定に着て行くスポーツウェア上下一式が五セット用意されていた。
日数から考えても異常な数で、どうやら試験中に破損する事などは十分考慮されているという事だ。
スポーツウェアなどを用意する為に事前に身長や胸囲などのデータも送ってあるが、自己申告は信用できないという坂城の性格から、改めて明日正確に測定される事になっている。
「後は装備か、次世代型ブラックボックス内蔵特殊トイガン。M4A1の再調整もしているそうだけど、あまり外見は変わって無いな」
外見は変わっていなかったが、凰樹が使った場合には内部、特にブラックボックス内やそこから繋がる回路等の負担が大きく、焼き切れかけていたり、焦げかけていたりしていた為にかなり改良が加えられている。
これで最大出力で使ったとしてもしばらくは壊れないだろうと考えられていたが、前回の時点で此処まで改良が必要と思われてい無かった為、今度も強化した回路がどこまでもつかが心配されていた。
「あとは特殊小太刀か。いつも通りに刃渡り五十九センチ、試してみた感じハーフトリガー機能も問題なさそうだな」
チャージしない状態で何度かトリガーを引いてみたが、中間で止めるハーフトリガー状態で特に違和感は無かった。
後、鍔の下に新たにゲージの様な物が増設されており、それがなんなのかは坂城に説明されなければわからない。
「これにも何か意味があるんだろうが、いつも通り細かい説明は無いな。使ってみて理解しろって事なんだろうけど」
新型ブラックボックスなどが実装された特殊トイガンなどでは、他の隊員には事細かに書かれた説明書などが用意されている事もあるが、凰樹に送られてくる特殊小太刀に関しては説明が無い場合が殆どだ。
これは別に坂城が意地悪をしたり手抜きをしている訳では無く、凰樹が使用した場合に特殊小太刀などが予期せぬ働きをする事が多く、その為に余計な先入観を与えない様に毎回最低限の説明しか書かれていなかった。
「…………なるほど、そういう事か。便利は便利だけど、明日の朝コレがどうなっているかが見物だな」
凰樹はほんの少しだけ特殊小太刀を使い、経過を見守る事にした。
良く考えればこの時凰樹が取った行動にはいくつかの疑問点が残るのだが、凰樹自身はそれをあまり気にしておらず、歴史的瞬間はただ一人の目撃者も無いままに終わっていた。
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