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ランカーズエイジ  作者: 朝倉牧師
首都騒乱編
45/98

首都遠征要請

色々設定などが出てきますが楽しんで頂ければ幸いです。



 七月三十日、午前九時十五分。



 色々な事があった波乱の海水浴から無事に帰還した日、「ヴァンデルング()トーア()ファイント()討伐もあったし、次の部活は八月一日にしよう」という事になってランカーズは七月中は完全休暇と決めた。


 環状石(ゲート)の破壊とその支配下に囚われている人の救出は急務ではあるが、ランカーズだけがその全てを行う訳では無い為、八月に入ってから本格的に活動を再開する事にしている。



 この広島第二居住区域では七月から九月の猛暑で体力を奪われやすい三ヶ月間と、十二月から三月まで四ヶ月間は積雪などの天候的要因により活動が制限される事も多い。


 性能が上がっている為に近年では殆どないが、夏場の猛暑で計器類が異常を起こし、いもしないGEの紅点をゴーグルなどに表示したり、逆に目の前にいるGEの紅点を表示しなかったりもしていた。


 当然それらは全てAGEにとって死活問題である為に、慎重な部隊などは大量の保冷剤とクーリングファン付きのノートパソコンなどで索敵を行い、バックアップの指示に従って行動していたりもする。



 凰樹(おうき)の様にセミランカーがいる部隊は専用の移動車両を所有している場合も多いが、そうでない部隊は自転車などでの移動となる為、武器などの他に必要となる大量の飲料水などの輸送にも苦労していたりする。


 移送手段(これ)の対策として、近年では守備隊が週末などに作戦行動に参加する部隊を募集しており、それに参加すれば移動は専用のバスが用意される為に少しは楽になるが、討伐する敵の数によっては赤字となる事も多い。



 冬場は一定以上の積雪や一定以上の降雪が無い日は殆ど問題無く、装備が濡れて電気系統などの破損が心配される梅雨時期よりも歓迎されている感じすらある。


 厳しい寒さに関しては各自でタクティカルベストの内部に着込むか、携帯カイロなどを使用しろとしか言いようが無かった。


 しかし、手袋をはめると指先の動きが鈍くなるため、医療用の薄いビニール製の手袋を使い、指先を切った手袋をその上からはめる者も存在する。


 日中戦場を走り回っていれば寒さなど感じなくなるが、この時期は風邪などの体調不良も起こしやすい為に体調管理も重要となる。



 夏季冬季など季節的要因は日本のみならず世界各国でそれぞれ問題を抱えており、試行錯誤しながら現場で対応されている事が多い。



 二〇一六年は平均的な気候で例年以上の猛暑という事は無いが、炎天下で長時間の行動は体力の消耗も激しい為に、凰樹は短時間で攻略できそうな拠点晶(ベース)を中心に攻略作戦を立案する事にしている。


 八月一日から作戦を行う為に、近隣の支配エリアから他の部隊が展開しておらず攻略作戦も申請されていない拠点晶(ベース)を探していた。



 しかし、凰樹(おうき)(あきら)は今朝方、防衛軍特殊兵装開発部の坂城(さかき)厳蔵(ごんぞう)から送られてきたメールを見てある事を悩み続けていた。



「次世代型ブラックボックスの機能向上及び、新機能搭載の為のデータ集積を東京第三居住区域にて行う。ランカーズのメンバーで新型特殊トイガンの扱いに長けた者でシールド機能を使用可能な者一名を同行し、八月一日午前十時までに指定場所に集合の事、遠距離よりの来訪者には前日から宿泊可能な施設を用意する……か」



 メールには今回のデータ収集実験の本気度が窺える内容のスケジュールが載っており、それによれば実験期間は一週間にも及び、更に、集められるデータの状況次第で最大十日まで延長する場合もあると追記してあった。


 これに参加すれば暫く拠点晶(ベース)攻略作戦などを実行できないが、要請があった組織が防衛軍特殊兵装開発部だった為に、実験の参加を断る事など出来る筈も無かった。



 実験内容に【中型(ミドルタイプ)GEとの単独戦闘】・【小型(ライトタイプ)GEとの近接戦闘】などもあり、凰樹はともかく他の参加者の身の安全などはあまり保障されていない内容となっている。



ランカーズ(俺達)であれば、新型ブラックボックス内蔵の特殊トイガンを使えば何とかなるが、近接戦闘となると……ん? 一部の実戦は適任者のみで行う……か。流石に少しは考えてるな」



 流石に坂城も参加者全員にGEとの近接戦闘をさせるほど鬼では無い。


 ただ、身体測定、体力測定、健康診断などの項目などもあり、完全にモルモット扱いのデータ収集である事は十分窺えた。




「坂城の爺さんが此処までやるという事は、何か革新的な技術のデータ取りなんだろう。参加する事に問題は無いが……」



 東京第三居住区域に()()()()()()()()()()


 扱いをひとつを間違えれば修羅場に発展しかねない大問題が残されていた。



◇◇◇



 七月三十日、午後一時。



 突然の招集だったにも拘らずランカーズ全員が時間きっかりに部室に集まっていた。


 全員昼食は済ませて来た筈だが、テーブルの上には細長くてチーズやカレーなど様々な味の一億点満点という名のスナックと、チョコレートコーティングスティック、美味しいと評判でランカーズ内でも定番となりつつある『ボス、タラコッス』という明太子を使用したスナック菓子と、『ヤマイモ&自然薯』というポテトチップスなど幾つものスナック菓子が並べられ、全員の前にジュース類などが注がれたコップが並んでいた。


「東京第三居住区域で行われる実験に、誰か一人を同行させる事になったのだが……」


 話し合うべき内容を伏せておいた為に最初はいつも通りの雰囲気だったが、凰樹がメールを中央の大画面に映して話を切り出した瞬間、部室は薄氷の上にでも立っているかのような緊張感に包まれた。



「ひとり、というのは確定ですの?」


「ああ、流石に何人も連れて行けないからな」



 この居住区域に何かあった時の為に、出来るだけ多くの戦力は残しておきたいと思っている。


 ランカーズのメンバーが七人もいれば、他の全部隊が壊滅しているような状況でも何とかなるからだ。



「期間は……一週間?」


「最大十日だな。早めに終わった場合でも八月六日に予定されてる登校日は確実に休む事になる」



 多分に漏れず、永遠見台高校(とわみだいこうこう)は八月六日が登校日とされており、本来であれば期限を切られた提出物などを出す日でもあったのだが、今年は課題が一切無い為に単に学校に集まって()()()()()()()などを観る事になっている。


 大昔は反戦目的の映画だったらしいが、GEの出現後数年で現在の様な形になったという話だ。


 八月一日が月曜日で六日の土曜日まで実験が続き、早ければ日曜日の午後にこの居住区域に戻って来れる事になる。


 しかし、凰樹は心の中で『あの坂城の爺さんの事だ、夏休み中である事を幸いと必要なデータが揃うまでは帰す事は無いだろう』などと考えていた。



「向こうでの自由時間とかはどうなる? 東京の居住区域なら行きたい場所も多いんだが」


「場所は()()()()()()だからな。同じ都内だし都心部である第一や第二居住区域に行けない事も無いだろうが、難しいと思うぞ」



 東京第三居住区域。


 防衛軍特殊兵装開発部や対GE用特殊結界発生装置開発部門などの対GE用の装備などを開発する為に再開発された居住区域。


 特殊トイガン用のブラックボックス生産工場や対GE用結界発生装置生産工場など重要拠点も多い為に一般人は殆ど立ち入りできず、最重要エリアはぐるりと周りを高い壁で囲まれていたりもする。


 気軽に出入り出来る様な場所では無く、開発技術系の人間が目指す最終到達地がここだとも言われている。



 送付されてきた資料では、実験自体は一日中続く日もあれば午前中で終わる日もある。


 しかし、午後から自由時間だといって東京にある他の居住区域に行ける保障など何処にもない。



「それで、誰を連れて行く予定なんっスか?」


「向こうの要望通りで選ぶなら、佳津美(かつみ)蒼雲(そううん)竹中(たけなか)のうちの誰かなんだが……」


「ちょっと待ってください。その人選はどうしてなんですか?」



 凰樹が三人御名前を出した途端、選ばれなかった宮桜姫(みやざき)は抗議の声を上げた。



「ランカーズメンバーのうち、シールド機能を完全には使いこなしていない楠木(くすのき)伊藤(いとう)宮桜姫(みやざき)は坂城の爺さんの要望からいえば外さざるを得ない、霧養(むかい)は通常のシールド機能を使えない為に除外させて貰った」


「シールド機能……」


「確かにあれを使っても出せない位っスからね」


()()か……、ついでにいい機会だから渡しておく」



 凰樹は持って来ていた袋の中から長さ四センチほどの銀筒のキーホルダーを幾つも取り出し、机の上に並べた。



「もしかしたら見た事がある者もいるかもしれないが、一応説明させて貰う。これは十六年前に販売中止及び回収されていた筈のオモチャで、()()すると比較的簡単にシールドに似た物を出す事が出来る」



 凰樹はキーホルダーを一つ手に取り、その先端に小さな丸いシールドを発生させてみせた。



「面白いオモチャですわね。どうして販売中止になったんですの?」


「これを使って一時的な生命力(ゲージ)消費現象による体調不良を訴えた者が多かったらしい。当時はまだリングが無かった為に原因不明という扱いにされていたようだが」



 販売者の意図は分からないが、単に面白半分で発売された物でないのは確かだった。


 当時、人類存亡の危機からの脱却する為にあらゆる手段が試されており、()()もそのうちのひとつであったことは間違いないからだ。



「基本的には生命力(ゲージ)の消費は一~二程度の筈なので、休み中にシールドの練習用として全員に渡しておきたい」



 テーブルに置いてあった大量のキーホルダーからそれぞれが気に入った物をひとつずつ選び、それを手にしていた。


 楠木や宮桜姫は苦労していたが、竹中などは直ぐにそれを使って小さな円形のシールドを出して見せた。



「シールドの練習ってしなければダメ?」


「ダメという事は無いが、使えれば色々応用が利くようになる。俺のシールドみたいに物理的に干渉できるようになれば最高なんだが」



 これは流石に高望みだったが、せめて全員普通のシールドくらいは使える様になっていてほしかった。



「急にこれを用意した理由をきいていい?」


「前回のキャンプ中に偶々見つかったというのもあるが、坂城の爺さんのメールで確信した。あの爺さんがシールド機能とわざわざ書いてくるって事は、それに何かあるって事だ。今後の為に練習していて無駄って事は無いと考えている」


「確かに、あの爺さんが言うからには、何か秘密があるのは間違いないでんな。シールド機能が使えてもわてはダメでっか?」



 シールド機能という事を考えれば後は荒城(あらき)神坂(かみざか)窪内(くぼうち)、竹中、の四人の中から誰か一人と言う事だが、能力から考えれば荒城か竹中が望ましかった。



(たつ)は出来ればこちらに残って貰いたい。可能性としてはあまり無いが、緊急招集がかかった時に備えてなんだが」



 窪内がM60E3を使って立ち塞がれば、その辺りのAGE部隊の数十倍近い戦力となる。


 小型(ライトタイプ)GEや中型(ミドルタイプ)GEであれば数百匹押し寄せて来てもよほどの事が無い限り戦線を支え続けるだろう。


 もっとも、この辺りでGEの大量発生が起こった場合、中型(ミドルタイプ)GEの数は限られているが。



(おう)さんにそこまで言われたら仕方ありまへんな。おとなしゅう留守番しまひょ」



 大量発生の時期にはまだかなり余裕があるが、不測の事態はいつでも発生する為に十分な戦力を残していたいと考えていた。


 ランカーズだけでなくほかの部隊も含めて、油断して手酷い被害を(こうむ)った事例は事欠かない。


 救援要請辺りに出る可能性は大いにあるし、もし要請が無い場合でもランカーズのメンバーがこの居住区域にいるというのは、他のAGE部隊や守備隊にとって大きな心の支えになるからだ。




「身体検査とかあるなら俺の方がいいか?」


「色々調べられるのは苦手だけど、あきらもいるなら我慢するよ?」



 身長や体重だけでなく、頭から足の先まで本当に容赦なく調べて来る事は十分に予測できる。


 凰樹の場合、精液以外は髪の毛や爪まで採取されそうな勢いだし、同行者も近いレベルで調べられるのは確実だった。



 都市伝説で一時期はトップランカーのクローンでも作るんじゃないかと言われていたが、現在の人類にそんな技術が無い事は広く知れ渡っている。


 GEから生存権を奪還する事が最優先であり、それ以外の研究は研究費の削減などが容赦なく行われており、数十年前より衰退した分野も多く存在していた。




「割とハードな試験内容だからな。中型(ミドルタイプ)GEとの単独戦闘や小型(ライトタイプ)GEとの近接戦闘なんて記載まである。まあ、近接戦闘があるのは俺を含めて少数だろうが」


「ちょっと待て、身体測定だけじゃなくて色々あるのか? …………あの爺さんなら抜き打ちの筆記試験とかもありそうだな」


「筆記試験……」



 メールの端の方に、【環状石(ゲート)学に造詣(ぞうけい)が深い者歓迎】などと書いてある為に、どんな試験があっても不思議では無い。


 学校のテストと違って赤点でも問題は無いが、集まった大勢の前で赤点などとってはレジェンドランカーとして色々沽券に係わる。



「外部に情報が漏れる事は無いだろうが、参加者の口から噂が広がる可能性はある」


「そりゃそうだな……。あ、私用で悪いんだが八月六日にガンナーガールズのコンサートがあるから俺は遠慮していいか?」



 その事を思い出した神坂はズボンのポケットから財布を取り出し、その中に大事そうにしまってあった一枚のチケットを見せた。


 レジェンドランカーの特典で入手したガンナーガールズのコンサートチケットで、一般人では決して手に入らないアリーナ最前席のプラチナチケットだ。



「新しく貰ったチケットでっか? レジェンドランカーは最前席のアリーナが選びたい放題って良いでんな」


「まったくだ、これからは四女神(ヴィーナス)のコンサートが来たら毎回参加できるぜ」


「S特券のおかげで食事もほぼタダっスから、ポイントは溜まる一方っスね」



 当然、レジェンドランカーになった時点でランカーズのメンバーは全員S特券を束で持っている。


 一足先にトップランカーになった凰樹を含める七人は、生徒や食堂のおばちゃん達に注目されながら毎回S特券を出す事に戸惑いを隠せずにはいた。



「ま~さ~に~食券の乱用~って感じですよね~♪ 以前輝さんが言ってた意味が分かった気がしま~す」


「確かにただ飯も悪くはないが、毎回だと色々悪い気もするんだよな~。ってそれ、食券の乱用じゃなくて職権の乱用じゃねえか?」



 伊藤のボケに反応して突っ込みを入れたのは神坂だったが、まあ、神坂本人も確かに食券を乱用している自覚はある。


 偶にポイントを使って熱々(あっつあつ)弁当屋や超大盛食堂も利用しているが、両店とも店頭に【レジェンドランカー神坂さん推奨店!!】などとおおきな看板を掲げていたりもする。



 特に超大盛食堂はKKIエリアの環状石(ゲート)破壊作戦で、数年前にGEに襲われて石に変えられていた下の娘が生還したらしく、ランカーズ贔屓は相当なレベルに達している。


 現在では永遠見台高校(とわみだいこうこう)の生徒と名乗れば、元々多い盛りが更に大盛りになると評判だったりもする。



「正確には新たに届いたSS特券だけどね。これに書かれてるメニューって、券売機とかで販売されてないのもあるよね?」


「ああ、S特券にも無いメニューが多いな。スペシャル刺身定食とか限定ステーキ定食とか、究極ケーキセットも。食堂中の視線が刺さるんじゃないかってレベルだ」



 レジェンドランカーを対象とした、特別に材料を用意させたメニューが幾つも追加されていた。


 当然、そんな物を頼めば他の学生たちからの視線に耐えながら食べなければならないのだが、これがけっこう精神力を必要とされている。



「殆どの材料は冷凍されているらしいですが、期間が迫れば一部は一般生徒にも販売されるという噂ですわね。楽しみにしてる生徒もいるとか」


「うまく半額デーと重なれば頼むんだろうな。値引きが無ければ頼みにくい値段設定だし」



 大体千円以上で、限定ステーキ定食などの一部のメニューは二千円だ。


 多くの生徒達の懐事情を考えれば普段節約した場合でも、半額で無ければ購入する事は難しい。


 しかし、一部のAGEは高純度魔滅晶拾い(宝探し)で結構な資金を入手しており、うまく拠点晶(ベース)産の高純度魔滅晶(カオスクリスタル)を見つけて大量のポイントを入手したが、その()()()()で旺盛な食欲を満たしている事も多かった。



「蒼雲は居残り確定だな。折角の制度だ、積極的に利用するのは良い事だろう」


「わりいな。こっちで何かあれば俺達で何とかする」


「頼むぞ。後は佳津美か竹中なんだが……」



 あるかどうかわからない筆記試験はともかく、身体測定や体力測定という事であれば荒城の方が望ましいという考えもある。


 しかし、ここに居残りさせるメンバーで考えれば、竹中よりも荒城がいた方が安心できる。


 二人の実力は伯仲しているが、AGE仲間として付き合いが長い分、新生GE対策部の創生時から共に戦っている竹中達に失礼であるとは分かっていながらも凰樹は荒城の方を信頼しているきらいがある。




「東京第三居住区域といえばGE対策の総本山。()()()()行ってみたいと思っていましたわ」



 荒城(あらき)佳津美(かつみ)は三歳まで東京第三居住区域で暮らしていた。


 東京第三居住区域にある都市安全技術研究所に両親が務めていた為だったが、両親が新型結界発生装置の実験中の事故で亡くなった為、祖父である荒城(あらき)鋼三郎(こうざぶろう)が広島第二居住区域に移住させてここで暮らす様になっていた。


 鋼三郎が幼い頃からピクニックに行きたいなどの佳津美の我儘を許していたのは、両親を失った寂しさを少しだけでも紛らわせる為であった。



「そう言えば佳津美(かつみ)はあっち出身だったな。身体測定はともかく、体力測定などもあるがいいのか?」


「大丈夫ですわ」



 凰樹にしてみれば戦力的に考えても、神坂や荒城を連れて行くよりも竹中を連れて行った方がいい。


 しかし、特殊な事情から荒城を連れて行きたくもある。


 様々な思惑が交差する部室で、凰樹は同行者を荒城に決めた。



「すまないが、今回は佳津美(かつみ)に頼もう。明日の午後三時に新広島西飛行場から現地まで特別機で向かう」


「新広島空港じゃなくてか?」


「第三居住区域の事なのであまりよくは知らんが、新広島空港(あそこ)はまだ環状石(ゲート)の支配下で、とりあえず第一居住区域が奪還した西飛行場を再整備したらしい。奪還は防衛軍任せだったがな」



 空港の多くは最優先奪還目標であるが、県内にひとつあればいいという事で、市街地と共に広島西飛行場が奪還目標に選ばれ、そこを支配する環状石(ゲート)が破壊されている。


 新広島空港を支配下に置く環状石(ゲート)がレベル三、市街地と西飛行場を支配下に置いていた環状石(ゲート)のレベルが四だったが、結局市街地の方が優先されたという話だ。



 奪還後の再整備で色々と追加され、新広島西飛行場と名前もリニューアルされている。



「とりあえず明日電車で市内へ行き、市電を使って新広島西飛行場へ向かう」


「わかりました。今日中に……準備しておきますわ」



 今回東京第三居住区域に向かうのは凰樹、荒城の二名に決まった。


 色々苦情を言いたい者も居たが、滅多に見せない荒城の憂いた表情から、『ああ、両親の墓参りに行くのか……』と、何となく察する事は出来た。


 このご時世、墓所も縮小に縮小され、居住区域にある墓所などは一か所に纏められ、小さなプレートがずらりと並ぶだけの物にされている事も多い。


 それでも、人として生を全うできた幸運な者を弔う場所として、墓所や寺などは今も存在し続けていた。




読んで頂きましてありがとうございます。

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