夏休み直前 一話
この話から新章になります。
GEとの戦闘シーンは減りますが、ランカーズなどの日常の話などが多くなります。
楽しんで頂ければ幸いです。
七月十六日、午後四時七分。
七月十四日の木曜日から行われた試験が終了し、霧養、竹中、神坂の三人を筆頭に、一部の生徒が先日の環状石攻略作戦の時よりも長く苦しいと思われた戦いの終わりに喜んでいた。
休校中に遊び歩いていた生徒達の多くは試験終了のチャイムが鳴った直後、完全に真っ白い灰になってるのかと思う位に燃え尽き、試験官が答案用紙を回収した事にすら気が付かなかった。
「終わった……、これで自由だ………」
「これで……、夏休みを待つだけっス」
「あきら……、わたし…………頑張ったよ……」
元々勉強が嫌いな霧養、ひと月ほど前まで心が死にかけており勉強どころではなかった竹中、勉強よりも優先してアイドルのコンサートに出かけていた神坂の三人は自己採点で既にいくつかの赤点が確実と思われていた。
思われていたと、いうのも永遠見台高校は赤点の基準が非常に甘く、平均点の半分以下が赤点になる為、答案用紙が返ってきた後で平均点が発表されるまで赤点の基準自体が確定しないからだ。
全員百点を取れば、赤点は五十点。全員五十点を取れば、赤点は二十五点だが、各教科共に問題自体がそこまで難しくなく、ボーナス問題も割と多く用意されているので、赤点を取る生徒は殆どいない。
◇◇◇
この試験前にめでたくトップランカー入りした、神坂、楠木、宮桜姫の三人を含めたランカーズのメンバーは本来試験を受ける必要すらないのだが、生徒会の副会長である喜多川麗子が全校生徒にメールで通達した事により、全員強制的にテストを受ける此処となった。
「何度かの休校で発生した授業の遅れから延期されていたテストですが、七月十四日から十六日にかけて、三日間の日程で行われる事となりました。送付ファイルにそれぞれの日に行われるテストの課目が掲載されています。AGEに登録されている一部の方はテストそのものを免除する事も出来ますが、テストとは本来、学生の本分である勉強が如何に身に付いているか知る為の物ですので、強制は致しませんが可能な限り参加をお願いします」
GE対策部……ランカーズだけでなく、【ゲート研究部】や【武器技術研究部】などで活動するAGEにさえもいい顔をしない喜多川は、教師陣や生徒会を説得して全校生徒が試験を受ける様に仕向けていた。
試験が免除されていると思っていた霧養、竹中、神坂は、直前まで試験勉強すらしなかった事を後悔したが、試験を受ける事が前々から決まっていたとしても、試験勉強をしたかどうかは定かでは無い。
「学校のテストを受けるのに直前まで追加で勉強しなきゃならないのか?」
とは、テスト勉強不足を理由に試験の免除を申請しようとした神坂達に凰樹が言ったセリフではある。
当の凰樹はというと、テスト勉強になど一分たりとも時間は割かず、三日間の休みは対GE民間防衛組織の所長である影於幾之滋との会合や、防衛軍特殊兵装開発部の坂城厳蔵との試作型次世代特殊小太刀や試作型次世代トイガンのデータ解析結果の検証や、調整依頼などで多忙な日々を過ごしていた。
試験前日の七月十三日には安全区域の市長や県庁のお偉方などがその多忙な凰樹を公民館に招き、支配区域奪還を称える為の臨時の表彰なども行ったが、前回の奪還から僅か二週間足らずでの偉業という事もあり、準備していた前回の表彰分に追加で今回の表彰分を上乗せしての表彰という形になっていた。
◇◇◇
七月十七日、午後二時三十二分
試験期間明けという事よりも、凰樹が装備の一部を防衛軍特殊兵装開発部の坂城に送っていた事が原因で、この日は拠点晶の攻略には出ずに、午前中は練習やトレーニング、午後からは部室でミーティングなどを行っていた。
「部員全員が揃ってトップランカーってのも凄いですよね……」
「いや、もうトップランカーって呼び方もどうなんだろうな。正確には明日から変わるらしいが」
今回の環状石攻略作戦によって、AGE登録後、まだ二ヶ月ほどしか経っていない宮桜姫までがトップランカーになった為に、対GE民間防衛組織が一部規定を変え、報酬内容の変更や、ランキング制度の改定を行っていた。
「七月十八日以降、十億ポイントを超えたランカーは全員レジェンド枠とし、通常のランキングからは除外する。なおレジェンド枠に移行後もポイントの加算は今迄通り行われる……。か」
トップランカーを目指して頑張ろうにも、上位九位までが実質塞がっている状態では、セミランカー以下のAGEのやる気が削がれるという事だろう。
今までのトップランカーが三億ポイントだった事を考えれば、基準値の十億ポイントが誰を対象にしているか一目瞭然だが。
「あとは撃破ボーナスと部隊ボーナスだね。攻略のメイン部隊と、サブの部隊。共闘申請された部隊に対するポイントの変更……」
「ま、予算も無限やありゃしませんからな。凰さんが周りの部隊と共闘して百人を超える人間を引き連れて環状石を破壊したら、以前の基準やと数千億ポイント配りゃななりまへんし」
窪内の言う通り、今までの基準では、環状石破壊の作戦に参加した人間全員に最低でも十億ポイント支給される事になっていたのだが、そうすると他の部隊を引き入れて千人を超える大所帯で環状石を破壊されると、兆を超えるポイントが必要となる。
そんな大量のポイントは直ぐに使いきれないとしても、対GE民間防衛組織にはそこまで無尽蔵な予算が有る筈も無く、環状石破壊で獲得できるポイントにある程度の限度が設定される事となった。
改定後の基準。
例えば、レベル一の環状石にある要石の破壊ボーナスに関してでは、破壊ボーナス自体は今迄通り個人に支払われ、作戦行動に参加した部隊で、メインの部隊には五十億ポイント、サブの部隊には二十五億ポイントが支払われる。
サブの部隊が幾つあっても何人いても最高で支払われるポイントは二十五億ポイントで、それを各部隊で分割して受け取る事となる。
門番GE撃破ボーナスは討伐した当人のみ、支配エリア解放ボーナスや人々の救出ボーナスは、メイン部隊やサブの共闘部隊に状況に応じたポイントが支払われる。
この改定により、大部隊で環状石破壊をするメリットは消失したが、元々、AGEに環状石の破壊など不可能と思われて設定されていた額だっただけで、今回短期間のうちに連続で環状石が破壊された為に、現実的な額へ引き下げられただけともいえた。
なお、元々少ないと言われていた拠点晶破壊の報酬は据え置きとなっている。
「これで十分とは言えない額だが、今のままだと他のAGEに配る額が減る可能性があるとまで言われれば仕方ないだろう」
「部隊運営費は十分ありますし、無茶をしなければ当分予算に困る事はありませんわ」
荒城は部隊の収支報告書に目を通しながら、そんな事を口にした。
個人に配布されたポイント以外で対GE民間防衛組織からランカーズに直接支払われた部隊運営費は五十億ポイント近くになっており、戦闘用の特殊車両辺りを購入でもしない限りそう簡単に底を突く額では無くなっていた。
◇◇◇
「ところで、蒼雲と霧養、竹中の三人は大丈夫なのか?」
部活が始まってから今まで、目の前にある菓子に手を伸ばしながらも半分死人の様になっていた三人。
試験の出来が悪かった事は、他の部員がひと目で理解できた。
「返事がありまへんな。ただのし……」
「死んで無いっス……」
「なんや、生きてはったんかいな?」
霧養が身体を起こし、窪内に向かって軽く手を振った。
「テストのヤマやったら、生徒会と敵対状態な武器技術研究部のメンバーが配ったって噂の、予測問題だけでも覚えとりゃよかったんちゃいます?」
「あの、AGE系の情報技術部が学校のコンピューターハッキングしてテスト問題を調べたって噂のアレ?」
その噂位は、楠木も知っていた。
「報酬は受け取らない、情報の拡散も経路不明、しかもテスト問題が作り直せない時期にばら撒くから、そのままテストを行うか、中止するかの二択。良く考えていますわね」
ある時は混雑した食堂のテーブルに小さく畳んで放置され、ある時は教室の窓枠に挟んであり、またある時は掃除ロッカーのバケツの中に投げ込んである。
予測問題はテストの数日前から校内の様々な場所で見つかるが、それを風紀委員や生徒会に届けると犯人と疑われるために、それを利用するか、それとも人目に付かないように処理するかは拾った人間の判断にゆだねられる。
別にGE共存派などでは無い筈の喜多川は、何故かAGE系の部活動を敵視しており、彼女が生徒会長になれば、AGE系に過剰に割り振られている予算を大幅に引き下げるのではないかと言われていた。
その為、武器技術研究部を初めとするAGE系の部の多くは生徒会やその下部組織である風紀委員などと敵対し、テストの妨害などを行う事が多かった。
ただし、様々な場所で見つかる予測問題には、全問正解しても六十点分ほどしか問題が載っておらず、残り四十点分は実力で頑張るしかなかった。
「今回は必要ないと思ってアレを探してなかったんっスよ。いつもはバレない様に適当に答えを書いてたんっスけど」
「自業自得でんな、追試を頑張るしかありまへん」
右耳にイヤホンを繋いで、端末で一生懸命何かを操作しながら窪内がそう言い、完全に他人事過ぎた。
「アレの出所でよく言われているのは、情報技術部が武器技術研究部に情報を流して、それが拡散したって話ですわね」
「生徒会副会長の喜多川はそれを信じて、『絶対に証拠を掴んで、関係者全員を処罰します!!』と言っていたが、まあ無理だろうな。奴らはそんなへまはしない」
あれだけあからさまに敵対されていても喜多川の事など歯牙にもかけず、予測問題も利用しない凰樹は、この生徒会と反抗勢力の戦いを愉しんでいるかの様だった。
実際、凰樹はゲート研究部の情報解析能力、情報技術部の諜報や隠蔽能力、武器技術研究部の開発力や資材調達能力は高く評価しており、この各能力が突出した異能集団と、権力以外にこれといった特徴の無い生徒会やその下部組織の人員数に物を言わせた抵抗を面白がってはいた。
また、この水面下の抗争は生徒間では割と有名であり、影のサポーターたちが各勢力に様々な手助けをする事で、より混沌とした図面が描き出されていた。
「生徒会の予算より、GE対策部の予算の方が多いのが我慢ならんのとちゃいますか? 他のAGE系の部もそれ以外の部に比べたら優遇されとりますし」
「部隊運営費は自力で稼いでるから、別に予算ゼロでも問題無いがな。大体、学校からの予算なんて微々たるものだ」
莫大な予算を必要とする部隊運営費は、その殆どが対GE民間防衛組織から支払われたポイントで賄われている。
設備面なども優遇されているが、GE対策部に所属する部員が後ろ指を指す事すら困難な実績を打ち立てられている為、生徒会がこれに口出しをする事は不可能になっており、もしこれ以上GE対策部にちょっかいを出せば、学校から追い出されるのは誰か、誰の目から見ても明らかだった。
「あの……、今のうちから追試験の為の勉強とかしてあげたらどうですか?」
神坂達を心配した宮桜姫が、比較的成績の良い上位陣にそう提案した。
「同じ問題をもう一度やるだけやから、追試は答え丸暗記すりゃ誰でも満点が取れまっせ」
端末で前回の戦闘映像を編集していた窪内が、画面から目を離さずにそう言い放った。
今回は環状石を破壊した凰樹の分と、拠点晶に攻撃を仕掛けて多くのGEを引き付けた別働隊の分があり、こういった編集仕事に慣れている窪内でさえ苦労しているようだった。
窪内の言う通り永遠見台高校は本当にその辺りが甘く、追試験で平均点を上回れば合格となり、もし仮にそれを下回った場合でも再々試験免除の課題の提出が待っているだけだ。
これは、再試験の為に教師がテストに付き合わなければならないという問題を解決する為の物で、別段生徒の為の救済措置では無かったりする。
「紫は今度から真面目に試験勉強するべきね」
「うぅ……、次は…頑張る……」
竹中の場合、特に勉強が嫌いという訳では無いが、GEを倒して父親を助け出す事しか頭になく、父親が戻ってきた後に一応、勉強は始めたが、今までのブランクが長過ぎた為に一教科だけ試験勉強が間に合わなかっただけだったが……。
◇◇◇
「試験の事はもういいだろう? あと数日で突入する夏休みの事で話をしたいんだが」
「「「「夏休み……」」」」
野球部など運動部系は確実に毎日部活動があるし、かなり値段の安い学食で食事を済ませる為とはいえ、情報技術部や武器技術研究部など文科系の部も殆ど毎日部活を続けている。
永遠見台高校の学食は職員が交代制で出勤している為に、日曜祝日に関係なくほぼ年中無休で開いている。
尤も、用意される食事の量は当然少ない為に、食券の売り切れもいつもよりずっと早いのだが……。
「基本的に活動は週一か週二で行えばいいと思っている。今までほぼ毎週拠点晶や環状石などの攻略作戦を行って来たからな。猛暑の中、無理に作戦行動をする必要も無いだろう」
「えっと部活の日は拠点晶の攻略?」
「いや、拠点晶の攻略も夏休み中に三~四ヶ所でいいと思っている。他のAGE部隊の活動もあるし、今の所、優先順位の高い作戦は無いしな」
これには訳があり、前回のKKSとKKIの二ヶ所の廃棄地区の奪還により、近場の危険地区がかなり限定された事が大きい。
移動用のマイクロバスなどを所有している凰樹達ランカーズとは違い、自転車の荷台などに装備を括り付け、長物系の装備は専用のガンケースに入れて背中に背負って現地に向かう学生AGE部隊も珍しくは無い。
その為に次に攻略する環状石をどこにするか、様々な情報を集めている最中で、積極的に拠点晶を破壊する必要が無い事も大きかった。
「じゃあさ、せっかく夏休みなんだからみんなで何処かに行かない?」
「そうっスね。安全区域もかなり広くなってるっすから、キャンプとかもいいっス」
「海岸線沿いは色々あるから、山でのキャンプ? いい場所あったかな?」
「先日奪還したKKI地区の山には昔キャンプ場があったらしい。申請すれば利用可能になっているだろう」
「キャンプ!! まさか本当にキャンプが出来るんですの?」
奪還したばかりの為に売店など周りの施設には期待が出来ないが、道路だけでも整備されていればそれで十分だった。
近場で済ませようと考えていた凰樹達を横目に、一際興奮していたのは荒城だった。
幼い頃、我儘でピクニックを行った時、おつきのボディガード二名をGEの犠牲にしてしまったが、その事は忘れてはいない。
しかし、幼い頃にキャンプというものを知った荒城は、ピクニックの一件があった為にキャンプに行きたいとは流石に言い出せず、この歳までキャンプに行きたいとずっと思っていたのだ。
基本、AGE活動の際も何処かに泊まり込んで拠点晶周辺を攻略する事など無く、日が落ちるまでに帰還する事が多い為に、テントで泊まったりする機会にはついに恵まれる事はなかった。
「ねえ、折角キャンプをするなら、少し遠征しない? 隣の県の海水浴場だとキャンプも出来るし海も綺麗だよ」
「日本海側か……、国道は再整備及び主要道路奪還作戦で通れる場所も多いが」
再整備及び主要道路奪還作戦……。
日本列島を縦断する国道のうち、低レベルの環状石及び、主要道路周辺の拠点晶を破壊し、日本全国の流通を復活させた作戦。
ただ、道路から僅か百メートル程度の位置に高レベルの環状石の支配下にある拠点晶が存在する場所もある為に、危険度の高い場所もいくつか存在する。
「道路が使えるなら、移動手段はマイクロバスだけで十分でしょ?」
「キャンプといえばBBQ!! BBQとかもするなら、もう一台あった方がいいっス。それにAGE隊員として最低限の装備は携行しなきゃらならないっスから」
一応、戦闘系作戦目的の移動でなくても対GE民間防衛組織の規定でGEによる突然の襲撃や戦闘に備えて最低限の装備は常に携行する事というものがある。
なお、凰樹には先日、【試作型次世代特殊小太刀などの対GE用接近戦専用装備の所持許可】等という本人が別段望んでもいない許可が発行されてしまった為に、坂城から追加で送られてきた試作型次世代特殊小太刀を左の腰にぶら下げていたりもする。
「海水浴が出来るキャンプ場か、安全区域に存在するキャンプ場は流石に予約でいっぱいだな。廃棄区域に指定されている場所にはまだ予約が可能な場所が何か所かあるが、どの場所でも極稀にGEが出現する事もあるそうだ」
凰樹がこの時点で予約が取れそうなキャンプ場を端末で検索していた。
GEの出現頻度の少ない廃棄区域に近い海岸などは比較的整備されている事が多いが、それでもGEが出現する可能性が高くなればなるほど人気が低い。
「GEの出現頻度ってどの位?」
「小型が数匹、ここ数週間で三回程度だな」
AGEであれば其処まで脅威という事は無いが一般人にとってはそれでも十分に脅威な為に、GEの出現が確認されているキャンプ場を備えた海水浴場には一年で一番の書き入れ時でありながら、殆ど予約が入っていない状況だった。
「コテージ予約可能、シャワー設備完備、BBQ用品の貸出あり、マイクロバスを使えば片道三時間程度だな……」
「そこにしようよ!! せっかくのキャンプなのに、近場のキャンプ場なんて味気ないし」
「その通りですわ!! テントでは無くて、コテージというのも最高ですわ♪」
荒城などは完全にお嬢モードに入り、胸の前で手を組んで瞳を輝かせていた。
「では此処に予約するとして、日程はどうする?」
「天気予報の台風情報だと、暫く大丈夫っぽいけど。二十四日あたりはどう?」
「予定ですとテストの結果発表と追試験は週明けの十九日ですし、その日にしませんか?」
「それじゃあ、二十四日の予約で動くぞ」
ランカーズの場合、一泊二日とはいえ県外に出る場合は対GE民間防衛組織に連絡を入れるように言われている。
この居住区域が凰樹の戦力を頼りにしすぎているのが原因で問題なのだが。
◇◇◇
「食べ物に飲み物。それに海に行くなら……、水着?」
この時、女性陣の殆どは、如何に凰樹が朴念仁でストイックな性格だったとしても、夏の眩しい太陽の下、アピールポイントの高い水着で誘惑すれば、少しはその心が揺れるのではないかと考えていた。
「ね、あきら。紐的なので良い?」
「良いわけないでしょ!! 紐でそれをどうやって隠すつもりなのよ!!」
比較的になだらかな胸をしている楠木は、竹中の発言に血の涙でも流しそうな顔で食ってかかっていたが、このやり取りも、最近では良くある光景だった。
「凰樹君、今日の部活って何時までするの?」
「特に問題が無ければこの話し合いが終わった後に解散したいと思う。明日は祝日だが、部活も休みでいいだろう」
時間的にはまだまだ余裕があったが、女性陣が全員それぞれの家に帰って着替えて準備をするには少しばかり難しかった。
「明日は皆で買い物に行かない?」
「いいですわね。以前の再開発で作られたショッピングモールに行けば、色々揃いますわ♪」
「何時に集合しますか~? せっかくですから、おしゃれなカフェでお昼も食べたいですし~」
この皆には男性陣が含まれていない事は明らかだった。
水着を買うのに男性を連れて行く女性など存在する筈も無い。
「俺や龍はまだやらなければならない事が多いから残るが、もう解散で良いぞ」
「凰樹君、それじゃあまたね」
「輝さん、それではまた明後日に……」
宮桜姫達女性陣は明日の予定の為に色々と調べ、スマホに集合時間などを送り合っていた。
全校生徒が待ち望んでいる夏休みの足音は、すぐ傍まで近づいていた。
読んで頂きましてありがとうございます。
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