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 プロローグ


 プロローグなので短めです。

 スカイティア。上空1万メートル超に位置する巨大な浮島。数度にわたり調査隊が編成され調査に向かうが誰一人として国へ戻ってきた者はいない。あまりにも居心地が良く戻ろうとしないのではないか、と様々な憶測が飛び交い、尾びれが付き、スカイティアは天空の楽園と言われるようになった。


「リエイ、楽しかったぞ。数年後には後を追おう」

あの世あっちでも楽しくやろうか」


 玉座に腰をかけ楽しそうに笑う青年リエイ・クライシス。その青年とこれまた楽しそうに話す銀色の粘液状の生物スラン・クライシス。この二人はこの楽園スカイティアの神とも言われる二人だ。


「なあ、前にも話したと思うんだが、この200年と余年はとても早く感じたよ」

「お前に会うまでの記憶は曖昧だが、きっと短すぎたのだろう」


 リエイはそうだなとスランの言葉を肯定しながら、閉じていた扉に声をかける。


開門オープン


 閉じていた扉が開き、外から多種多様の種族が入ってくる。人族、竜、スケルトン、ゴブリン、龍人族ドラゴニュート猪頭オークと様々な種族が入ってくる。


「リエイ様、我はリエイ様に出会うまで兄上や姉上以外に負けたことなどなかったのだ」


 透き通るような白い鱗をもつ、竜は寂しそうな声でそう言った。そしてその声にかぶせるようにして、紫の髪に赤紫色の目を持つ女が話し出す。


「リエイ様、私はファンデリカは、貴方様に助けていただかなければ、今ここにはいませんでした。私のようなアンデットものは…」

「それ以上は言わなくていい。自分を卑下するな」

「…はい」


 その言葉に顔は嬉しそうな顔をするが、声は悲しさを隠しきれていない。


「リエイ様、死ぬ前にもう一回、僕と戦ってくれませんか?」

二番目セカンそうしたいのは山々なんだけどな。ほら」


 リエイはそう言いながら、自らの足を見せる。そこにはひざ下までの肉が崩れ落ち、骨を露出している足があった。セカンと呼ばれる金と碧のオッドアイを持つ少年はそれを見て一瞬だけ、悲しそうな顔を見せるがすぐにいつもの人懐っこい笑みを浮かべて一歩後ろに下がる。


「悪いな。最後に叶えてあげられなくてな」

「リエイ様、謝罪は必要ありませんよ。セカンの相手は俺がやっておきます」


 そう言うのは黒ずんだ青の鱗を持つドラゴニュートの男だ。そしてその言葉に隣のオークも便乗する。


「ロモル。セカンの相手を一人でするのは骨がいるだろう?俺も手伝おう」

「ああ、頼むよルッド」

「お前ら、俺抜きで話を進めんじゃねーよ。俺との別れだぞ?俺との」


 話において行かれたリエイは楽し気に…少し寂しそうにそう言った。


「まあ、いいがな。俺もあと少しのようだ」


 肉が崩れ落ちる速度は次第に早まり、今ではへその下あたりまできていた。


「お義父様…いえ、リエイ様。貴方様の後は私リリアーナ・クライシスがこのスカイティアを導き、更なる発展を遂げさせましょう。で、ですから、安心してくだ…さい」


 最後は涙を流しながら振り絞ったような声だった。必死で我慢していたであろう涙は自分の言葉で涙腺を決壊させ、溢れさせる。これから、スカイティアを導いて行かなくてはならない自分がここで泣いては…涙を流してはいけないと思っているが心とは裏腹に涙は次第に量を増していく。


「リリー、泣くなよ。笑って送り出してくれ」


 リエイはそう言いながら、ポンポンとリリアーナの頭を叩いた。それにリリアーナはひっぐと呼吸を整えながら応える。それを見てリエイは満足気に頷いて立ち上がる。


「…最後に主らしいそれっぽいことをしてみるか」


 リエイはスッと玉座から立ち上がると外を一望することのできるベランダのような場所へと歩いて…いや、飛んでいく。


 そこから下を見ると溢れんばかりの魔物たちが皆一様に悲しそうな、寂しそうな顔を浮かべているのが見て取れる。リエイはその光景に物怖じけることなく話始める。


「我が名はリエイ・クライシス。この天空の楽園スカイティアに君臨する王なり。だが、我の役目は今を持って終了だ。これからは我が娘リリアーナ・クライシスが我らがスカイティアを導ていくだろう。そこでお前たちに頼みたいことがある。是非、我が娘…いや、このスカイティアの新たなる主導者に協力してもらいたい。これは命令ではなく、願いだ。__スカイティアの更なる発展を願って、我の王としての最後の言葉とする!」


 静まり返っていた場を誰かが無理矢理にでも盛り上げようと声を張り上げる。それに続いて他の者もと徐々に大きな歓声となっていく。


「__これからいうのは、リリアーナの親としてだ。てめぇら、リリアーナ泣かしたら、あの世あっちにいようが戻ってきてぶん殴るからな__以上だ」


 そう言うとリエイは後ろを振り返らずに玉座に戻っていく。だが、座ることはない。既に座るものは新しく現れたのだから。


「ふむ。リリーちゃんを泣かせれば、リエイ様に会えるのか」


 スケルトンの男が場違いな言葉をつぶやく。


「文字通り骨も残らないさ。ケルト。それとブリン、ケルトを止めておけよ」

「はっ、このブリン命に代えましてもその命を果たしましょう」


 リエイの言葉にゴブリンの男が膝をつき、右手を胸にあてながら応える。


「それはそうと、だ」


 リエイは話を変えるために一度前置きを入れ、話始める。


「このままいくと俺はすぐに骨だけになるだろうから、その時は骨粉にでもしてリリアーナの菜園の栄養にでもしてくれ」

「え!?そんな畏れ多いことは…」

「リエイの最後の頼みだろう?聞いてやれ」

「スラン様!そうは言われましても…はい。わかりました」


 リリアーナが折れると、リエイは薄く笑ってから、頭を撫でる。それにリリアーナは嬉しそうに笑い後ろに下がる。






 思い出というやつだろうか、色々なことが頭を過る。

地球むこうに居た頃を俺はいじめにあっていた。それでも少ないながらの友人と楽しくやっていたと思う。まあ、今ほど充実はしていなかったが…。結構太ってたしな。今は無駄な肉がないどころか、ほとんど、骨だけだからな。ネトウヨだったし、愛読書はライトノベルだったし。

 200年近く生きてんのに、美少女エルフとも美女エルフとは話したことないし、てか、エルフに会ったことないな。


「グリム、お前ってエルフとか会ったことあるか?」

「う~む。あれは姉上から逃げt…大陸間を移動している時であった。なんとなくで降り立った小さな島に耳の長い種族が暮らしていたのだ。きっとエルフと呼ばれる者たちだったのだ」

「そんで、何かなかったのか?」


 グリムは少し考えるような仕草をすると話し始める。


「我を攻撃してきたのだ」


 グリムの言葉に珍しく静かに聞いていたセカンが口を挿む。


「グリムのことだから、降りた時に村潰しちゃったんじゃないのー?」

「む?我がそんなへマする筈がなかろう。いきなり攻撃してきたのだ」

「ヘマする筈がないだと?お前のバカな行動の所為で一国滅ぼすっことになったのを忘れたのか?」


 さっきまで黙っていたスランが、いやなことを思い出したとグリムを睨みながら話す。


「今となってはただの思い出だろ」

「リエイよ。この先の話をを忘れていないよな?」


 スランの言葉にリエイの口が閉じる。それもそのはずだ…。


「お前がやれケモミミパラダイスだの、全人類の夢だのと熱く語るから、あんなことになったのだろう」


 そう、その言葉を聞いたファンデリカが、ほとんど立て直しも出来ず後は滅びるのを待つのみという獣国に追い打ちというか、単騎で攻め込み獣人たちの耳だけ刈り取ってきたのだ。


「あれは、ひどかったな」


 リエイの呟きのようなその言葉にファンデリカが体をビクッとしてから謝罪の言葉を口にした。



 _______________



 あれはひどかった。あんなことになるとは俺も予想していなかった。一言で表すなら、地獄絵図だろうな。耳を無理矢理千切られた者たちの悲痛な叫びはいくら自分たちで滅ぼしたからといっても心を痛めるのに十分なものだった。


 だけど、本当に、本当に楽しい日々だった。出来ることなら、もうちょっと生きていたかったな。


 …まだ終わりたねーな。まあ、もう終わりか。そうか…それじゃ


「楽しかった。ありがとう…また会おう」


 俺はその言葉を最後にこの世に別れを告げた。




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