五の章
五月もいよいよ中旬に差し掛かった。
部長である佐々木教芳はやっと部活に来れることになった。
「わぁ〜、この部屋久しぶりだなぁ♪」
「来れなかった時期、長かったですからね」
懐かしそうにはしゃぐ佐々木を後ろから暖かそうに見守る城津。
「コーヒーとか入れるっすか?」
西条は手にコップを持っている。
「いや、部長は紅茶の方が好きだろう」
御影はティーパックを片手に、西条を押しのけ、佐々木に訊ねた。
「そうだね。あ、でも、零和ちゃんに入れてもらいたいかも♪」
「え…、私ですか?」
零和は突然名前を呼ばれて少し驚きながらも、御影からティーパックを受け取った。
「零和ちゃん、久しぶりに会ったけど、僕が会わない間にますますべっぴんさんになったね〜」
今日も相変わらず口説きまくってくる。
そんな佐々木を横目で西条は見る。
「…ほんと、複雑な関係ですよね…」
桐神は苦笑しながら城津と一緒にお菓子を頬張った。
佐々木も戻り、やっと部活がまとまったと、零和は心底安心していた。その時だった。
「お前、最後の大会いつになった?」
楠見がふと思い出したかのように、佐々木に訊ねた。
「たしか1週間後かな?次の土曜日。薙早は?」
「…俺、明後日だわ。公欠」
「え、早いね!?それまでに沢山思い出作っとかないと!」
3年生2人が何かについて話していた。
零和が不思議そうな顔をして2人の会話を聞いていると、それに気付いた御影が隣に来て教えてくれた。
「最後の大会、つまり、引退試合の話をしているんだ」
「え!?」
引退…?
「もう大体他の部活の3年生は引退しだしている頃だろう。伝統部は皆の選考している部門が違うから、引退の時期がバラバラなんだ。…楠見先輩はその時期が早かったんだな」
「…そういうことだったんですか」
仲良くなってすぐ、部長が復活してすぐ。
もう2人の先輩たちと一緒にいれる時間は短いのだと、零和は改めて実感した時に鳥肌が立った。
その様子を見て御影は何を勘違いしたのか、自分が持ってきたタオルを零和の腕に被せてきた。
「え…?」
思わず声が漏れる。
「寒いんだろう?冷房で冷えたのか」
「え、えっと…」
「遠慮しなくてもいい。…そのタオル、お前にやる」
御影は自分が勘違いしている事に気付かないまま、少し顔を赤らめ零和に言った。
「タオル、もらってもいいんですか…?」
零和は自分の腕にかけられた、青い無地のタオルに目を移す。
御影はコクリと頷き、恥ずかしそうにして部屋の奥へと入っていった。
零和は3年生がもう少しで抜けてしまう悲しみに震えながらも、落ち着くように、と、御影から貰ったタオルをしっかりと握りしめた。
5
楠見薙早[クスミナギサ]
身長;175㎝
体重;65.1㎏
特技;囲碁
other;ツンデレだったりする。←本人は否定