未来を見る
しょうもない毎日を重ねルーチンワークをこなすだけ、信じれる物は自分の目に見て触れ確かめられる物だけ、そんな世の中になってしまった。
いや、してしまった。
「おい!東吾!一緒に帰ろうぜ!」
ホモみたいに付きまとってくる彼は俺と同じ森沢暮影高校1年霜里 浩太幼稚園から一緒なのだがこの気持ち悪さにはなかなかどうして慣れることはできない。
「浩太もそろそろ彼女つくれよ」
「『も』ってなんだよ、お前もいないだろ」
「俺は女に興味ないんだよ」
「お前まさか…そっち系…」
「まさか」
ククク…パチッ
それは突然の出来事、現実か否か光が瞳孔をくぐり脳に届くまでに体が動く。
「あぶない!」
浩太の頭を掴み共に地面に体をねじ伏せる。もう一度音の先を見る。白と黒の車が交差点中央で大破していた。
「おい、あれ…」
「なんだよ急に」
「あれだよ!」
交差点の二台の車のほうを指さしたが交差点の中には一台も車の姿は見えなかった。
「さっきあそこで車が」
「お前何言って」
気のせいか、いや、確かにこの目で見えていた。あの景色、偽りではない。
ドン!!!!!!!!!
突然の爆音が交差点から響く。
ガラスが飛び散り人々が騒ぎ出す。
「これ…」
「おい!まじかよ!」
見たことある景色、白と黒の車が交差点中央で混ざり合い大破していた。
後ろから近づく足音に気付く。
「キミ」
「お、俺ですか?」
初対面の人に話し掛けられたのは初めてではないが何度経験しても緊張する。
白い髪は長く顔右半分は前髪で隠れてよく見えないがとても綺麗な顔だとわかる程整った顔だ、声も高いが男だろう、黒いコートを纏った彼は話を続けた。
「ビジョナーだね?」
「はい?」
「ビジョナーでしょ?」
「違います、南立 東吾です。」
「覚醒して間もないか…まだ自分の力に気付いてないのか」
「なんの話ですか?」
「キミには未来が見えるだろ」
心の中の空回りしていた錆び付いた歯車が噛み合わさった瞬間だった