第7話:ジャパングの秘密?
どうも、久しぶりの投稿です。
一ヶ月以上もかかってすいませんでした!
実は、もう一つ謝らなければならないことが……
1話から6話までの修正で、ヒロインの口調の変更とか、一部の人間の名前が変更されています。
ホント、すいませんでした
夜になる前に森を抜けて街道に出る予定だった。
しかし、クックに絡まれたせいで、時間を大幅に消費してしまい、タクミは川原でキャンプを張ることにした。
なぜかクックも一緒である。
「まったく……、クックのせいでもう夕方じゃないか」
「別に私のペースに合わせる必要なんてないのに。私はただあんたをストーキングしているだけなんだから」
「こんな広い森の中において行くなんて、そんな事できるわけないだろ。あと、ストーキングはやめてくれないかな」
本当は『一人旅がちょっと怖い』とは言えず、とりあえずはぐらかしておく。
「優しいのか冷たいのか、わかんないわね」
そんなことを言い合いながら、二人は川に釣り糸を垂らした。
保存食は地味に高いので、タクミはなるべく道中で確保することにしているからだ。
「ふれはいはねー(釣れないわねー)」
「なぜ、干し肉を食べているのかな? って、しかもそれ僕のじゃないか!」
「んぐ。ケチケチしないの。お礼に今日は私のサバイバル料理を食べさせてあげる」
「損しかしないじゃないか! 返しなさい!」
「なに? あんた、私の唾液がベッタベタについた干し肉をそんなにしゃぶりたいの? 変態? まあいいわ。ほら、あーん」
そう意地のわるい笑みを浮かべながら、クックは咥えていた茶色い干し肉を、タクミ眼前に突き出した。
先端部にはクックの歯形がくっきりとついており、クックの口まで唾液の糸がひいている。
タクミは顔を真っ赤にしながら、眼を逸らした。
「い、いらないよ、そんな汚いの!」
「か、返せと言ったり、いらないと言ったり、考えのまとまらないやつねー」
再び干し肉を口に戻したクックは顎を動かす。
自分でも少し恥ずかしかったのか、彼女の頬はほんのりと桃色が浮かび上がっていた。
(照れるならやらなければいいのに)
ため息をつく。
「知ってる? ため息をつくと幸せが逃げるって巷では噂になってるのよ」
「元凶がそれを言うか……。というか、それ迷信だよ」
「そうかもしれないけど、実際近くでため息つかれると、イラッとすることはあるわよね」
「だったら離れればいいのに……」
「いやよ。せっかく見つけた鍛冶師に逃げられたら困るじゃない」
そう言って、わざとか天然なのか、彼女はより一層タクミに近づいた。
ちょっと動くだけで触れそうな位置にクックが来たので、タクミの胸の鼓動が少し早くなる。
「ち、近いって……! てゆーか、見習いの僕なんかより、街とかにいる鍛冶師の方に当たってよ。そっちの方が腕はいいんだし」
「ふっ、甘いわね。そんなのとっくに断られてるわよ」
なぜか誇らしげに胸を張るクック。
「それにね、タクミに目をつけたのには、ちゃんとした理由があるの」
「ちゃんとした理由?」
胡散臭そうに眉をひそめるタクミに、クックは傍らに置いておいた鉄鍋を指差した。
「たとえば、あれ。タクミは、一瞬であの鍋を直して見せた。もちろん、魔精加工は私だって何度か見たことはあるわ。でもね、私が今まで出会った街の鍛冶師たちにはそんなことは出来なかったの」
「そうなの? でも、ジャパングの鍛冶師なら」
「確かに、鍛冶国家ジャパングの鍛冶師なら標準的な速さかもしれないわね」
「だったら、他のジャパングの鍛冶師を当たればいいじゃないか。僕なんてフツーもいいところだよ」
少し不機嫌そうに口を尖らせるタクミ。
ある事を除けば、はっきり言ってジャパング鍛冶師の中では普通だということをタクミは知っている。
いや、思い知らされたのだ。
そんなタクミのふて腐れた態度に、首をかしげながらも言葉を続ける。
「なに不機嫌になってるのよ。あんたさ……こんなところまで、ジャパングの鍛冶師が何人も来ると思ってるの?」
その言葉に、そう言えばそうだ、とタクミは相槌をうった。
ジャパングは極東の地。
大陸東部ならいざ知らず、こんな大陸の北西部に来る鍛冶師はあまりいない。
「こんなところまで来るのは、余程仕事熱心な奴か、変人、あとは馬鹿だけだろうからね」
「そうそう――って仕事熱心ってなによ?」
少し気になる単語に、クックは問いかけた。
その問いかけに、タクミはきょとんとしたが、すぐに思い出したかのように口を開いた。
「そっか、他国の人は知らないんだっけ。修行の旅って実はしきたりなんかじゃないんだ。国からの勅命……みたいなものなんだよね」
「どういうこと?」
「一四歳になったら、『二〇になるまでこれ探して来い』っていう勅命書が送られてきてね。それに書かれている物を探す旅に出されるんだ。ある程度旅費とかももらえるし、二〇になって帰国すると、探し物が見つからなくても給金が支払われる。だから仕事と言っても差し支えないだろ?」
「たしかにそうかも」
「たいていの見習い鍛冶師たちは国内に留まるし、国外へ出たとしても隣国のナカックニぐらいまで。ここまで来る鍛冶師は稀だろうね」
そういて肩をすくめる。
「だからこっちの地方ではあんまりあんたたちを見ないのね。でも」
クックの目がキラリと光った。
「でも、ここまで来るって事はあんたも相当仕事熱心ってことよね。俄然あんたを私の専属鍛冶師にしたくなったわ!」
キラキラと紅玉のように輝く目を、目いっぱい開いてこちらを見つめてくる。
だがタクミは、首を振り、すこし乾いた笑いを見せた。
どこか辛そうで疲れたような、そんな笑いだ。
と、タクミの竿がブルブルと震えた。
その竿を、よっ、と振り上げ口を開いた。
「僕は馬鹿の部類だよ……それも大馬鹿野郎さ」
本日はじめての小魚を釣り上げたタクミのその声色は、とても寂しそうで自虐に満ちていた。