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第14話:クックの決意

 暗く狭い小屋の中。

 そこには盗賊の一人と赤髪の少女クックが荒い造りの椅子に腰かけ、クックの横には白い包帯を胸元からちらつかせる青年が一人立っていた。

「これ、どうしたの?」

 クックに黒い刀身を突きつけられ、ぐるぐる巻きにされた盗賊の一人はビクリと体を震わせた。

「答えなさいっ!」

 バンッ!

 クックは苛立ち、机を思いっきり叩いた。

(タクミのやつ……私の言ったこと全然わかって無いじゃない!)

 その言葉が口から飛び出しそうになる。

 ギリギリと歯軋りをするクックに、見張りをしていた青年が困ったように声を掛けてきた。

「あの……そんなに怒りむき出しにすると、答えられるものも答えられないというか」

「ああん? なんか言った!?」

「いや……なんでも無いです……」

 鋭い赤眼に睨まれ、青年はしゅんとして腕に巻かれた包帯をいじり始めた。

 その様子を見て、関係ない青年に当り散らしてしまったことに後悔の念が押し寄せた。

 慌てて謝ろうとするが、クックが口を開くより先に、盗賊の口が開かれた。

「貰ったんだよ……」

「貰った? 誰に?」

「仲間がつれてきた変な男だよっ。……いきなりやってきて俺たちボコって『俺が新しいボスだ』って言って……すぐにアジトの奥に引っ込んだんだ」

「そいつって鍛冶師じゃない?」

 男がぱっと顔をあげた。

 どうやらタクミの言っていたとおりらしい。

「お嬢ちゃんの言うとおりだ。でもそいつホントに変な男なんだっ。一週間前に『絶対に騒ぎを起こすな』って言ったかと思えば、今日の朝には『これを持って好きなだけ暴れて来い』なんて言うんだぜ?」

「なるほどね……でもそいつそんなに強いの? あんたたちそこそこ強かったじゃない」

 その言葉に男はかぶりを振った。

「……自分で言うのもなんだが、俺たちは盗賊団としちゃあ下の中ってところだ。さっきの強さは、お嬢ちゃんの持ってる刀のおかげさ」

「刀のおかげ?」

 途端、男は喜々として語りだした。

「とにかくすげぇんだっ。持った途端、気持ちがフワフワしてな! それと同時に、なんだか体も軽くなるんだ。試しに走ってみると、すっげぇ速く走れて、全然疲れねぇんだぜ! 刀の切れ味もハンパじゃねぇし。ほら、嬢ちゃんが俺たちと遭遇した場所の民家の壁。木の壁だったけど、大きな刀痕があっただろ? あれ俺がやったんだぜ! 普段なら壁に刺さって抜けなくなるだけなのに! それでな――」

「もう黙りなさい」

 ごっ。

 頭を殴られ、男は机に突っ伏して昏倒した。

「どうやらこの刀……持った人間の気持ちを高揚させるみたいね。それこそ怪しげな薬みたいに」

「お姉ちゃんは持ってて大丈夫なの?」

 青年の心配そうな声に、

「大丈夫よ。おそらく効果があるのは刀として機能している間だけだと思うわ。この男も、もうしばらくすれば効果が抜けるんじゃないかしら」

 不機嫌そうに言うと、手に持った黒刀の刀身を青年に手渡す。

 コートのポケットから赤い紐を取り出し、おろしていた長い髪をきゅっと後ろで結ぶと、クックは小屋を出た。

 外はすでに日が落ちて、冷たい闇とばら撒かれたガラス屑のような星の光が空を覆っていた。

(本当ならタクミにやらせるべきなんだけどね)

 星空を見上げながらひとりごちる。

 相手は十中八九、《妖刀》だろう。

 刃物恐怖症を差し引いても、今のタクミをぶつけるわけにはいかない。

 それに街へ応援を呼びに行っても、手続きやら裏付け調査やらで、本格的に動いてくれるまでには二、三日はかかるだろう。

 街まで行って、帰ってくることも考えれば、一日近くかかってしまう。

 そうすれば逃げられるかもしれない。

(だから、《妖刀》は私が仕留める!)

 ぎゅっと拳を固める。

 逃がせば、その鍛冶師は他の土地でも同じ事をやるだろう。

 そんなことは、自分の中にある養成所時代に叩き込まれた騎士道や正義感がゆるさない。

 それにもしそんなことになれば、またタクミは必要以上の罪悪感を感じるだろう。

 そう思い、クックは盗賊団のアジトがある山へと向かって走り出し、闇の中へ消えていった。

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