7話
翌週月曜。朝のホームルームが終わると同時に担任のエルドリヒ先生がクラス全体を見渡して宣言した。
「さて諸君。恒例行事“一学年野外演習”のチーム編成を発表する」
ざわめきが起きる。新入生同士の親睦と協調性を養うための課外活動であり、2泊3日の強制参加。
教官方曰く「己の不得意を克服し仲間の大切さを学べ」というテーマらしい。
配布された羊皮紙を見る。B-4班:クルト=フォン=エルスター/フィリア=マティアス/ミア=エーベルハルト。他男子2名の計5名のチームだった。
フィリアが嬉しそうに羊皮紙をくるりと回す。ミアさんも落ち着いた様子で頷いていた。
しかし同席メンバーの男子が気に入らないようで絡んできた。
「なんで俺の班にてめぇみたいのが居るんだよ。能力が低い奴と行動なんてしたくないね」
彼の名はハインリッヒ=フォン=ツェラー。裕福な侯爵家の出身でプライドが高いのが丸わかりだった。もうひとりは物静かなルドルフ=クライス――こちらはハインリッヒに完全従属しているように見える。
ミアさんが穏やかに返す。
「皆平等に協力するのが目的のはずですわ」
ミアさんの毅然とした態度にハインリッヒは舌打ちした。
「エーベルハルト家か……身体は良いが、伯爵家の女としては分不相応な態度だな」
ミアさんの胸の起伏を舐めるような視線を投げかける。嫌悪感に満ちた表情で俺が一歩前へ出る。
「やめろ」
声に棘を込めるとハインリッヒが嘲るように笑う。
「魔力E以下の出来損ないが口を挟むな。劣等種と生んだエルスター家は没落決定だな。良かったなぁ、エルスター公爵家の穴埋めは我がツェラー家が仰せつかろう!」
挑発に応じない方が得策だ。というか挑発にもならない。
そもそも俺は4男なんだから跡継ぎになるわけがない。後継者争いは最初っから上二人でしかやってないからね。
「……これ以上の侮辱は許しません。はっきり言います。あなたがいくら高位貴族であろうと、私の友人に向けて無礼な態度を続けるならば容赦しません」
その瞬間ハインリッヒの顔が憤怒に歪んだ。
「だったら――ここで思い知らせてやる!」
ハインリッヒが素早く短杖を抜く。魔法陣が空中に走る……が完成する前にミアさんがステップ一つで懐に入った。
拳によるフェイント、膝蹴りの加速――瞬時に魔法の発動を妨害し制圧する。
護身術……しかもかなりレベルが高い。
ハインリッヒの息が詰まり杖を取り落とす。ミアさんは倒れ込んだハインリッヒを冷たく見下ろした。
「戦闘訓練を一度も受けたことがないのでしょうか? 詠唱中の防御意識が乏しすぎます」
敗北を認めたくないのか唸りながらミアさんを睨む。しかし彼女は眉ひとつ動かさない。ハインリッヒは屈辱で顔を赤くするものの、ルドルフに支えられ逃げるように去っていった。
ミアさんが俯き加減に申し訳なさそうに呟く。
「申し訳ありません……冷静に抑えるべきだったかもしれません。でも……彼があなたを侮辱するから……つい」
「謝ることじゃない」
俺はしっかりと彼女の瞳を見据える。
「僕の方こそ助けられた。ありがとう」
フィリアさんが傍らで微笑む。
「ミアちゃん格好良かったよ! ヒューヒュー!」
「フィリア……やめてちょうだい……恥ずかしい」
照れ隠しに咳払いして顔を逸らすミアさん。
俺は先生に向けて手を上げる。
「先生」
「……チームは変更、そこは3人で組め。残りは私が調整しておく」
「ありがとうございます」
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