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近未来の魔法世界に転生して最強ハーレムを作る  作者: ななお


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2/15

2話

 十五年の月日が流れた。首都ハイデルの春は例年より少し冷たく、薄紫の花が石畳を覆い尽くしている。今日は俺――クルト=フォン=エルスターの十五歳の誕生日。つまり前世の記憶を持って転生してからの節目だ。


 まずこの世界の説明から始めよう。大陸は中央海を挟んで東西二つの巨大陸塊に分かれている。東方は王国領、西方は帝国領。両者の大体中間くらいに位置するのがここ、北方連邦群だ。俺が暮らすハイデルは、ハイデンブルク公国の首都であり、商工業と学術研究の中心地となっている。


 政治体制は封建制だが、各都市は議会があり自治権を確保している。かなり進歩的。言語は共通語アルカニア語と各地域の方言が混在し、幸いにも母語教育のおかげで不自由なく喋れる。文字は現代語のみ。インターネットもあり、情報は早く伝わる。


 そして何より特徴的なのが“魔導”の存在だ。大気中に漂う微細エネルギー〈エーテル〉を媒体に物理法則に干渉する技術体系で、攻撃魔法から生活補助まで幅広く応用されている。才能の有無はあるものの、基礎訓練さえ受ければ誰でも小さな火種くらいは起こせる。問題は俺――幼少期に受けた適性検査で魔力量E判定だったことだ。


 代わりに伸びたのが書物知識と工作技能だった。公爵家の四男という半端な地位のおかげで、兄たちほど武芸を強要されることもなく、父の蔵書庫に入り浸る毎日。読み漁った古文書や論文から拾った断片知識を組み合わせ、独学で様々な装置を試作してきた。特に熱中したのが“エーテル回路設計”。魔法陣に相当する電子基板のようなもので、うまく組めば低魔力者でも高出力を引き出せる可能性がある――というのが俺の仮説だ。


 しかし貴族社会は保守的だ。10になった夏、非公式に開かれた技術披露会で新型の汲み上げポンプを見せたら、「卑しい錬金術など魔術師の嗜みではない」と嘲笑された。

 以来、研究は地下工房での密かな遊びになりつつある。


 ちなみに、今日は俺の誕生日なのだが、形式上の祝宴があるだけ。継承順位が低く政略結婚の駒にもならない俺への関心は薄く、兄たちは武勲談義で盛り上がり、両親は晩餐会準備に追われていた。


 午後の鐘が鳴るころ、侍女頭のマルタさんが迎えに来た。


「クルト様、御身支度を」


 鏡に映るのは癖のある黒髪に琥珀色の瞳、背の低い少年――見た目だけは典型的な放蕩貴族風だが、胸ポケットにはいつも小型工具セットが潜んでいる。


 ドレスシャツに袖を通しながら窓の外を眺めた。中庭の噴水では新米使用人たちが慌ただしく花籠を並べている。上空では郵便飛空船が汽笛を鳴らし、街の方角では祭日の屋台の呼び込みが風に乗って届く。平和で退屈な日常――ところが今日は少し違う。朝方届いた一通の封筒が胸を騒がせていた。


 差出人は王立高等学院。推薦入学合格通知だ。魔導科ではなく“工学科”。それはまさに俺のために設置されたような学科である。寮費全免、奨学金付き。ただし条件が一つ。

「三年間の成績維持」と「在学中の研究成果提出」。裏を返せば、研究内容如何によってはすべて無効、あとから借金取りのようになる可能性もあるということだ。


 こういうの基本的に貴族の家族は反対する。けれど今さら大人しく跡継ぎ養育課程に戻るつもりはない。前世で平凡な一生を終えた俺にとって、ここが本当のスタートラインなのだ。今日の夕食時に切り出す覚悟は固めた。


 廊下に出るタイミングを見計らいながら深呼吸した。扉の隙間から廊下の喧騒が流れ込んでくる。遠くで楽士たちがチューニングをしている。陽気なトランペットの音が高くなるたびに期待と不安が交互に押し寄せた。

 俺は小さく拳を握った。

 ――さて、第二幕開始だ。


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