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近未来の魔法世界に転生して最強ハーレムを作る  作者: ななお


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13/14

13話

 巨大スライムとの死闘を終えてから二時間。一行は湿地帯を迂回しながら次のチェックポイントを目指していた。


「もう少しで第3拠点よ!」


 フィリアが地図を広げながら声を上げる。一方のクルトは先程から周囲を警戒しつつ歩を進めている。

 そう疑念を感じた矢先だった。

 バシャァァンッ!!


 湿原に張り出していた杭の橋を踏み込んだ瞬間、水面が爆発した! 出現したのは魔獣ウォーターレイヴン3体。鋭い牙を剥き出して水中から次々と飛び出してくる!

 フィリアが結界魔法を展開しようと構えるが、その前にレイヴンの一体が水面をすべるように接近し爪で結界の起点を突き破る。フィリアは後方へと吹き飛ばされる!


「フィリア!」

「平気……ちょっとバランス崩しただけ!」


 クルトが前衛に立ち剣を構える。左右から二体が同時に襲いかかる。一体を弾くも二体目の噛みつきを左肩で受けた。制服越しに鋭い痛みが走る。血が滲むのを感じながらクルトは剣を振り抜く。レイヴンの嘴を切断しその勢いで沼へ叩きつけた!


 残る一体が仲間の屍を飛び越えてくる。ミアが咄嗟に背後から剣を突き刺したが浅い。レイヴンは振り向きざま彼女の肩口を抉ろうとした。

 クルトが踏み込む。泥濘に足を取られながらも必死に飛び込み、肩の怪我など厭わず剣を横薙ぎに振るった。ギャンッ!悲鳴と共に魔獣が落下する。


「やった……?」


 三体のウォーターレイヴンが痙攣しやがて動かなくなる。ミアは肩の傷を手で押さえながら辺りを見渡した。

 彼女はクルトの左手を見る。制服の袖は真紅に染まりつつあり、血が滴り落ちていた。


「治療をしないと!」

「平気平気……ちょっとカッコ悪いな」

「馬鹿、強がらない」

「ごめんなさい」


 その様子を、高台から眺めていた影が舌打ちした。


「もっと派手にやってもいいものを……」


 手元の通信端末を操作する。ツェラー家の私兵組織である。


「予定を変更する。第二標的エリアに追加の魔物を送れ。ただし奴らの位置が北東へ逸れたら即時解除だ」


 短い了解の信号が返ってきたことを確認すると男は身を翻す。目的はクルトの抹殺ではなく、演習での失格だ。怪我を負わせ時間を奪い、チェックポイントを通過不能に追い込むだけでいい。実習すら満足に達成できない惨めさを教え込むのだ。


(まずは順調に事が進んでいるな)


 男は足音を殺しながら樹海を後にした。


 一方クルトは簡易救急キットで応急処置を行っていた。


「ごめんなさい……私の詠唱が遅くて……」

「気にしなくていいよ」


 実際あのスピードではどうしようもなかっただろう。問題は頻繁に魔物が現れていることだ。単なる不幸と考えるには出来過ぎている。誰かが仕組んでいる可能性が高い。

そんな事を考えるうちにも体力は削られていく。


「一旦休息しましょうか」


 ミアの提案で日暮れを迎える前に小さな洞窟を見つけ中で休憩をとることになった。簡易キャンプの準備を始めるクルトの隣でフィリアが薬草を煎じ始める。


「本当に無理しないでね。傷が深かったらちゃんと治療しないと……」

「わかってる」

「本当に?」


 フィリアがクルトの顔を覗き込む。

 前かがみになったせいで、襟元から胸の谷間がチラリと見えて思わず目を逸らすクルト。

 こんな修羅場でも女の子は可愛らしく魅力的な仕草を魅せてくれるものなのかと思いつつ、意識しすぎないように努める。


「はい、お薬」


 ミアが差し出した薬湯を啜る。苦味と同時に体の芯に染みていく感覚があった。火照った体に涼しい夜風が吹く。


「ごめんなさい、私を助けたばかりに皆が……」


 エマが俯きながら謝罪する。彼女は自責の念に駆られているようだった。クルトは肩を叩いて微笑んだ。


「気にしないで。助けたのは俺たちの意思だから」

「でも……」

「それより明日以降の作戦を考えないと」


 フィリアが地図を広げ、周囲の地形を指差した。


「これ以上南を迂回すればタイムオーバーになっちゃう。北西ルートが一番早いはず」


 確かに一番近いが……北西ルートは過去に暴走魔物が出没した例がある危険地帯だ。それでも今は他に選択肢がない。


「決まりだね」


 一同は頷きあう。

 しかしクルトの心は晴れない。幸運ではなく作為的な災難が続いている。まだ気を抜くべきではないと直感が告げていた。



 夜半。

 洞窟の入口近くで焚き火が煌々と燃えている。交代で見張りについているメンバーだったが、寝袋に入ったクルトはなかなか眠れずにいた。時折聞こえる鳥の声や虫の羽音に敏感に反応してしまう。


(ツェラー家か……あるいは別の勢力か)


 可能性として両方を考えるべきだろう。ハインリッヒは兄に続いて何らかの工作を仕掛けているに違いない。そしてヘンドリッヒ本人はより巧妙に裏で糸を引いている気がする。

 そんな考え事をしていると、焚き火の方から声が聞こえた。


「起きてるの?」

「……ミアさん?」


 寝袋から顔を出すと、ミアが毛布を持って傍らにしゃがみこんでいた。月明かりに照らされた横顔は凛として美しい。


「寒かったらいけないと思って」

「ありがとう……大丈夫だよ」

「そう?」


 ミアは微笑むと、焚き火に木枝を足す。

 クルトは少し迷ってから問いかけた。


「ミアさんは……俺を庇ってくれる気? ツェラー家が相手だとしても」

「当然でしょう」


 迷いのない返答だった。


「でも……それが原因でミアさんが巻き込まれるのは……」

「私も自己責任でここまで来た。だからお互い様よ」


 クルトは口を開きかけ、何も言えずに閉じた。

 ミアは穏やかな表情で火を見つめている。


「ありがとう……」

「礼を言われるようなことではないわ。それより怪我の方はどう?」

「ほぼ塞がった」


 するとミアは小さく息をついて立ち上がる。寝袋に戻る前に一度だけ振り返った。


「おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい」


 クルトは瞼を閉じた。

 炎の揺らめきが赤い光を瞳に焼き付けながら、ようやく睡魔が訪れてくれた。


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