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『迷惑な大地』 ④計画

本日、06:00にもう1話。

1941年を創りました。


一部数値訂正しました。最大速力18ノットの船が18ノットで5000海里の航続距離はな~。14ノット4500海里に。

 ④計画は、③計画とは別口でシベリア油田と近海航路防衛(本土-ナホトカ間)を主眼とするものだった。よって、小型艦中心の整備計画で予算にも優しいとされた。この時、天龍・龍田と初期から中期の5500トン級軽巡洋艦が代替時期に来ておりその分も予算に計上される。軽巡代替は③計画でも検討されたが戦艦4隻と正規空母2隻が重く見送られていた。「駆逐艦も建造費は低いですよ」と(たばか)って大型駆逐艦1個水雷戦隊を整備する計画も出した。後に海軍は怒られる。

 主要整備艦艇は、日本海と列島線沿岸警備に使う水上機母艦2隻と補助艦各種20隻に軽巡洋艦6隻。

 ④計画立案時には、竣工時ロンドン海軍軍縮条約期限内であり排水量の制限がある。軽巡は利根と筑摩が建造中であり、残りの排水量と代替用軽巡の排水量が使われる。乙型駆逐艦は1番艦竣工を条約明けに設定して、排水量を無視している。

 海軍としては③計画で結構予算を出させたので、④計画は少し遠慮していた。


 ここで③計画の主力艦や駆逐艦設計と③計画以前から成立している艦艇設計の中心になれなかった関係者が目の色を変えて群がってきたのが、9000トン級水上機母艦と7000トン級軽巡洋艦と乙型駆逐艦だった。曰く「俺にやらせろ」と。


「意欲が有るのはいいが条件はきついぞ?」(艦政本部)

「やります。絶対にいい艦を造る自信があります」

「本当か?後で泣き言言うなよ」(艦政本部)

「そんなに厳しいのですか‥」

「③計画で金を使ったからな」(艦政本部)

「まさか、ご予算少々とか…」

「③計画で戦艦4隻と大型正規空母2隻だからな。まあそういうことだ(乙型以外はな)」(艦政本部)


 そうして自由に設計できないと知った連中は距離を置いた。(こいつら後で使ってもらえないぞ)と思われながら。

 厳しい条件なら余計にやりがいがあるではないかと意気軒昂な連中を中心に設計主務などの分配をした艦政本部だった。


 海軍は④計画艦として


 水上機母艦  2隻  9000トン級 水上偵察機20機搭載

 軽巡洋艦   5隻  7000トン級

 乙型駆逐艦  18隻 1個水雷戦隊16隻+予備艦2隻

 海防艦    12隻  択捉級

 駆潜艇    8隻

 掃海艇    8隻


 を立案。

 予算要求時には


 水上機母艦  2隻  9000トン級 水上偵察機20機搭載

 軽巡洋艦   4隻  8500トン級

 乙型駆逐艦  18隻 1個水雷戦隊16隻+予備艦2隻

 海防艦    12隻  択捉級

 駆潜艇    8隻

 掃海艇    8隻


 となり、国会を通過した時には 

 

 水上機母艦  2隻  9000トン級 水上偵察機20機搭載

 軽巡洋艦   4隻  8500トン級

 乙型駆逐艦  12隻 

 海防艦    12隻  択捉級

 駆潜艇    8隻

 掃海艇    8隻


 となった。




 9000トン級水上機母艦は日本海で活動する事が主眼とされ南洋など無視していいことになった。長い航続距離と高速力が必要ないわけではないが、5000海里程度は欲しいが武装と速力は条約の補助艦内に納める必要があり18ノットもあれば十分とされた。艦型が小型であり、無理に多用途性を求めないことも決められた。

 そして厳しい条件。安く。

 結果、商船形式を基本に細かい水密区画を増やし簡単に沈まないような船体とされた。装甲板は使われれていない。主要部には艦艇用船舶鋼板を重ねただけである。主要部は弾火薬庫と揮発油庫と機関区だけ。舵取り機室が含まれていない。速力も航続力も必要ないので機関は使い慣れた蒸気タービン機関一式で済ませた。


 吉野級水上機母艦

 建造予定は、吉野 浪速 の2隻である。

 基準排水量      9200トン

 機関出力       1万2000馬力

 速力         18ノット

 航続距離       4500海里(14ノット)

 高角砲        三年式8センチ高角砲 単装4基4門

 機銃         九六式25ミリ三連装機銃 4基

            仮称ラ式37ミリ機銃 単装4基

             (3.7センチFlak36/37)

 搭載機数       水上偵察機 常用15機 補用 5機 

 カタパルト      呉式2基

 クレーン       各種 4基

 電探         二一号 1基

 聴音機        九六式聴音機 1基


 仮称ラ式37ミリ機銃はラインメタル社製3.7センチFlak36/37をライセンス生産していた陸軍から購入した。試験搭載である。運用成績が良ければ本採用となる可能性もある。

 日本近海の荒波でも安定するように船体は太くなり、結果船内空間には余裕が出来、居住環境にも余裕が出来た。また安価であり後に⑤⑥計画でこの設計を基に軽空母として拡大改設計された飛鷹級が10隻建造される。吉野と浪速は小型低速すぎて空母への改装案も出ず、日本海の安全に寄与していた。

 後にラ式37ミリは残念ながらボ式40ミリ機銃に取って代わられた。十年式高角砲も降ろされ、ボ式40ミリ機銃が搭載される。

 



 7000トン級軽巡洋艦は、構想段階で従来のような水雷戦隊旗艦としてか新思考による多用途艦にするのか意見が分かれた。結果、多用途性と将来拡張可能な船体を設計するとなった。設計陣はこれを知らされて頭を抱えたという。さらに青葉級代替が務まるようなと言われ絶句した。



「7000トンに纏めるわけだが、意見を出せ」


 設計陣をとりまとめる少佐が集合した設計陣に問う。


「はっ、どのような兵装をするかで船体設計が決まると考えます」

「確かにな、他には」

「有りません。それが全てかと」

「馬鹿者。そんなことは聞いておらん。意見を出せというのだ」


 いろいろ意見は出たが、とにかく兵装が決まらないと無理だろうと決まりかけた。そこで設計主務の中佐が発言した。


「では私から。そもそもそんな多用途高性能艦が7000トンで出来るのかというのが疑問だ」

「確かにそうかもしれませんな」

「構想を練った段階で聞いて回っていると思うのだが、も一度、最低限どのくらいが欲しいのか関係部署に聞いて回ろうと思うのだ」

「フム。そうですな。では何日か聞いて回るとしますか。他の者も例外では無い。聞きまくれ。良いな」

「「「「はっ!」」」」


 水雷戦隊旗艦用途としては、最新駆逐艦を引き連れて突撃できる速力と最上級の主砲を出来れば4基と6インチ砲防御に連管2基と水偵2機搭載。と7000トンでは無理だろうと思われる要望が出た。

 航空戦隊からは、とにかく高角砲と機銃を。と当然のような要望が出る。

 第一艦隊の戦艦戦隊からは、対駆逐艦用として雷装は不要だが最上級の主砲を4基以上と6インチ砲防御と、これまた7000トンでは不可能な要望を出される。

 軍令部では「強力な艦が欲しい」とはっきりしない。要求しすぎて失敗したからな。左遷させられたらたまらんのだろう。

 海軍省では「予算をわかっているのだろうな」と言われる。 


 悩んだ設計陣は交渉に出た。「5隻を4隻に減らせば予算内で出来る」とし排水量は合計3万5000トンを4で割り8700トンと。

 概ね了解が得られ主要項目が以下の軽巡洋艦となった。


 阿賀野級

 水雷戦隊旗艦向け案

 基準排水量      8700トン

 機関出力       12万馬力

 速力         35ノット

 航続距離       7000海里(18ノット)

 主砲         三年式15.5センチ三連装 3基9門

 高角砲        八九式12.7センチ連装高角砲 4基8門

 機銃         九六式25ミリ三連装機銃 4基

 魚雷         九三式61センチ魚雷 五連装2基

             予備魚雷無し

 航空機        水上偵察機 1機

 カタパルト      1基   

 電探         二一号 1基

 対水上電探      三二号 2基

 射撃管制電探     四一号 1基 

 聴音機        九六式聴音機 1基


 第一艦隊としては水雷戦隊旗艦用でも十分となった。 


 同航空戦隊向け案

 基準排水量      8700トン

 機関出力       12万馬力

 速力         35ノット

 航続距離       7000海里(18ノット)

 主砲         三年式15.5センチ三連装 2基6門

 高角砲        八九式12.7センチ連装高角砲 6基12門

 機銃         九六式25ミリ三連装機銃 12基

 電探         二一号 1基

 対水上電探      三二号 2基

 射撃管制電探     四三号 4基 

 聴音機        九六式聴音機 1基 

                

 主砲が2基残っているが、防空力は高いと思われる。主砲も切り捨てればさらに高角砲が増やせそうだが。水上機設備と魚雷が無いのが潔い。四三号は高射装置との組み合わせ価格が高価で予算内に収まらず、竣工後機会を見て搭載となった。

 実際には、主砲を装備せず高角砲8基16門搭載とし、浮いた予算で四三号射撃管制電探と高射装置が4基搭載された艦が④計画で2隻と、⑥計画で2隻の合計4隻配備された。

 水雷戦隊旗艦向けはそのまま採用され④計画で2隻。⑤⑥計画で4隻の合計6隻が任務に就いた。

 使い勝手が良く、5500トン級代替として6隻が後の予算で建造。合計10隻も量産された。対米戦をにらんだ⑤計画と戦時急増計画である⑥計画で6隻も建造されたのは、5500トン級がさすがに古すぎて新しい戦場に対応出来なくなっていたため。




 乙型駆逐艦は航空機の能力向上による艦隊防空力不足の懸念から空母直衛艦として構想されたが、結局発射管装備で駆逐艦とされた。発射管が無ければさらに強力な防空力を持った艦になったと思われる。

 18隻が12隻に削られたのは大型高価な事がバレたためである。


 秋月級駆逐艦(乙型)       

 基準排水量       3000トン

 機関出力        5万8000馬力

 速力          34ノット

 航続距離        8000海里(18ノット)

 主砲          九八式10センチ高角砲 連装4基8門

 機銃          九六式25ミリ三連装機銃 8基

                同    単装機銃 6基

 魚雷          九三式61センチ魚雷発射管 五連装1基

             予備魚雷無し

 爆雷          投射器 K砲 6基

             投下軌条 2基

             爆雷搭載数60発

 電探          二一号 1基

 対水上電探       三二号 1基

 射撃管制電探      四三号 2基 

 聴音機         九六式聴音機 1基

 探信儀         九七式音波探信儀 1基

 同級艦         秋月 照月 涼月 初月 新月 若月

             以上6隻は昭和17年5月から配備が始まり

             昭和18年02月までに6隻が就役する。

             霜月 冬月 春月 宵月 夏月 満月 

             以上6隻は昭和18年8月までに竣工予定。

             ⑥計画艦

             花月 海月 雨月 淡月


 竣工が遅いのはロンドン海軍軍縮条約明けを狙ったのと画期的新機軸が採用された九九式高射装置の設計と製造に手間取ったために、建造開始が遅くなったせい。

 九九式高射装置は四三号射撃管制電探と九八式10センチ高角砲の組み合わせで、従来装置の数倍という命中率を持つはずである。

 高性能であるが高価で、後の⑥計画でも4隻しか建造されなかった。その頃には大型高価な駆逐艦よりも小型でいいから数を揃えることが要求されたからだ。その4隻は始めから水雷兵装は爆雷以外持たずボ式40ミリ機銃をハリネズミのように装備した。

 


 択捉級は占守級の量産性を上げた艦で、大きく変わったのは主砲が十年式12センチ高角砲になったことくらいである。北方警備重視の艦であることには変わりない。




************************

ラ式37ミリ機銃はラインメタル製3.7センチFlak36/37を陸軍でライセンス生産していた。

ボ式40ミリ機銃はボフォース40ミリ機関砲で、ラ式の運用成績から高角砲と25ミリ機銃の隙間を埋める新たな航空機中距離阻止用火器を探していた海軍がイギリス海軍を通して知ったものである。

陸海の意地の張り合いを避けるために商工省の関連法人がライセンスを購入しライセンス生産(陸海で委託生産)して、多くの海軍艦艇や要地に配備されることになる。

ソ連が無くシベリアと友好的関係を築いているので、満州に深入りせず大陸も大きな戦力を置いていない。のはず。

経済的にも予算が民間に回る分が多く景気はそれほど悪くない日本。のはず。

税収が伸びて大陸でドンパチやっていないから国家予算も結構な余裕があります。のはず。

前に書いてありますが、海軍軍縮条約での巡洋艦と駆逐艦の比率は史実よりもやや大きいです。

利根と筑摩は大演習の結果、20.3センチ砲連装では無く15.5センチ三連装砲塔4基で完成します。

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