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添い寝とは?

◼️裁判が終わったのは真夜中だった。海斗は国王が七つを大罪の為に作った宿の自室で眠りにつこうとしていた。何故なら疲れた、主に精神的にこれを払拭するために寝る。寝て回復するそれがいいと思った。すると扉がノックされた。

「あの団長」

◼️声の主はアリシアだった。扉越しに入っても良いかと聞かれ許可をすると、枕を持ち、寝間着姿のアリシアが入ってきた。

「どうした?アリシア、お前寝ないのか?」

「あの……その……ですね……」

「?」

「添い……寝」

◼️小声なのと、窓にあたる風の音で何を言ったのか海斗には聞こえなかった。

「悪い、なんて言った?すこし大きな声で言ってくれるか、次はちゃんと聞いてるから」

「あの……その……添い寝!私と添い寝してください!!」

◼️顔を赤くして、勇気をもって大きく出された声は、海斗を赤面させるには充分過ぎる効果があった。

「ちょ、ちょま、おま、お前なぁー、付き合ってもいない男女が一緒に寝るって意味わかっとんのか!」

「わっわかってます!!」

◼️この世界では四日一緒に寝たら、その関係を認め夫婦とすると言う日本ではないルールがある。それに一度寝屋を共にすることにもルールがあり、その者達が付き合ってる事を意味した。

「こっ、こっ、これは団長にする、命令です!!期間は一ヶ月です!!」

◼️その言葉に更に追い討ちをかけられ、攻撃されたかの様な状態になった海斗はベットの上で頭をかきむしる。確かにアリシアは団員としては自慢、女性として見るなら魅力的、それも超が付く程の容姿に体型だ。一緒に寝る事を嫌なのではなく、寧ろ嬉しい事になる。なるのだがそれは男としてならともかく、団長として団員に手を出すのは間違いないだとも思う。海斗は葛藤していた。それにもし他の団員に見られでもしたら、どうなるか特にシルフィーにでも見られた日には、自分の股間のアソコが切り落とされかねない。どうしたものかと悩んでいた。

「ダメ、ですか?団長……」 

◼️勇気を出して言ったからか、半泣きのアリシアを見てしまうと直ぐに判断した。

「わかった!わかったから泣くな!!」

「はい」

◼️やけくそになっていた感はある。海斗はアリシアに背中を向けてベットに横になった。少しして、一礼をしたアリシアがベットに入ってきた。するとフローナルな花の香りがした。そう思った矢先、何か柔らかい物が背中に当たったかと思うと、アリシアの腕が海斗の首をホールドする様な形になった。

「アリシア!これは添い寝じゃ」

「添い寝です!!」

◼️これは抱き枕に思えたがここは異世界、添い寝の原理も違うのか、一瞬でもそう思ってしまった自分がいて、我に返った。

「って、んなわけあるか!アリシア放れ…」

「これは添い寝の命令です!!!」

◼️この状況を受け止めるしか選択肢はなくなってしまった。アリシアが言うならこれは添い寝で命令、決まった事を覆す術がない。

「わかった。逃げないだからその……三日にまかりませんかね?」

「一ヶ月です!!絶対です!!!」

◼️アリシアも恥ずかしいのだろう、必死で更に声を大きくだして海斗の要求を突っぱねた。

「アリシア」

「嫌です!!」

「まだなんも言ってねぇーよ!」

「団長の事ですから、なんだかんだ言い訳するに決まってます!!」

「違う一つ確認なんだが、お前もこの世界の天使なら知ってるんだろ。俺と……その……一緒に寝る意味をだよ」

「知ってます、だからこの命令にしました」

「ならわかるだろ。天使属と人属が一緒になる意味も、何故残りの六種属が人属とは交わらなかったか、それは人属が短命で恋に落ちたとして、残されるのが他の種属である事もあって、人属と他の種属は交わりをたってる。辛い思いをする羽目になるぞ。お前はそれでいいのか?」

「私は、私は団長が好きなんです。団長としてではなく、海斗さんとして、だから……だから……」

◼️段々泣き声になっていくアリシアにこれ以上何か言うのを諦めた。理屈を付けて離れさせる作戦は失敗し、溜め息をついて何故か異世界なのに持っていた携帯を使って、後ろのアリシアに自分のステータスをオープンにして見えるようにした。

「アリシア、これ見てくれスキルの最初のとこ」

「スキル?」

◼️海斗に言われ最初のスキルを見ると、そこには不老不死と書かれている。

「これ、本当なんですか?団長」

「スキル通りならな、お前の覚悟はわかった。だから見せた。でも、他の団員には教えない様にいいな」

「はい、二人だけの秘密ですね。海斗さん」

「そうだ。後もう寝ろ、それと……だな……言いづらいんだが……逃げないから……もう少しホールドを甘くしてくれないか?その……いきなりだったもんで……あの……」

◼️海斗の言葉の意味を冷静になりつつあるアリシアは理解した。必死でやっていた為なんとも思ってなかったが、冷静になると自分の胸部は海斗の背中に当たり、普通大きさから半分位になっていて、どれだけ自分が必死で海斗の背中にしがみ付いてたのか。

「すっ、すいません」

「いや、お前が嫌じゃないなら、別に構わんが、その俺も男だから……こっちこそ、すまない」

◼️ホールドは弱くはなったもののまだ当たっているし、フローナルな香りも続いていた。

「おやすみなさい……海斗」

「お休み」

◼️寝息がたってきた頃合いで、完全に寝たと確信がとれ離れようとするも、抵抗は無駄だった。アリシアが魔法まで使って、この状況を作り出していたからだ。使った魔法は今の状況と同じく名はホールド、自信や物にもかけられる。位置を固定するシンプルな魔法だ。自分の腕にホールドの魔法をかけ、完全に固定した状態で眠りについている。腕にかけられた魔法を解こうものなら、逃げようとした事が確実にばれるから万策は尽きた。

「はぁーマジかよ。寝る……ってか寝れるかぁー!!」

◼️そのまま朝となり、次の日を迎えた。

「ふぁぁぁ~あっ、団長~おはようございまふ~」

「おはよう」

「ん?な、な、ななんで団長が私の部屋に居るんですか!」

◼️海斗は背中を強く押され、ベットから叩き出され床に落ちた。

「団長のエッチ!ケダモノ!」

「イッテー!お前!昨日俺にした命令忘れとんのか!!」

「へ?……私が……団長に……命令……あっ!……と言う事はですねぇ~ここは私の部屋ではなく~……団長のお部屋で、ベットに入り込んだのは私ですね?」

◼️半笑いのアリシアに少し冷たい目線を送る海斗。

「今思い出したってか?」

「アハハハー……すいません!!」

◼️初めてだ、心の底から怒りをおぼえ女を蹴り飛ばしたいと思ったのは、勿論思うだけに止めた。アリシアはベットから急いで出て、頭を何度も下げながら部屋を出ていった。

「はぁー、なんかデーモン相手より疲れた。これ、一ヶ月続くの?なんか泣きそう」

◼️不老不死ではあるが、精神、肉体強度、体力はそうはいかない。七つの大罪団長の弱点がこの時初めて生まれた。

◼️七つの大罪団長の部屋は私室、執務室の二つあり今日は朝から執務室で書類仕事をしていた。いつもなら昼頃に終わる仕事が終わらず、机に顔を付けて休んでいた。そこにシルフィーが新しい書類を重ねる。

「団長どうしたんですか?眠そうですが」

「眠そうじゃなく、眠いんだよ」

「なんでですか?」

◼️言えない、昨日の夜、命令だからといって来たアリシアと一緒に寝て、胸部が背中に当たり続け緊張か興奮かよくわからず、寝れなかったなんて口が裂けても言えない。

「でもなんで今日に限ってこんな多いの?」

「それはバカ団長が寝てた、三日間の仕事が貯まってるからですよ。私が処理できるのは出来るだけして上げてます、だから寝ないで仕事してください。バカ団長」

「シルフィーお前に言いたい事がある」

「なんですか?バカ団長」

◼️眠れなかった腹いせをシルフィーにぶつけようとした……それが間違いだった。これを海斗は直ぐに後悔した。

「バカ、バカ、言い過ぎなんだよ!この鬼エルフ!!」

「鬼エルフですか?」

◼️頭の中で何かがキレた。

「そうだよ!鬼!鬼畜!バーカ!!」

◼️シルフィーは無言で懐から魔力結晶を取り出し、笑顔を作った。奥には怒りがあったのを海斗は眠気さからか、気づきもせず罵声を浴びせた。

「団長」

「なんだよ!」

「これなーんだ?」

◼️発動させた魔力結晶は記録、つまり写真のように一部を記録したもので、そこに写っていたのは昨日の添い寝の記録であった。

「お、お、おま、お前!な、なんで」

◼️威勢の良かった海斗はすっかりなくなっていた。

「なんで私がこの記録を持ってるか?ですか?」

◼️それに海斗は首を縦にふりうなづく。

「それはですね。アリシアに添い寝を提案したのは私だからでしょうか?」

◼️それを聞き少し空気が重くなった。

「シルフィー」

「そんな怖い顔しないで下さいよぉー団長。断っておきますけど、私は添い寝を提案しただけで、まさかこんな絵が撮れるなんて思ってませんでした」

「何考えてるんだ?」

「何をって、何がですか?」

「百歩譲って、この記録は見過ごせたとしよう。でもな、何故アリシアを俺と添い寝するように提案したんだ?悪ふざけにしてはいきすぎてるぞ」

「団長は悪ふざけに思えるんですね」

「当たり前だ。こんな事いくら副団長とは言え、俺は容認出来そうにないぞ」

「私は決して悪ふざけで添い寝を提案した訳じゃないですよ」

「だったら、どういうつもりだ?」

「アリシアの気持ちを知ってたからですよ」

「アリシアの気持ち?」

「はい。にぶちんで女心に鈍感な団長にはわかってなかったみたいですからいいます。本来私の口から言うべきじゃないんですが、仕方がありません。アリシアが七つの大罪に入ろうと思ったのは、団長、いえ海斗貴方が好きだったからですよ」

「ど言う意味だ?何故アリシアが俺を?」

「やっぱり鈍いですね。そうです。海斗覚えてる?まだ七つの大罪が五人だった頃、天使属の奴隷事件があったの」

「五人だった頃の…天使属の奴隷事件……セフィーロで起こったやつか!!」

「覚えていたんですね。海斗の記憶領域じゃあ、覚えてないかと思いました」

「お前俺をなんだと、それはおいといて、それと今回のアリシアの何が関係があるんだよ」

「アリシアはその場にいました」

「本当なのか?」

「本当です。海斗の記憶領域じゃ、助けた天使属の顔や、ましてや名前すら覚えてないでしょ。貴方は重度のバトルジャンキーで、あの時も助けるより戦闘を楽しんでましたから、アリシアが何故奴隷になりかけたかはわかりません。ですが、それを海斗に救われた。その時から貴方を好きになった」

「アリシア……」

「アリシアが四大天使である父親に反対されてもここにいるのは、海斗がいるからです。だから当時の団員の採用試験を受けた。それは貴方が好きで貴方の側で居たい、尽くしたいと思ったからです。だから奥手なアリシアの心をくんだからこそ、アリシアに提案しました。勘違いしないで貰いたいのは、強要はしてません。添い寝したのは、アリシアが本当に心の底からそうしたい思ったからの行動です。それでも海斗、いえ団長私がアリシアに添い寝の提案をした事を悪ふざけにしますか?」

「……シルフィー……お前の言い分はわかった…今回の事は問題ににはしない約束する。それから、記録は団員に見せるなどの行為を禁止する。いいな」

「わかってます。最初から誰かに見せる気なんてありません。何かあった時に保険として記録した物ですので、団長ありがとうございます」

◼️深々と頭を下げるシルフィーを出ていっても良いと許可をだすと出る間際に言ってきた。

「団長、あの娘は本気です。四日たつ前に団長の本心を伝えて上げてください」

「それは副団長としてか?それとも女としてか?」

「両方だと思ってください」

「わかった。善処はしよう。書類も今日中に全部仕上げる」

「はい、失礼します。あっ後私達の命令は後日考えてありますので」

◼️また、机の上に頭をおいて考え出す、セフィーロの戦い、それはまだ七つの大罪として五人の団員の初仕事、天使属が奴隷にされてると言う情報があり、国王から任された。天使属の救出、及び関係ルートの崩壊、もしくは各所の殲滅と言う命令だった。その前に少し疑問が生まれるが、スルーしてしまい、この後二日たった夜にそれを後悔することになるのを、まだ、知るよしもなかった。

「私達のって言った?あいつ、と言うか問題はこっちだあの時……アリシアがいたってた?マジか、マジなんだろうな、シルフィーのあの顔で嘘をつくとは思えないしな、あぁーデーモンの問題もあるのに!!どうしたもんか!!」

◼️そんな最中アイスエイジが話しかけてきた。

【主よ。困っておるな、まさかこんな弱点があったとはこれは面白い】

「面白がるなっての」

【どうするのだ?主よ】

「どうするって……俺が答えを出すしかないだろうが」

「何の答えですか?」

「それはアリシアの」

「私のなんでしょうか?」

「ん?」

◼️何かおかしい、アイスエイジの声じゃない?なら誰だ?ゆっくり書類の山の奥を見ると、そこには問題の張本人のアリシアが立っていた。

「ア、アリシア!お前いつからいたんだ!いたっ」

◼️驚きで椅子にもたれ過ぎて床に頭をぶつける。

「大丈夫ですか!?」

「だっ大丈夫、それにしてもいつからいたんだ?」

「ノックはしたんですが、返事がなくて、私が聞いたのは、アイスエイジさんと話していた辺りでしょうか、私の名前が出てきのでつっこんじゃいました」

「そっ、そうか」

「団長私がどうかしました?」

「いや!なんでもない、なんでもないから気にするな」

「わかりました。これ追加の書類ですチェックお願いします」

「わかった。置いといてくれ」

「では、失礼します」

◼️アイスエイジが笑っていた。

「アイスエイジ、お前さては気づいてたな?」

【すまぬ主よ。問題の本人が来たので、どんな反応をするか気になってのう。まさかあれ程慌てるとは、大きな弱点じゃな】

「お前……」

◼️立ち上がり、アイスエイジを床に置いて足を振り上げる。

【主?】

「そう言えば実験してなかったな、お前の耐久性」

【まさか主よ。その足は】

「なーに気にするな、粉々になっても再生してやるから、ちょーと痛い思いをするかもだが」

【主!!主!!主よ。悪かった悪かったからその足を降ろすのは止め!!】

「問答無用、くたばりやがれ!!」

◼️イラ強化、身体強化もくわえた魔力をたっぷり含んだかかと落としをアイスエイジにお見舞いしてやろうとした時、いきなり扉が開かれ、今度入ってきたのはガークスだった。

「団長!!」

◼️海斗のかかと落としは寸前で止まり、入ってきたガークスに目をやった。

「どうした?ガークス姉さん」

「それが、国境付近にデーモンの大群が現れたとの伝令があった様です」

「方角は?」

「北の方だと」

「北……北か、わかった。ガークス姉さんは全員にこの情報を伝えろ。至急、訓練場に七つの大罪団員とその配下達も集まる様にな」

「全員、良いんですか?」

「構わない。今回は俺の命令で全員で向かう、七つの大罪団員は俺の指揮に入ってもらいます。それを伝えてください」

「了解」

◼️急いで直ぐに出ていった。

「命びろいしたな、アイスエイジ」

【主、あのー、一つ聞いても?】

「なんだ?」

【ガークスが北から攻めてきたと聞き、何か思い当たる節がある、と言う顔をしていた様に思うのですが、どうなんでしょう?】

「ない、と言ったら嘘になるな、お前も知ってると思うがこの国は位置的に立地が悪い。何故なら北、東、西、南の全方向から攻めやすいからだ」

【それで?】

「封印されていたから知らんのも無理はないが、北の方角はデーモンの頂点、魔人王が住んでた幻がある方角なんだよ」

【魔人王!それはデーモンの神じゃな!】

「昔に作られたから知ってるみたいだな。そうだ。その幻があるからなのか、北から攻めてくるデーモンの力は強い。この世界では、デーモン、悪魔、上位デーモン、魔将、四天王、魔人、魔人王ってなってるんだろ?」

【いかにも、その進化は殺した人や種属の人数により決まると言われている】

「その進化と方角的に最も厄介なのは、北なのさ、あそこはかつてこの国の何倍もある帝国って国があったらしいしな」

【主はその帝国の人や種属を殺した故に、強いと考えておるのじゃな】

「正解、その帝国を潰したデーモンがいて、何千、何百年、何億年生きてたら、例え魔人王の存在は幻でも、四天王になってないとは言え、それに近しいデーモンが居てもおかしくない。情報は少ないが魔人も北にいるって言われているしな。それ程、北のデーモンが強い、そこらの兵士じゃ、ただ死ぬだけだ。そんな犠牲はいらん。さて俺らも行くぞ、場合によってはお前を使う、心しとけ同属殺しになるぞ」

【構わぬ。それもそれで面白いやもと伝えたであろう】

「そうだったな、行くぞ」

【御意】

◼️仮面を付けて、国王に連絡してしてから海斗も訓練場に向かう。

◼️総勢七百人、七つの大罪団員に選ばれた精鋭が訓練場に集まっている。団長も含め、一人百人単位で配下がつく決まりがあった。

◼️最後に海斗が訓練場に入ると、今まで談笑していた空気が一気に冷たくなった。

『皆集まってくれて感謝する』

[はっ!!]

◼️配下のもの七千名、七つの大罪団員が剣を翳して答える。これがこの世界の敬礼みたいな動作である。

『今回は北の進行だと聞いた。知ってる者が大半だろうが、北のデーモンは強い。だからここに来る前、国王陛下には七つの大罪メンバー全員で当たると進言してある。何故なら国王陛下の配下の三下達が幾ら束になろうが、北のデーモンには勝てないと確信があったからだ。ここにいる全員は行く千ものデーモンを殺した強者である。意義がある者は剣でその意を示せ!!』

◼️全員剣を鞘にしまい。剣が上がる事はなかった。

『これにより、今回の進行は我らで向かう!直ちに出発する!急げ!!』

[了解]

◼️配下のものも、団員も準備を始めた。海斗に近づいてきたのは、海斗の配下の騎士団長だった。

「リヤン様、我らはどうしますか?」

『その前に、メルシル前回は俺のせいで迷惑をかけた。すまない、本来ならもっと早く謝罪するべきだったんだが、色々あって遅れたこと、重ねて謝罪する。本当にすまなかった』

◼️海斗は頭を下げる。

「そっ、そんな、頭を上げてください。リヤン様、私は気にしてません!事情は後から聞いたので」

『これは、お前達を預かる団長としての謝罪だ。受け取って欲しい』

「受け取る、受け取りますから、頭を上げてください!」

『感謝する』

「感謝など不要です。我らはリヤン様の忠実な配下であり、矛なのです。どうぞご命令下さい」

『わかった。今回はメルシルお前に前に出てもらい、前線の指揮権を渡し出陣してもらう』

「私にですか?」

『そうだ』

「リヤン様はどうされるのですか?」

『俺はお前達を見つつ援護する。安心しろ。死人は出さない』

「何か気になるのですね」

『何故そう思う?』

「私もリヤン様の配下に入って長いですからね。仮面越しで顔は見えずとも、その声から察する事は出来ます」

『お前は本当に自慢の配下だよ』

「ありがとうございます!命令承りまました。各員行くぞ!!」

[おぉぉーーー]

◼️一番最初に海斗の配下が出陣する、その事は団員に共有された。団員全員が驚きを隠せなかった。団員配下は馬で、団員含め団長は同じ馬車で一緒に向かう。馬車の定位は、海斗が真ん中で右はシルフィー、左はアリシア、対面する形でガルル、リュウジ、サイゼル、ガークスとなっている。

◼️馬車に乗って間もなくガルルが海斗に顔を近づけてきた。

「団長今回なんかあるんだろ?」

『なんかとは?』

「惚けるなって、団長がメルシルを動かすなんて滅多にない。それは俺らが良くわかってる」

『お前にはつくづく呆れるわガルル、お前は普段バカだが、戦闘の勘においては俺以上、お前とどう思考かと思うと泣けてくるわ、俺』

「褒めるなって照れクセェー」

『褒めとらんわ!』

◼️海斗は時々ガルルが本当のバカだと思う。何故なら戦闘においての勘、戦闘力も人狼属の中では天才、でも頭の方がそれに伴ってない、一種の大者である。

「で、団長どうなんだ?」

『確証はないが、何かしら起こるかもな』

「やっぱりな、何故そう思ったんだ?」

『デーモン達はお前と違いバカな集まりじゃない。あの進行から一週間もたたずに、今度は北からの進行となれば、それを疑わないでどうする。だから俺自慢のメルシルを動かした。これで満足か?ガルル』

「あぁ、何かある感心がついた。満足だ」

◼️顔は海斗から離れ、笑顔で席に戻る。見た感じ速く着いてほしそうな顔だ。それを聞いて不安になったのか、今度はアリシアが聞いてきた。

「団長は魔将が動くと思ってるんですか?」

『まだ、わからん。今言えるのは、魔将なら俺らが、上位デーモンなら各騎士団長なら余裕だ。だからメルシルに前線を任せた。アイツは俺の右腕として、上位デーモンの三体までなら楽勝だからな。それ以上となるときついかもしれん。でも万が一があるなら、俺が、俺達が動くいいなお前ら』

◼️団員の全員が了承する。

◼️早馬で出撃する事、約五時間夕暮れ時に北の国境付近に着いて、高台からデーモン達が群れをなしてるのが見えた。

『シルフィーどうだ?』

「結構いますねぇー、千は越えるかも。でも雑魚ばかりで上位デーモンは確認できませんね」

『予感的中ってか』

「どういう意味です?団長?」

『少し待て、アイスエイジ剣になれ』

【承知】

◼️アイスエイジを剣に戻し、ある命令を思念で伝え感知魔法でデーモンの一団を調べさせた。

『やっぱりか』 

「あのー団長?何がでしょうか、私達にわかるよう言って貰えません?」

『あの中に、バーニングを持ったやつがいる』

◼️七つの大罪に緊張感が走り、作戦の変更を余儀なくされた。

『作戦変更だ。各自、騎士団長各には、この国境の守りを徹底するように命令しろ。前線には七つの大罪団員だけで向かう』

「ですが団長聞いた話でござるが、バーニングを持ってるのは上位デーモンではなかったでござるか?あの中には上位デーモンはいないと、シルフィーが言っておりました」

『リュウジ、それは当然の疑問だな。いいか、シルフィーが感知したなら、上位デーモンはあの中にはいない』 

「だったら」

『ただ例外を覗いてだがな』

「例外でござるか?」

『聞いてるだろ。アイスエイジとバーニングは元々一つであり、あるヤツの所有物だったと』

「まさか、あの中には!!」

『そうだ。数を集め、上手いこと隠してるみたいだが、アイスエイジはバーニングを、バーニングはアイスエイジを感知できる。それに引っ掛かった。なら、出てくるやつが何者かお前ならわかるだろ。そうなると、シルフィーの感知でも引っ掛かる事もない』

「四天王でござるな」

『そうだ。今回俺が先頭にたつ、お前らは雑魚を片付けろ』

「団長!危険です!!私は反対です」

◼️進言したのはアリシアだった。

『アリシア、確かに魔将クラスなら、お前らでもなんとかなるだろ。でも四天王となれば話は変わってくる。未だかつて、四天王が殺された事ない。それ程に、古いデーモンだからだ』

「だからこそです!団長が一人で向かわれるなど、私は」

「団長、アリシアの意見に私も賛同します」 

『シルフィーお前までいいか』

「わかってます。ですから、団長一人でなく七つの大罪全員で討ち取りましょう。私達なら」

『却下だ』

「団長!!」

『冷静になれ、シルフィー、中に紛れているのは四天王の一人だぞ。全員で討ち取ると言ったが、それが出来なかったら?俺でも、四天王相手となると、お前らに意識を割きつつぶつかるのはリスクが大きすぎる。下手したら、団員が死ぬ。幾ら俺でも守りきれるかもわからん。そうなったらお前は責任を取れるのか?』

「それは…私達は足手まといと言う意味ですか?」

『お前らの実力、実績、戦闘力、個々のスキルに関しては俺も団長として認めてる。いいたかないが、今回の場合なら、お前の言う通り俺の足手まといだ』

「そう…ですか……アリシア、今回は団長に任せよう」

◼️下を向き、両手を強く握り締め悔しい顔を隠す。

「ちょっとシルフィー!団長を止めてよ。皆も」

「仕方ないぜ、シルフィー」

「ガルルなんで」

「団長の言ってるのは正しいからだよ」

「拙者もそう思うでござる」

「リュウジまで、ガークスさんと、サイゼルさんはどう思います?」

「私も団長が正しいと思う」

「ごめんね。シルフィー私も同意見」

「そんな二人まで……シルフィー!」

「アリシア、確かに団長はバカで、重度のバトルジャンキー、女心はわらないし、恋愛とかに関してはにぶちんで話にすらならないけど、団長が戦場や戦闘に関する事で、失敗したのを貴方は見たことある?」

「ないけど」

『安心しろ。俺は必ず戻る、七つの大罪団長リヤンとして』

「絶対ですよ。後アリシアも知ってるでしょ、団長は一度決めたら曲がらない性格だって、いい女になりたいなら、男が決めた事を黙って見送るのも必要よ」

「…わかった。シルフィーがそこまで言うなら、団長絶対に戻ってきて下さいね」

『わかってる』

◼️耳元で海斗が他の団員に聞こえない様に「お前の気持ちにも答えなきゃならんしな」と耳打ちしてきて、アリシアの顔が紅くなったのは当然の反応だった。四人は首を傾げていたが、シルフィーだけは何故か笑っていた。ひょっとしたらエルフ属は耳が良いのも特徴なので、聞こえてしまっていたのかもしれない。

『では改めて命令をする。七つの大罪各員は雑魚の対処を行け!』

◼️全員が行った後、海斗は残っていた。

『アイスエイジ、お前のお陰でバーニングがあるのが確認できた。もっと正確な位置はわからないか?』

【うーん。普通なら出来ないのじゃが、主ならできるやもと言う方法はあるにはあるのじゃが、魔力の消費が激しいぞ】

『どれくらいになる?』

【確実に半分にはなる。しかし、それはあくまで我を最初に持った主ならの話じゃ。今の感知は主体は我じゃが、主はその範囲広げただけ、我も正確に主の魔力量を把握しておらんから、どれくらい減るかはわからん】

『それは、俺があれからお前に魔力を流してないからからわからないのか?』

【そうじゃ】

◼️理屈に納得した海斗はアイスエイジに魔力を流してから再度聞き直した。

『どうだ?わかったか?』

【これは驚いた!!我は良い主に巡り会えたようじゃ!】

『その意味は?』

【安心しろ、主よ。これなら、我の知る感知をしても半分どころか、例えるなら一万から一減る程度にしか感じんだろうよ】

『それは戦闘には問題なく。その感知は出来るっ受け取っていいのか?』

【その通り!主よ。これから我が主に魔力を流す、それを目の辺りで止めるよう魔力を使うのじゃ。さすれば感知方法はおのずとわかる】

『わかった』

【ではやるぞ】

◼️言う通りに流れてきた魔力を目の辺りで、止めるようにすると景色は黒く変わり、アイスエイジから一本の白い線がデーモン達の方向へ伸びているのがわかった。

『この線は?』

【見えたか、主よ。説明は省くがその線の先にバーニングはおる。我とあやつは元々一本じゃだったからのう、線の様な物が繋がっておるのじゃ。本来なら見えぬが、見えるようにした】

『なるほど、この線を辿れと、でもこれなら長距離でも可能なんじゃね?』

【それは無理じゃ、この線はあくまでお互いが感知できる範囲でおり確実にいる時しか使えぬ。我にそれ程の魔力はないからのう】

『限定条件下での、確実感知か面白いな、行く前の最後の質問、擬装の可能性はあるか?』

【ない、これは元々一本の我らしかこの線は繋がってはいない。もし偽物だとしたら線は繋がっては見えないじゃろう】

『よーく、わかった。じゃ俺もソロソロ行きますか』

◼️身体強化、肉体効果、疲労回復、腕力強化、脚力強化など自分が知り得る。強化魔法を全部使用して、見える線を辿って一番最後に高台から飛び降り走り出した。

















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