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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

天罰ってあると思いますか?

作者: 瀬崎遊

久しぶりに私らしい話が書けた気が・・・します。

私らしい = 嫌な話 です。


11月17日 13時修正を入れました。

 母が亡くなった。

 悲しみに打ち(ひし)がれながらも父と一緒にこれからの日々を暮らしていくのだと思っていた。


 父と母は大恋愛の末、結婚してすぐに私が生まれた。

 それから数年は仲のいい夫婦だったと記憶している。

 次第に喧嘩が増え、その内容は次の子供ができないことだったり、母の実家がお金をせびりに来ることだったり、私の教育のこと等その時々、多種多様だった。


 母が亡くなってたった1ヶ月で父が再婚を口にした。

 相手は子爵家の三女だという。父とたいして年は変わらないらしく、子供が2人いるらしいが結婚歴はないらしい。


 再婚を口にするのも、せめて1年の間があれば私も受け入れることができたかもしれない。けれどたったの1ヶ月では父の再婚を受け入れることはできなかった。


 その時、私は15歳の半ばになっていたこともあって、私が18歳になったら結婚する予定だった話を早めることにした。私が16歳になったらすぐに結婚することに婚約者と決めた。

 母が亡くなって1年と1日目。その日に私と婚約者は結婚することが決まった。




 私がどれほど父の再婚に反対しても、母が亡くなって2ヶ月も経たずに再婚した。

 私より5歳年下の男の子と7歳年下の女の子が義母の連れ子として私の家に入り込んできた。


 義母と義理の弟妹と挨拶はしたものの、義母の態度はどこか私を苛つかせるものだった。

 父がその場ですぐに義母の態度を(とが)めたのでそれ以降、義母は私と関わらないことに決めたようだった。

 父は満面の笑顔で3人を迎え義理の関係のはずの弟妹を、幼い頃の私より可愛がっているように感じた。


 父が義理の弟妹を可愛がるその姿を見て私の卑屈な心がそう見させているのか、事実なのか、弟妹は父に似ているような気がした。



 今考えれば私が婚約者と結婚するのもおかしな話だった。

 婚約者のカルバンは伯爵家の嫡男。私が嫁ぐと我が伯爵家の跡継ぎはどうなるのか?という話だ。


 私が子供の頃からの婚約だったし、跡継ぎをどうするか?なんて話が一度も出たことがなかったので気にもしたことがなかった。

 母は父が浮気をしていて、外に子供を作っていた事を知っていたのではないかと思い至ってしまった。

 私はその考えから離れることができなくなってしまった。


 母が亡くなってすぐの頃、父が母の遺品を捨てようとした。

 私は慌てて母の遺品をすべて私の部屋へと持ち込んだ。

 暫くはその遺品の中に母のメモ書きや日記のような物がないか探し回った。


 残念なことに母は日記を書く習慣がなかったのか、既に父に捨てられてしまったのか、そういった物は見つけられなかった。


 父に会いに執務室へ行き、弟妹は義理の関係ではなく異母弟妹ではないのかと父を問い詰めた。

 それが私の結婚式の1週間前のことだった。


 父は最初は認めなかったが、何度も問い詰めると我が家に乗り込んできた弟妹が父の実の子だと白状した。


 父は母が生きているときから浮気していたのだと知って、怒りのあまり目の前が真っ赤に染まったような気がした。


「お父様はお母様だけでなく私をも裏切っていたのですね?!」

 父は目を()らすだけで答えは異母弟をこの家の跡取りにすると私に告げた。


 私は許せなかった。

 私が跡を継ぎたかった訳ではない。こんな家、どうなろうと知ったことではない。

 父が母と私を裏切っていたことが許せなかった。


 異母弟は無邪気に誕生日プレゼントとして父に貰った犬と庭で遊んでいる。

 そんな弟を見て憎らしくて(うと)ましくて仕方なかった。

 周りを見回しても義母の姿はなく父の姿もなかった。


 弟の面倒を見ている侍女に「弟とおやつを一緒に食べるから準備をしてちょうだい」と用事を言いつけて、今はもう枯れてしまった古い井戸へと弟を(いざな)った。


 弟は面白いように私の後をついてきて「ここは昔使っていた井戸なのよ」と蓋を取ると、弟は物珍しそうに井戸の中を覗き込んだ。


 ほんの少しの力だった。本当にほんの少しの力。

 弟は面白いように古くて枯れた深い井戸の中に落ちた。

 ふふっ。子供は頭が重いから、頭から落ちて首の骨が折れたようだった。

 ゴキッと音がして泣き声も、うめき声も上げなかった。


 ちょっとくらい苦しんでほしかったのに、残念。本当に残念だわ。


 私は急いでトイレに行って、侍女が戻ってきているのを確かめてから、侍女がお茶の用意をした席に着いて、何食わぬ顔をして現れるはずのない弟がお茶の席に座るのを待った。

 侍女は異母弟の名を呼び、現れないのを不審に思って真剣に探しはじめた。

 犬の鳴き声で弟が古くて深い井戸に落ちたことに気がついた。



 父と義母の(なげ)きは聞いていてとても心地の良いものだった。

 うっとりとその声、姿を眺めて涙が出るほど可笑しかった。

 そして異母妹をどうやって異母弟と同じところへ行かせればいいか、頭を悩ませた。


 婚約者に異母弟が亡くなった事を伝えると慌てて我が家にやってきてくれた。

「結婚式は2ヶ月ほどずらさなくてはならなくなってしまったわ」と父の前で婚約者に伝えた。

 婚約者は「せめて1年の間を空けたほうがいいのではないか」と言ってくれた。

「父は母が亡くなって2ヶ月経たずに結婚したので、それに合わせればいいと思います。ですよね?お父様?」


 その時の父の顔は見ものだった。

 ああ。本当に心地いい。父が再婚を口にした時の私の気持ちが解ったかしら?


 父は異母弟の葬儀を大きなものにしたかったらしいが、葬儀に来た人はごく少数だった。

 建前上、父と血は繋がっていないことになっていたため、異母弟は軽く扱われたのだ。

 そのごく少数の人たちも「前の奥様が亡くなってたった2ヶ月で結婚なんかするからバチが当たったのではないかしら?」と噂した。

 もっと言ってやってと心の中で称賛しながら、私は悲しい顔で葬儀を乗り切った。


 義母は葬儀の場では取り乱さなかったが、家に帰ると髪を振り乱して泣いて、父に(わめ)いていた。

 父は必死で義母を(なだ)めていたけれど義母は気を失うまで取り乱し続けた。

 ああ。なんて楽しいんだろう?!


 そして異母妹はそんな両親の姿を恐れたのか、1人部屋に閉じこもるようになってしまった。

 私はおやつを準備して時折妹の部屋を訪れた。

 初めは部屋に招き入れてくれなかったけれど、毎日繰り返しているうちに部屋に入れてくれるようになった。


 異母妹は完全に私に心を許すようになって、異母妹の部屋で絵本をよく読んでやった。

 そして『月と星の物語』という絵本を何度も読んでやった。

 たまに夜に訪ね、窓を開けて「あれがお月様、あれがお星様」と指さして読み聞かせてやった。


 またほんの少しの力だった。

 今夜も『月と星の物語』を読んでやって、窓を開ける。

「あれがお月様。この間とは違う形をしているでしょう?」と話しかけると「本当ね。お月様が痩せていってる」とそれは嬉しそうに答えた。


 私を見て笑うので本当に可愛い子だと思いながら、異母弟と同じように背を少し押してやった。

 ドンッという音とともに妹は地面に落ちた。

 可哀想に異母妹はすぐには死ねなかったようで、小さなうめき声を上げていた。


 異母妹の苦しんでいるうめき声をいつまでも聞いていたかったけれど、私が異母妹の部屋にいることに気が付かれては面白くないので、私は窓辺に『月と星の物語』を開いて置いて、異母妹が夜空を眺めて勝手に落ちたように細工した。

 そっと異母妹の部屋から抜け出し、素敵な夢を見て翌朝、誰かの悲鳴で私は目を覚ました。




 はぁ〜・・・。悩みは尽きない。

 父はどうすればいいだろう?

 体格の良い父は異母弟妹たちのようにはいかないことは解っている。

 けれど私が父を殺したと思われるのは困る。


 父と義母に不審がられるのは望むところなのだけれど、他の人に私が殺したと確証を持たれるのは困る。

 私はのそのそとガウンを羽織り、部屋から顔を出す。


 残念なことに誰も居ない。

 外からは義母と父が半狂乱になっている声が聞こえる。

 不安そうな顔をしてガウン姿のまま階下へと居りていき、そこに居た侍女に何があったのか尋ねる。


 侍女から異母妹が死んでいることを告げられ「嘘でしょう?!異母妹はどこに?!」と声を上げて侍女に連れて行ってもらう。


 義母が異母妹を抱きしめているのを見て「お父様!何があったんですか?!」と声を掛けて、義母が抱く異母妹に触れてその体に体温がないことが嬉しくて、涙がこぼれた。


 心の中でお母様、見てくれていますか?と声を掛ける。

 母が喜ぶのか悲しむのかは解らないけれど、私は私がしたことに満足していた。

 そして父と義母にだけ聞こえる声でポツリと「困ったわ。また結婚式が伸びてしまうわ」と溜息とともに漏らした。


 そして妹の葬式の最中、義母が流産した。

 また子供を作っていたなんてと腹を立てたが、流産してくれた上に二度と子供を作れない体になったと聞いて本当に嬉しかった。


 

 父が妹の葬式から10日ほど経ったある日、私と婚約者を呼び出した。

 父が言うには伯爵家の跡継ぎが居なくなってしまったので私に「この家の跡を継がせなければならなくなった」ということだった。


 私と婚約者は「さすがにそれは・・・」と拒絶したけれど、父は譲らなかった。

 話は平行線のまま終わった。

 私と婚約者とその父の三人だけで、妹の葬式から2ヶ月経ったら入籍だけしてしまおうと決めた。

 異母弟が死ぬ前にすべての書類に父のサインを貰っていたので、入籍することには困らなかった。



 父と二人になったとき、私は伝えた。

「お父様がまた外で子供を作ってくればいいのではないですか?母にしたように。裏切りはお得意でしょう?」

 父は目を見開いて怒りに震え、数瞬してから手近にあったペーパーウェイトを私に向けて投げつけた。


 少し体をずらしてペーパーウェイトを避け、私は小首を傾げる。

「私、なにかおかしいことを言いましたか?お父様はそうやってきたのでしょうに。当初の予定通り、必要のない私は嫁ぎますね」

 ニッコリと笑顔を見せる。


 父は怒り狂って(わめ)いていたが、急に押し黙ってそのまま横に倒れていった。

 執事が慌てて父に声を掛けたが父は「うぅ・・・」と呻くだけで言葉は発せないようだった。



 執事が医者を呼び、診察をしてもらった結果、卒中と診断された。

 倒れてすぐは意識があったものの、今は意識がなく滾々(こんこん)と眠りについていた。


 私は部屋に戻ると自然と声が漏れた。

「はぁ・・・ぁ・・・残念。お父様には何もしていないのに勝手に再起不能になってしまったわ。はぁ〜・・・本当に残念。この手で制裁を下せないなんて・・・お父様の病気を恨むわ」



 異母妹が亡くなって2ヶ月後、私と婚約者は入籍した。

 夫の(ちち)が倒れた父の代わりに領地経営をしてくれている。


 私が二人目の男の子を生んだ後、父が亡くなった。意識は一度も戻らなかった。

 一度でも戻っていたら異母弟妹を殺したのは私だと告げることができたのに、伝えることが出来ないまま父は()ってしまった。



 義母は父が亡くなって伯爵家に居づらくなったのか、四十九日が明けると籍を抜いて、異母弟の犬と一緒に屋敷から出ていった。


 義父が「下の子に嫁の生家の跡を継がせる」と言って張り切って領地経営をしてくれている。

 そして私は3人目の子を妊娠している。

 男の子が二人続いたので次の子は女の子が欲しいと思っている。けれどこればかりは生まれてみないことには解らないわね。



 今のところ、異母弟妹を殺した天罰は当たっていない。

 私はとても幸せだ。夫は優しくて浮気の気配は今のところない。

 子どもたちに不幸なことが起こらないように侍女に目を離さないように言い聞かせている。


 ただ本当に残念なことは異母弟妹を私が殺したことを父と義母が知らないままなことだ。

 父には伝えられなかったので、義母には是非とも伝えたくて、今左手で文字を書けるように必死で練習している。

 義母にはどんな文面で異母弟妹が殺された様子を伝えるべきか思案中である。

 微に入り(さい)穿(うが)つように知らせるのがいいかなと思っている。






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― 新着の感想 ―
主人公にしっぺ返しが来るのではないかとハラハラしました。 弟妹に罪は無いと言えばそうなのですが主人公を修羅に変えたのは父なのですからこれで良いと思います。 父に満足な復讐が出来なかったのが残念ですよね…
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