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碧の扉  作者: 藤魔 朔
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3章

時は少し遡り、夕方の東京の方衛大学内では、茉奈と将、そして将が連絡して駆けつけてくれた将の友達の三人が誰もいない小さな空き教室で話している。その空き教室は大学の中でも一番古い建物の一番端にある教室で、今となっては誰も利用することがない教室だった。学食での茉奈の要望に、将がすぐ例の友達に連絡をつけ、夕方にその教室で落ち合うことになったのだ。

「あたし伊原茉奈って言います。よろしくね。」

「うん。僕は相澤和人あいざわかずと。将とは高校からの友達なんだ。ってもう話してるんだっけ?」

和人は将を見て話す。見た目はオタクっぽいぽっちゃり系で、身長も低い方だった。ロボットサークルという茉奈は聞いたことがないサークルに所属しているらしい。

「うん、学食で話している時にね。それで早速本題に入りたいんだが、もう一度僕たちに説明してくれないか?その大学の駐車場で見たってやつのこと。」

将が和人に向かって話す。

「分かった。僕この大学には車で通学してるんだけど、ついこの前ロボットサークルが思いのほか長引いちゃって気づいたら夜だったんだ。だから慌てて帰る準備して自分の車が停まってある駐車場に向かったら、その駐車場で学長の姿が見えたんだ。今あの人悪い噂たってるからあまり関わりたくないと思ってずっと建物の陰に隠れてたんだけど・・・」

それから大学生が学長と老婆に光ってる物を使って次元の裂け目の中に引きずり込まれた光景を見たことを二人に話す。

「じゃあもしかしたら、その裂け目みたいなのに引きずり込まれたのが隆二ってことじゃない!?」

茉奈が語句を強めて和人に聞く

「僕は隆二って人が分からないけど、その人が失踪したってなれば、間違いないと思う。」

和人は断言した。

「やっぱりか。僕もあの学長は何か隠してるとは思ってたんだ。この前の58人が失踪した時の記者会見でも、ずっと白を切るようなことしか言わなかったし。」

将は暗雲が晴れた様子だった。

「でも犯人が分かったところで、これからどうするんだ?ていうか僕はあまりこの事件に関わりたくないんだけど・・」

和人が不安げな様子で二人に話す

「うん。それは大丈夫。それが聞けただけでも十分だから。ありがとう。」

茉奈が言った。しかし将がすかさず聞く。

「茉奈ちゃん一体何する気?」

将も茉奈に対して不安な様子を見せる。

「あたしのお父さん警察だから。警察に頼ればなんとかなるかもしれない。」

と茉奈は自信満々に話すが、それを聞いていた二人は呆れた顔をしている。

「あのねえ。警察にそれを言って信じてくれると思う?隆二君が次元の裂け目みたいなのに吸い込まれて、忽然と姿を消したなんて。今回の事件はまったく警察は当てにできないよ。」

将がきっぱりと否定した。

「じゃあどうすればいいのよ?」

茉奈の口調は強い。そんな茉奈を見て将が

「はあ~仕方ない。ここは僕たちも協力するから。」

「たちぃ~!?僕も!?」

和人もひどく驚いたようにそう話す。しかし将は

「和人って機械系では右に出る者はいないでしょ?その力を借りたいんだ。」

和人は将の言う通り、パソコンをはじめ、機械をいじるのが大好きな機械オタクなのだ。

「で、でも・・僕は・・」

和人はやはり気が進まない。そこに茉奈が

「お願い和人君!隆二を救ってほしいの。あたし機械関係は疎くて。」

茉奈が手を合わせ、頼み込むように和人にお願いをする。

「うぅ~~・・」

しばし牛の鳴き声のような声を発し

「分かったよ。それで何をすればいいの?」

和人は渋々協力してくれることになった。茉奈はその横で喜びの表情を浮かべる。

「そう言ってくれると思ってたよ。さすが親友。和人はその日の駐車場の防犯カメラの映像をハッキングして、まずは当の本人たちがちゃんと映っているかを確認してほしいんだ。」

将の言葉を聞いて和人は

「ちょっと待って!?ハッキングって・・それ犯罪・・」

「もう背に腹は代えられないよ。謎の失踪事件の解明を行うんだ。それぐらいの覚悟はしてもらわないとね。」

将はウィンクしながら話す。

「それで仮にちゃんと映ってた場合はそれからどうするの?」

茉奈が将に聞く。

「もし映っていたら、それを一枚のプリントにしてほしいんだ。その画像を使いたい。」

将が和人に話しているが、和人は話に乗るんじゃなかったと後悔している。

「だいたい将がやりたいことは想像できるよ。やってはみるけど、無茶はしないでくれよ。」

和人が将に頼み込む。

「大丈夫だよ。ちょっと僕の知人に頼るだけだから。」

将は笑みを浮かべながら話す。

その二人の会話を茉奈は理解できないままだった。


その頃警視庁では隆二が失踪した件で、捜索願を出した明美が事情聴取のため、宗次と加賀美という宗次の部下の二人で当時の状況を聞いている。

「その日は隆二さんは家に帰ってこられなかったんですか?」

加賀美が聞く。

「はい。いつも夜の22時までには帰る子だったのに、その日だけは。」

明美の声はかなり低かった。

「隆二さんも大学生ですから、どこか友人と出かけるようなことがあったりは?」

今度は宗次が明美に聞く。

「その可能性もありますが、その場合は一言携帯に連絡入れるはずです。だって、友達と飲みに行って帰りが遅くなることもたまにありましたが、その時は必ず一報を入れるような子ですから。」

明美は終始下を向いていた。

「なるほど、となればやはりご在籍されている方衛大学にて何かあったと推測するのが妥当でしょう。ありがとうございました。あとは我々にお任せいただければと。」

宗次がそう締めくくる。二人は明美を駐車場まで見送り家に帰らせる。

明美が運転する車の姿が見えなくなった後、加賀美が宗次に話しかける

「それで、何か分かったんですか?すごい自信あるように見えますが。」

「いや、正直憶測の域でしかない。一度大学に向かうぞ。」

宗次が話す。

「え?今からですか!?もう遅いですよ。荒木氏がいる保証もないのに。」

加賀美が驚くように言った。

「誰があいつに会うために大学に行くと言った?目的は別だ。」

そう言って二人は準備をし、車で方衛大学に向かう。

大学に着いた頃はすっかり夜で、宗次は腕時計を確認すると20時半だった。大学の駐車場に車を停め、まだ明かりが点いている建物があったので二人はそこに向かう。その中に入ると、受付の女性に宗次が話しかける。

「先ほど連絡を入れた警視庁の伊原です。総務課の方にお会いしたいのですが。」

受付の女性に話すと、その女性は内線電話でどこかと連絡を取っている。数秒待った後、奥の部屋から一人の女性が顔を見せる。その女性の案内で二人は大学の防犯カメラの映像を確認できる部屋へと案内された。日時を指定し、あらゆる防犯カメラの中から、一つだけ異様な光景を映し出しているカメラの映像を見つける。それは駐車場のカメラだ。一人の男性と顔がはっきりと見えない年老いた女性らしき人、そして特殊な力で停止していた車が宙を浮き、移動する光景、そしてそこから隆二と思われる一人の大学生が尻もちをついている姿が映しだされていた。そして、男性の胸ポケットから光を発している物を取り出し、次元の裂け目が生成され、その大学生が裂け目に吸い込まれていくところも、全部カメラが捉えていた。

「これは!?」

加賀美が驚愕しながら話す。もちろん宗次も、その非現実的な光景に開いた口が塞がらない。

「これはなんて説明したらいいんだ?なんなんだこれは!」

宗次は苛立ちの様子を見せる。しかし加賀美も言葉が出ない。

「とりあえずこの映像は持ち帰らせてもらおう。なんて罪状になるかはさておき、この映像が決定的な証拠になるのは間違いないだろうからな。」

しばしの静寂を切るかのように宗次が話す。

事が済んで、宗次が家に着いた頃はすでに22時を超えていた。既に他のみんなは食事を終えており、宗次が一人でご飯を食べている時に、茉奈が自分の部屋からリビングに戻ってきた。

「あ、お父さんお帰り。すごく遅かったじゃん。何かあったの?」

茉奈の問いに、ふとあの防犯カメラの映像が頭をよぎる。

「あ・・いや、なんともない・・・・」

宗次はらしくもないことを言っていた。茉奈はそんな宗次を見てただ首をかしげるだけだった。


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