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2章-2.呪いの人形のほうがマシだった 2022.11.7

 本当にどうしたものかと俺は頭を抱えた。少女から色々と聞き出すのを諦めた日、俺は面倒ごとから逃げるために、少女を気絶をさせて近くの公園に捨てたのだ。一度家から出してしまえば、もう同じようにはやって来られないはずだと、そう考えた。流石に懲りるはずだと。少女も俺を殺せないと分かったはずだと……。だがしかし、俺の考えは甘すぎたのだと痛感する事になる。


 なんと翌日、再び大家の佐藤と共にこの少女は現れたのだった。ついでに大家の佐藤に、小さな子を放置するなど言語道断だと説教までされ、踏んだり蹴ったりだった。


 近くに捨てても戻ってきてしまうなど、どんな悪夢だ。呪いの人形か何かか?本当に勘弁してほしい。そして現在、俺は少女を捨てる事を諦め、管理する方針にシフトチェンジをした。同じ建物内に大家の佐藤がいるのだ。下手な事はできない。俺は何度目かの深いため息を付いた。


 とそこへ、ピンポーン……と訪問者を知らせる電子音が部屋に響く。滅多に鳴らなかったはずのインターホンが、最近では毎日のように鳴っていた。


「佐藤じゃ!」


 少女はパッと顔を明るくし玄関へまっしぐらに走っていく。俺もそれに続いて玄関へと向かった。


***


 俺が玄関に辿り着くころには、少女が玄関のカギを勝手に開けて扉を開いているところだった。扉の向こうにいる大家の佐藤は少女を見て嬉しそうに笑っている。


「中野君、こんにちは。おすそ分けを持ってきたよ。良かったら食べてくれ」


 大家の佐藤は手提げを俺に渡す。中を見るとタッパーに煮物や総菜が詰められていた。


「突然女の子を預かるなんて大変だろうけど、頑張って。僕たちも協力するからね」

「あぁ、はい。いつもありがとうございます」

「他にも足りないものや困った事があれば何時でも頼ってくれて構わないから」

「助かります」


 俺は営業スマイルで受け応える。とはいえ、大家の佐藤には感謝している。佐藤の娘のおさがりだとは言うが、洋服など必要なものを無償で提供してくれたうえ、こうして食料まで持ってきてくれるのだから……。とそこまで考えたが、そもそもこの佐藤のせいでこいつを家に入れる羽目になったのだから、何とも言えない気持ちになる。


 大家の佐藤は少女を見るのを楽しみにでもしているようで、ちょこちょこ少女の顔を見に来るのだ。佐藤の娘は既に成人して別の場所に住んでいるらしく、寂しいのかもしれない。そんな事を想像したが、無意味な妄想だ。俺からすれば非常に迷惑な話である。この少女をどこかに捨てるにしろ、大家の佐藤には説明しなければならなくなるのだから面倒だ。


「じゃぁね、お嬢ちゃん。また美味しい物もってくるよ」

「うぬ!」


 大家の佐藤は手を振り笑顔で去って行った。

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