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7章-1.迷いは捨てろ 2022.12.24

「おぢ……?」


 建物の方からゆっくりと金髪の少女は歩いてきた。そして俺の姿を見て小さく呟いた。困惑した表情で、1歩1歩迷いながらも近づいてくる。少女の事だ、既にこの惨状を見てある程度は理解している事だろう。だが、信じたくはない、と、そう顔に書いてある。


 血液がボタボタと滴る大鎌を持つ俺と、そこら中に散らばる、6人分の人間の死体。何が起きたかなど、誰でも分かるはずだ。


「随分と早かったな」


 少女がここへ辿り着くのはもっともっと後になるものだと想定していた。縄抜けが上手くなりすぎたようだ。あれだけ練習させたのだから当然と言えば当然かもしれない。学習能力の高い少女ならば、あの程度の縄抜けにさほど時間はかからないとは思ったが、あまりにも早すぎた。結果、俺は去り損ねてしまった。


「おぢ……、何故じゃ……?」

「何がだ」

「何故……、皆を殺したのじゃ……?」


 少女の瞳には、困惑そして怒りが確かに見えた。やはり、仲間を殺されたことに対して怒りを感じているのだろうと思う。確かに店主は最低な奴だった。死んでいい人間だと思うが、それでも少女と過ごしてきた年月はそれなりにあるだろう。楽しかった思い出、笑いあった記憶等少なからずはあるはずだ。その記憶が今までの少女を繋ぎとめて支えていたのだとしたら、当然の怒りだと思う。


「そんなの決まっている。俺はこいつらより強い殺し屋で、こいつらが愚かにも俺を殺しに来たからだ。だから殺した」

「……」

「お前が俺の居場所をこいつらにバラしたからだろ。お前が黙っていれば、こいつらだって俺に向かってはこなかっただろうに」

「……」

「つまり。お前が殺したようなものだと。俺は思う」

「……っ!」


 少女が息を飲む音が聞こえた気がした。少女は苦しそうな表情で俯いた。少女が店主に、安易に俺の住所を教えてしまったことは完全に間違いだ。こればかりは指摘しなければならない。脅迫されたり拷問されて言わされたのであればともかく、そうではなかったのだから深く反省して欲しいものだ。自身の軽率な行動でどんなことが起きてしまうのか、今回の事で十分学んだだろうと思う。


 少女は暫く俯き黙っていたが、意を決したように顔を上げて口を開いた。


「おぢは、悪い人間だったのか!?」


 少女は泣いていた。泣きながら叫ぶように問いかけてくる。その感情は俺には分からない。どんな気持ちを俺にぶつけているのだろうか。理解はできそうにない。


「悪いか悪くないかを判断するのは、何時だってお前自身だ。ただ、俺に言わせれば、そんなものは明らかだ。人間を殺す人間が、良い人間であるはずがない」


 少女の顔が歪む。


「ほら。早く掛かってこい。皆の敵討ちでも何でも。いくらだって理由があるはずだ。それに、お前は殺し屋なんだろ? だったら自分の正しさを証明する方法が何なのか、知っているだろ?」

「強い人間が正しいんじゃ……」

「そうだ。その通りだ。自分の正しさを……自分の信念を貫きたいならば、力で証明するしかない」


 俺は持っていた大鎌を少女の方へと投げた。大鎌はくるくると回りながら地面を滑り、少女の足元で止まる。


「ハンデだ。お前程度、素手で十分。掛かってこいポンコツ」

 

 俺がそう言い放った瞬間、少女は大鎌を拾い握りしめ、勢いよく切り込んできたのだった。

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