5章-4.迷いが無くなれば後は進むだけ 2022.12.24
室内にいる男たちは慌ただしく動き回っていた。恐らく俺を殺しに行くために色々と準備を行っているのだろう。武器の手入れや弾薬の在庫確認等。幸い俺が隠れている辺りは全く触れられることが無いため、隠密はバレそうにない。一際埃が被っていた位置を選んだのだ。この周辺の物は長年このまま放置されているものなのだろうと思う。
「店長、それにしても死神はどうやって男を見つけたんでしょうかね」
「あぁ、あのガキは大鎌一族の人間だからな。あのシャレコウベの娘だ。生まれつき人間を区別する能力がある。男の少年時代の写真があっただろう? あの写真から雰囲気を察知して探しているらしいな。詳しくは知らないが、そういう事が出来てしまう体質という事だ」
「そりゃぁ、すげぇ。というか、あのガキがシャレコウベの娘って……。もしかして今も行方不明って有名な……!?」
「そうだよ、その通りだ。赤ん坊のころに母親を殺して誘拐した」
「だ、大胆ですね」
「まぁな。まさか成功するとは思わなかった。一世一代の賭けみたいなものだ。だが、大鎌の一族にはそれだけの価値がある。生まれつき能力値が高い事もそうだが、主従契約の一族だ。これほど都合の良いもんはないからな」
「あぁ、成程。主従関係の契約さえ結んじまえば、後は何でも言う事を聞いて絶対裏切らない犬になるらしいですからねぇ!」
「はっはっは! その通りだ。あとは、死神から主に選んでもらいさえすればいい。契約さえ結んじまえば、あのシャレコウベも手を出せないしな」
店主達は楽しそうに会話をしている。今晩の作戦が成功することを疑っていないのだろう。既に10億を手に入れた気になっているのかもしれない。陽気にべらべらと喋っている。どうやら、少女は拾われたのではなく、誘拐された子であることが分かった。さらには、店主は少女の母親を殺したと言っていた。それを聞いて俺は最後まで残っていた迷いを捨てた。店主に掛ける情けなど一切不要であると俺は判断した。もし、本当に捨てられていた少女を憐れんで拾い今まで育てたのだとしたら、店主は少女にとって育ての親として大切な存在になったのだろうが、そんな事は無かった。ただ、少女本人はまだ店主が恩人であると信じているのだろう。これだけは未だに悩ましいなと感じた。




