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1章-1.悪夢を見た気はするがきっと気のせい  2022.10.31

 朝8時半。いつも通り俺は起床した。何か昨日は変な夢を見た気がする。どんな夢だったか。

 俺は顔を洗いに洗面室へと向かいながら考える。しかし、何も思い出すことは出来なかった。所詮夢だ。別に思い出す必要などない。


 俺は思い出すことを諦めて、洗面化粧台の鏡に映る自分を見る。随分とやつれた顔をしている。実年齢プラス5はいってそうな見た目だ。すっかりおじさんだなと感じる。本当にこれで二十代なのかと自分でも疑ってしまいそうである。

 随分と伸びた癖毛のせいか、浮浪者の様にも見えてくる。目の下のクマとも相まって、本当に酷い見た目だ。流石にこの姿は自分でもどうかと思い、俺はゴムで髪を一つにまとめた。

 

 再び鏡に映る自身は、若干マシになったか。しかし今度は首筋に浮かぶ痣が目に入る。首の裏の全体に広がる、細長い長方形が連続したような形の痣は、歳を追うごとに薄くはなっているが、未だにうっすらと赤く浮かび上がり存在を示している。

 まるで『俺のアイデンティティです』と言わんばかりのその痣を見るほどに、俺は不快になった。


 俺は適当に顔を洗うと居間へと戻った。そして、朝食の支度をする。油を敷いたフライパンへ卵を割り入れ、開いた隙間にベーコンも並べる。ジュージューと音が鳴るのを聞きながら、パックのご飯を電子レンジへ突っ込んだ。


 俺はそこで、はぁーっと深くため息を付いた。朝から纏わりつくような疲労感を覚え、何もやる気が出ない。脳味噌も全く働いていない様な気がする。全てがだるい。何もかも昨日見た悪夢のせいに違いない。内容は相変わらず全く思い出せないがきっとそうだと俺は思った。


 香ばしく焼けたベーコンの香りが漂い、俺はフライパンへと視線を落とす。目玉焼きの黄身の部分は半熟になっただろうか。頃合いを見計らって火を止めると皿へ盛りつけた。温まったパックのご飯を電子レンジから取り出すと、それらをテーブルへと並べた。毎朝変わらぬメニューだ。今後も変えるつもりは無い。


「頂きます」


 俺は呟くようにそう言って、朝食を食べ始めた。

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