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3章-1.イレギュラーも慣れれば日常と言えなくもない 2022.11.30

「おぢ! 覚悟じゃ!」

「ポンコツが」


 金髪の少女は今日も元気に俺を殺そうと飛び掛かって来る。このやり取りも慣れたもので、俺は少女の攻撃を軽く躱していく。


「包丁はダメだ。これは料理を作るための道具だろう。人を殺すための凶器じゃない。仕舞ってこい」

「ぬぅ……」


 今日は台所の包丁を盗んだようだ。最初こそ素手で向かって来ていたが、素手では勝てないと分かってからは、部屋にある使えそうなもので攻撃してくるようになった。とはいえ、それでも少女はポンコツだった。物干しを使った時は、物干し自体の長さを上手く把握出来なかったのか、思わぬところに引っかかり、逆に自滅していたのだから笑ってしまう。どうにも不器用すぎる印象だ。体幹があまり鍛えられていないのかもしれない。


 少女はしょんぼりしながらも、台所の戸棚の中に包丁を仕舞うと、キョロキョロとあたりを見回していた。別の武器を探しているのかもしれない。


「もういい加減諦めたほうが良いと。俺は思う」

「ダメじゃ! ダメじゃ!」


 少女はブンブンと首を勢いよく振る。絶対に諦められないのだと、固い意志でもあるのだろうか。

 

「任務に失敗したら何かあるのか?」


 俺が尋ねると、少女は青ざめてしまった。よく見ると少し震えている。それは何かに怯えているようにも見えた。


「任務に失敗すると店主に殴られるのか?」


 少女はビクッとした。適当に言ったがどうやら当たりの様だ。俺は立ち上がり少女を取り押さえて、上半身に着ていたTシャツを無理矢理脱がせた。するとそこには、生々しい傷跡がいくつもあった。この傷は鞭で打たれた物だろう。傷に傷が重なって皮膚が変色するほど、何度も何度も長い期間打たれ続けてきたのだと考えられる。よく見ればごく最近のものまである。少女が時折半日程度ここから離れてどこかへ行っていたが、店に戻って店主へ報告でもしていたという事なのだろう。そして進捗が良くないからと叩かれたのかもしれない。


「見るな!!」


 少女は暴れるが、確認しないわけにはいかない。俺は下半身の方も確認するが、同様に傷跡が無数に存在していた。確認が終わると、俺は少女に服を着せた。薬など処置できるものはこの家にはない。とりあえず大家の佐藤を頼ろうと考え、俺は玄関へと向かった。


「留守番だ」


 俺は少女にそう告げて、1階の角部屋にある大家の佐藤がいる部屋へと向かった。

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