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2 とりあえず二択だろうと思ったら斜め上からきた

渡米した野球選手や日本代表のサッカー選手が愛用しているちょっとお高いマットレスといっても、じっとしてると腰のあたりが正直痛い。


人間寝てる時じっとしてないんですってね?定点カメラでみるとゴロゴロ寝返りうってるそうですよ。

赤ちゃんって三ヶ月くらいで寝返りうつんでしたっけ?三ヶ月このまま!?

そりゃ泣きますよね。

腰痛いですもん。


あーめちゃくちゃ動きたい。


動きゃいいじゃんって?


いや、隣なんかいますもん。

気づかれちゃいますもん。

もしかしてもしかすると、この部屋のこともわたしのことも気づいてないかもしれないじゃないですか。


すみません。

いや、玄関入ればすぐわかるよねー狭いもんね。

あれかね?開けたけど寝ていたから、寝ているうちに物色、とかですかね?

確かにこの家で価値あるものって推しグッズしかありませんからね。

お仲間?お仲間なら話せば平和的解決できないかしら。


あとは考えられるのはあれですよね。

あれか・・・いやだな。

たしかに相場より安かった。安かったけども、そこまで安くなかったもん。

いやだー



ん?

さっきから移動するのに床がきしんでるってことは二択のうち足がある方でいいかしら。


いや、どっちもどっちなんですけどね。



ガチャ


光をしょってドアが開いてしまった!!!


人ってびっくりすると声出ないんですね。

逆光でよく見えないけど、男・・・

男?は?最悪のパターンでは!

後頭部から背中にかけてゾワっと血が逆流したよう。


「あ、目が覚めましたか?」

少し低めのかすれた色っぽい声。


え。最悪のパターンで、は、ない?


じゃなくて、だれ?


20代半ばから30代のすらっと背の高い儚げなイケメンがのぞきこんできた。そんじょそこらのイケメンではなく緻密に計算されて作られたようなドールのような造形である。柔らかそうなこげ茶色の長めの髪が遅れてついてくる。目つきは鋭く見えるものの表情はやわらかく、すっと通った鼻筋は品よくみえる。


顔面偏差値高すぎないか?


日に焼けていない白い肌に、真っ白の襟付きシャツがよく似合っている。


じゃなくて、いや、だれよ?


「わからない?」

彼はじっとわたしを窺うようにみた。

いや、推しのユージ様とは全く違うし、推しが三次元になりましてな展開ではなさそう。

芸能人よくわからないんだよね。


ってか誰よ?け、警察?って頭の隅では思うんだけど、なにこの雰囲気。


目をすがめて不信感ありありで見返すと、そのイケメンは「くっ」と喉をならし、その次の瞬間にぱっとしか表現しようない満面の笑みを浮かべた。


「わからないんですよね?よかった。」


唐突に5つ上のバカ兄のにぱっとした笑顔を思い出した。顔についているパーツの数は一緒なのに全然違うな。なんなら目が一重ってのも一緒なのに。

イケメンこわ。

ついでに兄からのありがたいアドバイスも思い出した。

「明子さぁ、おまえ黙ってるとこけしにしか見えないから笑っとけ。」


アルカイックスマイルこけしの誕生の瞬間である。


わたしと同じ顔面パーツこけし仕様のくせに愛嬌としゃべくりでなんだかんだ彼女を切らさず、早々に結婚した兄のアドバイスは耳に痛い。

ちなみにわたしは脳内のおしゃべりに口がついていかないタイプである。

いやー頭の回転が早すぎるのも弊害よね。ふははは…はぁ。


ちょっと待って。いろいろ整理しないと。


えっと、中本明子27歳独身。

普通の会社員やってます。

鈍行しかとまらない駅から徒歩15分。築20年のモルタルアパートの2階に住んでます。あれ?もう3年目になるかな。去年更新したもんな。


大事なことなのでもう一度。

中本明子独身です。

恋人はいません!今はね。


しかーし、いたことはあります。あるんですよ。

いや、ほんとだって。

妄想じゃないし、二次元じゃないわよ。三次元よ!

3ヶ月しか付き合ってませんでしたけども。

二人で会ったのは3回・・・いや、あの1回目はまだ付き合ってなかったか?入れちゃダメですかね?3ヶ月で2回しか会えてなかったって数字でみるとくるものがありますな。


無言のまま脳内でわちゃわちゃと整理している間、イケメンのアテンドで自分のおうちツアーしてました。ダイニングもキッチンも玄関も見覚えのない家具やら小物やらだらけでしたよ。ここどこ?

ショックだったのはユージ様の部屋が彼の部屋になっていたこと。お宝グッズはいったいどこへ?泣きそう・・・

イケメンさんは口数が少ない人のようで、いろいろ物色するわたしに黙ってついてきてました。じーっと見てくるのでめちゃくちゃ緊張します。泣くに泣けません。


「明子、わかりましたか?」


寝室改めわたしの部屋に戻り、イケボがわたしに話しかけてます。っていうかめちゃくちゃ見てきてます。ガン見です。視線が痛い。

目が合ったら死にそうなのでこちらは必死で顔をそむけてます。だってイケメンなんだもん!無理。

イケメンビームでやられてしまう!

おい、過去のわたしよ。こんなのどうしてたのよ。意味わからんて。


わたしの手には2Lサイズの写真たて。

これは見覚えあるよ。100均で買ったやつよ。中はタキシード姿の横顔ユージ様だったはず!いつもはパーカー姿のユージ様がタキシード!本編では絶対しない衣装とポーズでしか得られない萌えってありますよね。あぁ、素敵だったー

ほら、コンビニのコピー機でランダムで出るあれですよ。札を2枚溶かしてもいらっしゃらないので諦めようかと思ったけど、そのあと泣きのリベンジでゲットできたやつ。

あの写真はどこいったんだろ。珍しく視線が外れていたから寝室に飾っていたのに!

そしてお宝グッズはいったいどこ行ったの??

脳内は荒れまくってます。

混乱の極みです。

あぁ、さっきから口角が上がりっぱなし!表情筋が固まってる。


こんなに覚えてるのに、

こんなに覚えてるのに。


今現在、手元の写真たての中の写真には全く見覚えがない。

ウエディングドレスを着たわたしと、タキシードを着た彼。

うわ、イケメン。

地味ーなわたしとは全く釣り合ってない。ウエディングのメイクしてもこんなか…と、だいぶがっかり。こういうのって整形級のメイクのわけでしょ?

こけしには和服の方がよかったか。


わたし中本明子と線の細い彼、高田祐二改め中本祐二さんの結婚式の写真…にしかみえない。多分そう。きっとそう。合成?いやー切れ目わからないな。

祐二、そう彼はユージ様だそうで・・・おいおい過去のわたしよ。


彼曰く

わたしたちは一年前に出会ってお付き合いをし、3ヶ月前に結婚したそうな。うむ、ならば確認しておかねばならぬ。

「あの、ちょっとお聞きしてもいいですか?」


いきなり声をかけたからか、彼はびくっとかたまっている。

「はい。」

「ゆ…た、高田さんとは(だってなんでかわたしの名字になってるっていうんだけど、いきなり名前呼びは難しいのよ。っていうかなんでわたしの名字?わたし兄がいるんですけど、兄は結婚してるし甥っ子もいるし、中本になんの執着もないし)1ヶ月に何回デートしていたんでしょう?」


彼はわたしを見たままかたまっている。切れ長の目が見開かれ、眼球がせわしなく動く。ん?「その質問は想定してなかった」とか囁きボイスが聞こえるんですけど。

嘘つく時とかやましいことがあると眼球が斜め上下に動くって聞いたことありますが、なんですか?その反応。目、泳いでますけど!


「それは・・・あの・・・いろいろです。スケジュール帳で確認します。あ、いま手元にないので、明日でもよろしいでしょうか?」


「はぁ、すみません。えっと・・・先ほども説明したとおり、申し訳ないんですけど、高田さん?のこと全く記憶にないんです。

や、ほら、歯ブラシとかマグカップとかスリッパとか、こ、この写真とかあるから本当のこと?なんでしょうけど・・・わたし、病院いったほうがいいですよね。」

高田さんは眉をきゅっと寄せて悲痛な表情をした、ような気がする。視界のはじでしか確認できないけど!

そうだよね。奥さんが自分を覚えてないってそりゃショックだろうな。しかも目覚めてからこのかた全く直視できてないし!


「あの、ではぼくの会社の病院に行きましょう。えっと、お着替えどうぞ。」

つい、と高田さんの視線が外れた。(そう、今まで1秒たりとも視線が逸れなかったのだ!こわ)その隙に顔を盗み見る。


怖いくらいのイケメン。

えー、過去のわたし、ほんとこんなのどうしてたの?


「準備ができたら教えてください」


高田さんが去り難そうに振り返り振り返りしぶしぶと部屋を出て行って、やっと深い息が吸えた。


誤字や表現がわかりにくいところを教えていただけるとありがたいです。

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