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狐御使いちゃんの獣神さま育成ものがたり  作者: 黒狼クロ
ものがたりのはじまり
6/33

理由は、ある

「以前にも言ったが、わしは外界の一切に干渉することができん。よってなかなか神の候補者へ手助けができず、それらが神へといたることができない」


 確かに、ここに来たばかりの時にそんな話を聞いていたけど……


「しかしココ、おぬしは別じゃ。おぬしは確かにわしの眷属になったが、元は外界から来た者。ならば外界へと干渉することができるはずじゃ。そもそも、御使いとは、神が外界へと遣わす眷属のことじゃからの」


「そんな突然言われましても……」


 神様を育てるだなんて……一体何をすればいいのかもわからないし、私にそんな大役が務められるかどうか……それに外界がどんな場所なのかも本で読んだだけだし、少し怖い……


「大丈夫じゃ。おぬしは世界の神であるわしの教えを乞うたのじゃ、外界におる並大抵の者よりもはるかに強い。それに、外界に出れば、おぬしの記憶も戻ってくるかもしれんからの」


「! 私の、記憶……」


 あまり考えていなかったけど、今の私って、記憶喪失だったんだっけ。確かに、自分の記憶は取り戻したいけど……やっぱり、不安だし、怖い……


「……まあ、別にあせって今すぐ結論を出さんでもよいぞ。やはり考える時間も必要じゃろう、とりあえず、この話は終わりじゃ。さて、腹も減ったし、飯にするかの」


 そういってミコト様は台所へと向かっていく。私はというと、座布団に座ったまま、うつむいて、一人で考え込んでいた。


………………

…………

……


 日も落ち、窓から入った月の光がほのかに照らす部屋の中、布団へもぐりながら、私はまだ考え込んでいた。


(外界、か……)


 私がいた”らしい”場所。記憶喪失となった今では、ミコト様の持つ本でしか見たことのない場所。


(私は、そこで何をしていたんだろう?)


 自分の過去の記憶にぽっかりと空いた大きな穴に思いを巡らせる。自分が何者なのか、自分が何をしていたのか、自分がなぜここへたどり着いたのか。自分のことのはずなのに、私は私のことを何も知らない。


(やっぱり、気になる……)


 ここでおびえていては、何も得られない。記憶なんて戻らない気がした。答えを得るためには、進むしかない。


(……それに)


 ミコト様の御使いになったあの日から、私はミコト様に恩返しをすると決めていた。これまで恩返しらしいことは何もできていない。むしろ、衣食住だったり、稽古だったり、私のほうがミコト様からいろいろなものをもらってばかりだった。そのミコト様が私を頼ってくれたんだ。なら、それにこたえるのが、眷属だろう。


 私には、やらないといけない理由がある。


(……うん、決めた)


 新たな決意を胸に、私は目を閉じた。


………………

…………

……


「私、やってみます」


 朝の食事を終え、後片付けを終わらせた後、ミコト様へ、私の決意を口にする。


「……ほんとか?」


「はい、私、ミコト様の御使いとして、使命、果たして見せます」


 ミコト様の目を見て、ゆっくりと、そしてはっきりと、それを口にする。


「……ありがとうなのじゃぁぁぁっ!」


 私が言葉を言い切ると、ミコト様がこちらへ突っ込んできて、抱き着いてきた。


「おぬしならやってくれると信じていたぞ!」


 そういいながら、抱き着く力が徐々に強くなっていく。く、くるしい……


「! おお、すまん、感極まってしまったわ」


 そういってミコト様は抱き着く力を緩める。少し離れたミコト様の表情は、輝くような笑顔をしていた。御使いの仕事を引き受けてよかった、と心から思う。


「本当にありがとうなのじゃ! このままじゃとわしが消えるところじゃったからの」


「えっ!?」


 明るい空気の話の流れに放り込まれた爆弾発言に驚愕する。


「ミコト様が消えるって……どういうことですか!?」


「あっ……スウゥゥゥッ」


 ……変な汗をかいてるし、視線も泳ぎまくっているし……なんだかミコト様が露骨に動揺している。


「まあ、なんじゃ、まだまだ先のことじゃし、心配させんように隠しておこうと思っておったのじゃが、仕方ない」


 そういって、ミコト様は言葉を続ける。


「神は神力(しんりき)と呼ばれる力で世界を形成している。それが尽きると、世界が形を保てなくなり、消滅してしまうのじゃ。そして、神も存在を保てなくなる。さて、その神力の供給源は人々の信仰の力なんじゃが、何分わし一人じゃと、世界の形成に必要な神力をまかないきれんのじゃ。このままいくと、いつかは神力が足りんくなり、この世界は消滅する。そこで、神を増やすことにより、獲得できる神力の量を増やす必要があるのじゃ」


 なんだか、急に壮大な話になってきた……やっぱり引き受けないほうが良かったかも……


「まだしばらくは余裕があるのじゃが、このままいくと、世界が消滅してしまうかもしれん。そこで外界に干渉できるココに頼むことにしたのじゃ。隠しておくようなことをしてしもうて、すまんの」


 ……ますますやらないといけない理由が増えた。

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