世界と術と謎の気持ち
1か月ほど投稿が開いてしまいすみません。次回からはなるべく早く更新する予定です。
……すぅ……すぅ……
「ココよ、そろそろ起きんか」
ぅ、うぁぅぅぅ……あと、もうすこし、だけ……
「これ、駄々をこねるな、起きろー。さもないと……こうじゃっ!」
もふっ!
「ぴやぁぁぁっ!?」
眠りから覚めずうとうとしていたところに、突如走り抜ける、背筋がぞわっとする感覚。びっくりして飛び起きると、やけにしっぽが重い。見てみると、私のしっぽにミコト様が抱き着いていた。
「な、なにしてるんですか! しっぽは敏感ですからぁ……ふぁっ……」
「おぬしがなかなか起きんからいかんのじゃ。それにしても、ボリュームもさわり心地も申し分ない。本当にいい毛並みをしとるのう……」
気持ちよさそうにしっぽに顔をうずめるミコト様。悪い気はしないけど……
「はっ、はなれ、って、くださいぃぃっ……」
しっぽを優しくなでられる感覚に、だんだんと力が抜けてくる。ついに完全に力が抜け、足に力が入らずに崩れ落ちる。
「ふぁ……ぁぅ……」
「おお、すまんすまん。さわり心地がよすぎてやりすぎてしまったわ。すまんの」
ミコト様は軽く謝り、しっぽから離れる。少し寂しい気が……って、私は何をっ!?
「ほれ、起きたのなら飯じゃ。はようこっちへ来ぬか」
「……はい、わかりました」
寝巻からミコト様にもらった巫女服に着替え、顔を洗ってご飯を食べる。今日のご飯は焼き魚と漬物、味噌汁、白米。やはりミコト様の作るご飯はおいしいなぁ。
―――食事中―――
「「ごちそうさまでした」」
二人そろって食後の挨拶をして一息つく。
「さて、これからのことじゃが、とりあえずおぬしには、御使いの仕事に必要な知識として、わしの世界の常識と法則について覚えてもらう」
「はい」
そういえば、ミコト様の管理する世界について、私はほぼ何も聞いていなかった。以前のことは何も覚えていないし……
「まずは、ざっくりとした世界の概要からかの。わしの管理する世界は広い大陸が多くあり、さまざまな獣人、例えば猫耳族、犬耳族、わしらのような狐耳族などが暮らしておる。もちろん、普通の動物も暮らしておるぞ。詳しくはおいおい話すが、自分で調べたいなら向こうの書庫で調べるんじゃな」
ミコト様の指さす方にある戸の隙間から、本がぎっしりと詰まった本棚が見える。後で少し覗いてみようかな。
「次の説明に移ろう。ひとまず外に出るぞ。これは実際に見てもらった方が早いからの」
そういってミコト様は玄関へと向かう。外で何をするんだろう?
………………
…………
……
「さて、次は『術』についてじゃ」
「術……ですか?」
「うむ、術、というのは、世界に変化をもたらす技術をあらわす。わしの世界には大きく分けて二つの術が存在する。一つ目は『魔術』、二つ目は『魂術』じゃ」
うん、全然わからん。
「まずは魔術からじゃの。これは誰でも使える基本的な術じゃ。世界のすべての者が持つ『マナ』と呼ばれるものを変化させ、炎や風などを生み出す技術じゃ。例えばこんな風にの……炎よ、地より吹き上がれ!」
そういうと、ミコト様の目の前から火の柱が噴き出てきた。
「ふわぁっ!?」
「これは見ての通り、火柱を出す魔術じゃ。魔術の発動には詠唱、そして起こした現象の規模に応じたマナが必要である。ほれ、わしがやり方をおしえてやるから、ココも試してみよ」
「えっ!? いきなりですか!?」
そんなこと言われても、マナなんて今初めて聞いた言葉だし、それを変化させろなんて……と考えていると、ミコト様が私の両手をぎゅっと握ってくる。
「それでは、行くぞ。まずはマナを感じるところからじゃ。今からわしのマナをおぬしに流す。その感覚を覚えるのじゃ」
ミコト様の手を握っていると、なんだか暖かいものが流れてくる感覚がする。ポカポカして気持ちがいい……
「どうじゃ、マナの流れを感じたか? ……ココ?」
「……はっ、はい、わかりました!」
心地よさにぼーっとしていたところを、ミコト様の声で目が覚める。
「そしたら、自分の中にあるマナを手に集中させるのじゃ」
手を前に差し出し、そこへ自分のマナの流れを作る。
「では、わしの言葉を復唱するのじゃ。『火よ、わが前に現れよ』」
「……火よ、わが前に現れよ」
いわれたとおりに復唱すると、手に集まっていたマナが体の外へと流れ出ていくのを感じる。それと同時に、目の前に小さな火の玉が現れた。
「わあっ、ミコト様、できました!」
「うむ、これが魔術の使い方じゃ。ほかの詠唱についても、まとめた本がさっきの本棚に入っているから、あとで呼んでおくとよい。
「はいっ、わかりました!」
これが魔術かぁ、なんだか不思議で面白いなぁ。試しに、もう何度か火の玉を出してみる。
「……ちなみに、マナを使い切ってしまうと気絶してしまうから、気を付けるんじゃぞ。」
……無駄に使うのはやめておこう。
「では次に、魂術じゃ。これは使える者が限られている。具体的には、魔術に長けた者や、神とかかわりを持つ者が扱える術じゃな。これはすでに息絶えた生物の魂の放出するエネルギーを使う。魂術にも二つの分類があり、『妖術』と『霊術』に分けられ、妖術は生物の負の感情のこもった魂が放出するエネルギー、『妖力』を、霊術は生物の成仏した魂が放出するエネルギー、『霊力』を使うのじゃ。魂術と魔術との大きな違いは、魂術には詠唱が必要ない。それにマナのように、自らの中のエネルギーを使う必要もない。場合にもよるが、基本的には魂術のほうが使い勝手が良いのじゃ。こっちも試しに……ほれ」
今度は詠唱も何もしていないのに、ミコト様の背後からキツネ型の炎が飛び上がる。
「これが妖術じゃ。主に自分の周りに対して変化をもたらすものじゃ。そして……ほれっ!」
掛け声を出して、ミコト様が空高く飛び上がり、音を立てず綺麗に着地する。
「……っと、これが霊術じゃ。これは自分の体に対して変化をもたらすものじゃな。これも試しにやってみるか」
「わかりました、やってみます!」
先ほど魔術を試したときから、私のテンションは上がりっぱなしだ。魂術はどうやって使うんだろう……すると、ミコト様は私にどんどん近づいてきて、おでこを私のおでこにくっつけた。
「っ!? ミ、ミコト様!? なな、ななな!?」
ミコト様の暖かさを間近に感じる。
「ほれ、目を閉じて意識を集中せんか。これが一番わかりやすいのじゃ」
「うぅ、はいぃ……」
うん、これも必要なことなんだ。いわれたとおり意識を集中しないと……
「……どうじゃ、何か感じられたか?」
……なんだか不思議な感覚がする……あたりにうっすら赤と青の霧のようなものが漂っているような……これが妖力と霊力、かな?
「そうしたら、さっきわしが出した炎を思い浮かべてみよ」
さっきの炎……キツネ型の……
「イメージが固まったら、そのイメージが現実であると強く思い込み、目を開けるのじゃ」
「イメージを固めて、目を開け……っ」
目を開けた瞬間、再びミコト様の顔が間近に現れる。ミコト様の目、きれいだなぁ……
「ぁ…………」
ミコト様の顔から眼が離せない。なんだかあつくなってきた気がする……? なんだろ、頭の中がふわふわして……このまま顔を近づけたら……って、
「あっつい!? ふわ、な、なにが!? あつ!」
熱源を探すと、自分のしっぽに火がついていた。
「ココ、すまんが、少し我慢してくれ」
すると、私の頭上から大量の水が降ってきて、しっぽの火は無事に鎮火された。
「はぁ、はぁ、ふぅ……」
水浸しになり冷えた頭を抱えて、先ほどの自分の行動を思い返す。さっき私は何を……
「ココ……まあ、初めてじゃし、失敗することもある。どんまいなのじゃ」
と、ミコト様が私を慰める。べつに落ち込んでいるわけではないけど……
「まあ、魂術の発動はできたし、これからゆっくりと練習していけばよい。ひとまず、今日はここらでやめておこうかの。明日から本格的に御使いとしての鍛錬を始めるのじゃ。よろしく頼むぞ、ココ」
「……はい、わかりました」
さっきのは何だったんだろう……まあ、深く考えない方がいいのかもしれない。うん。やめておこう。
そのままミコト様と二人でまた家へと帰っていくのだった。




