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狐御使いちゃんの獣神さま育成ものがたり  作者: 黒狼クロ
災いの森と狩人と
32/33

幼き狩人の覚醒

 怨嗟狼は苛立っていた。どこからともなく現れた獣人どもが、()の研究施設をめちゃくちゃにしたからである。


(コイツら、貴重な資源を無駄にしやがって……)


 部屋の隅に並べられている死体に目をやる。結晶の力となる憎悪と悲愴の感情を集めるために、死の直前で延々と苦しみを味合わせ続けていたのに、生命を強制的に維持させるカプセルがすべて破壊されてしまった。


(まあいい。貴重なサンプルが手に入ったからな)


 目の前にいる三人の獣人を一瞥する。狐は胸を刺し貫いた。フードのやつは力を使い果たしたのか動く様子はない。


(物理、魔法ともに驚異的な耐性を持つこの体にダメージを加えた先ほどの攻撃、そして普通の魔法とは違う、外と内を拒絶する壁を作り出した術といい、この二人は普通の人間とはどこか違う)


 そしてもう一人、壁際で気を失っている狼。


(Ra-2……あの狩人の言ってた通り、まさか本当に生きていたとはな……)


 研究施設の外の森は、すでに理性を失った化け物どもがうろついている。そんな場所で一人で生き残っていたとは想像もしていなかった。


(まあ、生きていたなら生きていたで使い道はある。私のスペアボディとして保存しておくとしよう)


 先ほど触手で吹き飛ばした時点でやつの体内の結晶に私の力を混ぜておいた。今頃やつの精神はボロボロに苦しめられているはず。精神を破壊されて抜け殻になってしまえば、肉体に乗り移るのも容易だろう。


(……ひとまず狐とローブのやつを先に捕獲しておくか)


 Ra-2の体から目を離し、他二体に触手を伸ばす……と、


「……ガッ!?」


 背後から異常なプレッシャーを感じる。先ほどの狐やRa-2の攻撃からも感じられた、無敵に等しいこの体が拒絶反応を示す謎の力。しかし、先ほどのものとはくらべものにならないほどの圧が私に襲い掛かってくる。とたんに体を包み込む死の恐怖。狼と化した身の毛が逆立ち、足はガクガクと震えだす。


(一体何が……?)


 体を麻痺させる恐怖を抑えながら、後ろを振り返ると、そこにあったのは、気絶したRa-2の体だけ……だが、その体からは青い炎をまとっていた。


(何だか知らないが、このままだと絶対にまずいッ!)


 狼の姿になり、その能力を得た彼は、本能から身の危険を察知した。何が起きたのか全く理解できないが、このまま放置していては、確実に私は死ぬ。それだけははっきりと分かった。瞬時に触手を伸ばし、Ra-2の体に突き立てようとするが、触手はRa-2の体に届く前に、体から放たれている青い炎に焼き尽くされてしまう。それどころか、触手を伝って彼の体にまで炎が燃え移った。


「ガアッガァァァァァッ!?」


 うめき声をあげながら、体にまとわりつく炎を消そうと地面をのたうち回るが、炎はなかなか消えない。


 やがて炎が消えるころには、力をかなり消耗していた。身を焼かれた怒りから恐怖を忘れ、元凶のほうをにらみつけると、Ra-2は目を開けていた。


………………

…………

……


 目を覚まし、周囲を確認する。目の前で怨嗟狼が炎に包まれのたうち回っているが、それには目もくれずに、近くに倒れていたココとカティの様子を確認する。二人とも全く動きを見せないが、なぜか二人がまだ生きていることがはっきりと分かった。とはいえ、早く決着をつける必要がある。怨嗟狼のほうへと目をやると、相手もわたしが目を覚ましたことに気づいたようだ。


「グルルルル……」


 わたしへと怒りの視線を向け、威嚇の声を上げる。が、先ほどまでとは異なり、恐怖は全く感じられなかった。わたしを殺そうとした相手を前に、心の中は異常なまでに穏やかだった。


「何を、怖がってるの?」


 ゆっくりと立ち上がり、そばに落ちていた弓を拾い上げる。


『あたしの弓を使ってくれてたのか、うれしいねぇ』


 横を見ると、そこにはアリア姉さんが立っていた。


『さっき言ったろ? あたしも手を貸すって』


「……ありがとう、アリア姉さん」


『礼なんていいって。大切な妹を助けるためだ。当然だろ? それよりも……』


 アリア姉さんと二人で、怨嗟狼をにらみつける。すっかり自信を失った様子ではあるが、まだ戦う意思を持っているようだ。いまだに闘志を見せる目をまっすぐ見据え、声をかける。


「お前にくれてやる、慈悲はない。お前はわたしの友達を、家族を傷つけた」


『そうだそうだ! お前にやられたとき、クソ痛かったんだからな!』


 その場に似合わないアリア姉さんのガヤに苦笑しつつ、息を深く吸って、改めてはっきりと口にする。


「わたしは、お前を、狩る!」

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