神と狐とご飯
もぐもぐもぐ……
「……して、先ほどの続きじゃが――」
もぐもぐもぐ、はぐはぐはぐ……
「……のう、おぬしよ、わしの話をきちんと聞いとるか?」
「ふぁい、ひいてまふよ」
「飲み込んでから話さんと行儀が悪いぞ。まったく、どれだけ腹が空いとるんじゃ、おぬしは……」
もぐもぐ……ごくん。
だっておなか減ってたし……しかもこの人……いや、神様? の出すご飯がおいしいんだもの。仕方ない。この味噌汁もちょうどいい味……あれ? 最後にご飯食べたのっていつだっけ?
「では話を戻すが、わしの名前はミコト、ある世界の神をしておる」
「世界の神、ですか」
なんだかとても漠然としてるし、いきなりそんなこと言われても信用しずらいが、なぜだかこの人……じゃなくてミコト様のいうことは正しい気がする。どうやらミコト様は本当に特別な存在らしい。
「うむ。そしてここは神域、現世や死後の世界などから隔絶された、あらゆる世界のはざまに位置する場所じゃ。名前の通りあまたの神が住まう土地なのじゃが……現在ここにおる神はわし一人しかおらんのじゃ」
「一人だけ、と言いますと?」
「実はこの世界は最近できたばかりでのう、この世界に神という概念は存在するものの、いまだにあがめられている神はわし一人だけ、いまだにわし以外に神となるもの、つまり偶像的な存在がおらんのじゃ」
「つまり、ミコト様が管理する世界で、現在神であると認識されているものがミコト様ただ一人だけだから、この神域にも現状ミコト様一人しかいない、ということですか?」
「うむ、だいたいそうじゃ。神になれる器をもつものもたまにおるんじゃが、なかなか神の域へと至るものがおらんくてのう。成長の手助けをしてやりたいんじゃが、わしは外界の一切に干渉することができなくての。おまけにたとえ地上へと降り立てたとしても、神域を留守にするとおぬしのような突然の事態に対応できなくなってしまうからのう」
私のような……
「本当に突然のことで驚いたぞ。本来この場所には神と認められたものしか入ることしかできないのじゃが、世界の監視をしていたら突如何者かの気配を感じての。慌ててその場所に向かったら血まみれのぬしがいたわけじゃ」
血まみれ……改めてあの時のことを思い出すとぞっとする。どんどん体が冷えていって、自分の命が零れ落ちていく感覚……あの時は確実に死んでしまうと―――
「そういえば、私はなぜ生きているんでしょう? 冷静に考えてみると、もはや治療も不可能なくらいの状態だったと思うんですけど」
あの時はもはや体の感覚もほとんど残ってなかったし、おそらく相当ひどい状態だっただろう。やはり神様の力みたいなもので何とかしたのだろうか?
「そのことなんじゃが……怒らないで聞いてくれ」
……なんだか不穏な空気。
「わしが外界の一切に干渉できないといったじゃろう、だからあの時はおぬしの看病もできなくての。そこで、おぬしにはわしの眷属、御使いになってもらったのじゃ……」
……?
「わしが干渉できるようにおぬしを神域と関連付けるためにはそうするしかなかったのじゃ。おぬしもわしと同じく狐耳族じゃから、眷属としての適性も高い。おまけに眷属化をするときに体が作り変えられるから、治療の必要もないしの。体に傷の跡が残るのはおぬしもいやじゃろう?」
……えっと、つまり?
「というわけで、わしの御使いとして、これからよろしく頼むぞ」
……どういうこと?




