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狐御使いちゃんの獣神さま育成ものがたり  作者: 黒狼クロ
災いの森と狩人と
18/33

探索結果報告会

今年ラスト投稿です

来年こそはもっと投稿頻度上げます……

 研究日誌を片手に、足音を響かせながら廊下を走る。


「あ、ココ、おかえり……どうしたの? そんなに、急いで」


 廊下の分岐点に戻ると、すでにロズさんが待っていた。


「ふっ、ふぅ、はぁ、ただいまです。二人に、はぁ、共有したい情報、が、ふぅ、あって」


 息も絶え絶えになりながら、あたりを見回す。


「……カティさん、まだ戻ってきてないんですね」


「うん、そうみたい」


 カティさんが向かっていった廊下のほうを見る。しん、と静まり返る廊下にどこか不安感を覚える。もしかして何かあったんじゃ……


「迎えに行きましょうか?」


「そう、だね。ちょっと、心配」


 二人でうなずいて、廊下を進んでいく。と、


 ガチャ……


「ぴぃっ!?」


 突然、廊下のすぐ手前の扉が開く。


「ふぁぁ……ん? なんだ、もう集まっとったのか。というか貴様ら、そんなに驚いた顔をして、どうした?」


 そして、部屋の中から眠そうにあくびをしながら、カティさんが出てきた。


「カティさん、どうしてそんなところから?」


「はっはっは、すまんな。探索が終わって戻ってきたら、まだ誰も来ておらんかったから、手前の部屋で少し仮眠をとっていたのだ」


………………

…………

……


「……では、探索の報告をしよう」


 頭にたんこぶを付けたカティさんが、少し涙目になりながらも、話を進めていく。


「では狼、とりあえず聞くが、おぬしが手に持っているものはなんだ?」


「これ、見つけてきた」


 そういうと、ロズさんは手に持っていた二つのぬいぐるみを差し出した。


「狼の、ぬいぐるみ?」


「うん、かわいい、よね」


 デフォルメされた狼のぬいぐるみを手に、そう自信満々に言うロズさん。


「確かにかわいくはあるが、研究所に関する手がかりにはならんな……というか貴様、意外とかわいいものが好きなんだな」


 カティさんはすこし呆れたようにそう答える。


「それも、あるけど、なんだか、これ、懐かしい」


「それって、ロズさんの過去に関係するものなんですかね? 何か思い出せそうですか?」


「多分……」


 少し困惑しながらも、ぬいぐるみをじっと見つめてうんうんうなるロズさん。それを傍目に、カティさんが探索の成果の報告を始める。


「我はこれを見つけてきた」


 そう言って、服のポケットから一枚のカードを取り出した、


「研究所のカードキーだな。研究区画にはこれがないと入れないらしい」


「つまり、最初に研究区画を調べようとしていても、どのみちここに来ることにはなったんですね」


「そういうことになるな。無駄足をふまずに済んだな」


 はっはっは、と笑うカティさんをよそに、自分の報告を始める。


「じゃあ、私が最後ですね。廊下の突き当りの部屋でこれを見つけました」


 そう言って、小脇に抱えていた研究日誌を二人に見せる。


「この研究所では動物の凶暴化を使った生物兵器の開発をしていたみたいです」


 神妙な面持ちで研究日誌を読む二人。


「……なるほどの」


「実験体……」


………………

…………

……


「さて、次は研究区画ですかね。カードキーも手に入りましたしーー」


「そのことについてなのだが」


 突然横からカティさんに口を挟まれる。


「我としては、ここで引き返すべきだと思う」


「なッ!?」


「……」


 ここまで来て引き返す、という選択肢をカティさんに出され、困惑する。


「なんでこんな時にそんなことを言うんです?」


「当然であろう? 研究日誌にも書いてあった通り、この研究所では危険な実験が行われていた。そしてその実験が失敗して、この研究所は崩壊した。そしてこの状況から見るに、その後始末もされていない。たった一度の失敗で研究所一つが崩壊するレベルの研究だぞ。となれば、これ以上踏み込めば、我らの命も危ぶまれる可能性がある」


 終始落ち着いた声で理由を語るカティさん。確かにカティさんの言い分はもっともだ。


「それでも、行くというのか?」


 カティさんの声は、ずっと押し黙っていたロズさんのほうへと向いていた。


「……うん」


 カティさんの問いかけに、ゆっくりと、小さく、しかし確かな声で返答する。ロズさんの視線は、カティさんの瞳をまっすぐに見つめていた。


「それでも……それでも、わたしは、行く。やるべきことがある、気がするから。思い出さないと、いけない、から」


 ロズさんの返答を聞くと、カティさんは「そうか……」と一言つぶやいて、自分の探索した廊下のほうへと振り返る。


「少し、ついてきてくれ」


 こちらを見ることなくそれだけを言い、廊下の奥へと進んでいく。私とロズさんも、黙々とカティさんの後ろについていった。

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