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狐御使いちゃんの獣神さま育成ものがたり  作者: 黒狼クロ
災いの森と狩人と
11/33

薄汚れた小屋で

ふたたび投稿間隔が非常に空いてしまい、すみません……

病気って、怖いですね……

「とりあえず、座って。結構、歩いたから、疲れた、でしょ」


「はい……では、お言葉に甘えて」


 近くにあった小さな椅子に、軽くホコリを払ってから腰かける。


「森について、話すまえに、さっき言ってた、写真と本、持ってくるから、少し、待ってて」


 そう言って、ロズさんは部屋の奥のほうへと向かっていった。


 ふぅ、と一息つきながら、周囲を見回してみる。内装は非常にシンプルで、今いる部屋には、食卓と二つの椅子、小さな調理場があるのみ。ロズさんが向かっていった部屋の入口からは、ベッドと姿見、本棚、机が見える。今いる部屋が茶の間、ロズさんの向かった部屋が寝室、っていう感じかな?


 と、落ち着いてあたりの観察をしていたところで、


(……! 指輪が、光ってる!? いつの間に……)


 おそらく、周囲の警戒に集中しすぎて、指輪の変化に全く気付いていなかったんだろう。


(っていうことは、ロズさんが、神様になれる器の持ち主……)


 確かに、あのイノシシの化け物を、たった一度の蹴りで倒してしまうほどの持ち主だ。可能性は十分あるだろう。


(彼女を神様になれるように育てるのが、私の使命……ん? 育てる……)


 私が普通に勝てなかったイノシシの化け物を、一撃で仕留めてしまうような人を、育てる? 私が?


「……無理なのでは?」


「何が、無理なの?」


「わぴゃっ!?」


 気が付くと、ロズさんが手に写真と本をもって、戻ってきていた。


「すみません、考え事をしていました……」


「そう……何かわたしに、手伝えること、ある?」


「えっと、今は大丈夫です」


 今はまだ、私の目的について言うべきじゃない。たしか、ミコト様が言うには……


………………

…………

……


『よいか、ココよ。神になれる器の持ち主を見つけても、すぐに、あなたは神になれる人です、なんて言うんじゃないぞ』


『常識的に考えて、突然見知らぬ人にそんなことを言われれば、そやつはおぬしを変人だと思うじゃろう』


『まずは、話をして相手からの信頼を得るのが先決じゃ。重要なことじゃから、よく覚えておけ』


………………

…………

……


 確かに、突然そんなことを言われたら、何言ってるんだろう、この人、って思うだろう。


「それじゃあ、わたしと、この森についての、話を、しよう」


 テーブルをはさんで、二人で向かいあって座る。


「まず、わたしについて」


 ロズさんがテーブルの上に一枚の小さな写真を置く。そこには、目の前の女性と同じ色合いをした髪の女の子が映っていた。少し鋭い瞳、狼人族のものであるサラサラの大きなしっぽ、ぴんと立った耳。確かに、写真の子とロズさんの特徴は一致している。写真の端には、小さな文字で『ロズ』と書かれていた。


「たぶん、これが、わたし。だから、わたしは、ロズ」


「……? あれ……」


 テーブルの上の写真には、違和感があった。はじめは写真機を縦にして撮られた写真だと思ったが、よく見ると、写真の右端が、何かで切り取られたようにほんの少し曲がっていた。おそらくこの写真はもともとの写真の左半分なのだろう。なんで右半分が切り取られているんだろうか?


「この写真、右側が切り取られてるみたいですけど」


「うん、そうなんだよね。小屋の中、探してみたけど、なかった。わからないことを、ずっと考えてても、意味、ないかなって、思って、気にしない、ことにした。で、これが、外の人が、持ってた、本」


 次に、テーブルの上に、少し汚れた分厚い本がおかれた。


「読んで、みて」


 ロズさんに促されて、本のページをめくっていく。


………………

…………

……


 どうやらこの本の著者は、国の命令によって無理やりこの森の調査に向かわされたようだ。本のところどころに、国に対しての不満を小さく書いていた。しかし、仕事はしっかりとこなす人のようで、この森の植生についてくわしく書かれていた。日の光を阻む、森を覆う巨大な木、異常に成長した、人すら食べてしまうような食虫植物。いろいろなものがこの本には記されていた。


「当然、あのイノシシみたいなのについても書いてるよね……」


 そして、森に生息する、赤黒い雰囲気をまとう生物……このページにだけ、異様な数の付箋が張られていた。


『危険、近寄ってはならない、今すぐ調査を中断すべきか。』


 結局、筆者は調査を中断して帰還しようとしたみたいだ。そして、まともに読める最後のページ。森を覆う壁について。内側からは決して出られない、巨大な森を覆い包む、絶望の檻。


『夢なら覚めてくれ、夢であってくれ、あいつらに殺される、ふざけるな……』


「……」


 よほど恐怖にとらわれていたんだろう。それから先は、自分の国、仕事を持ってきた上司に対する罵詈雑言が、読めないほどにめちゃくちゃに書きなぐられていた。


「そこに書かれてること、全部、本当のこと。実際に、調べてみたけど、植物も、生き物も、全部、正確に、書かれていた。だから、壁についても、本当のこと、の確率が、高い」


「……その言い方だと、壁についてはまだ、調べてないんですよね?」


「まあ、そうだけど……調べに行く、途中で、ココを、見つけた」


「そうだったんですね……」


「ココも、安全な場所に、つれてこられたし、わたしは、壁を、調べに行く」


 ロズさんは立ち上がり、玄関のほうへと向かっていく。


「あっ、待ってください!」


「……なにか、まだ、質問、ある?」


「私もついていきます!」


 森を覆う壁も、あのイノシシと同じく赤黒いものらしい。であれば、その壁を調べれば、あの赤黒いものが何だったのか、なぜイノシシが私の妖術を吸収したのかがわかるかもしれない。


「……この小屋から、出たら、危ない。身に染みて、わかってるよね」


「それは、そうですが……」


 数時間前のこと、思い出すだけでも恐怖で身震いする、死を覚悟した瞬間。この森の危険さは、その身をもって理解している。でも、ここで立ち止まっていては、何も始まらない。自分にできることを理解しなければならない。ここにいるだけでは自分の使命を果たせない。なぜだか、そんな気がした。


「でも、さっきは突然のことで動揺してしまっただけです! 私だって、やればできます!」


 そうだ。初めて……ではないかもしれないが、降り立った地上に、少し浮かれていたのかもしれない。それに、イレギュラーの連続で、激しく動揺していた。私の実力はあんなものじゃない。何と言ったって、ミコト様に訓練してもらったんだ。次は油断しない。あきらめたりしない。絶対に、使命を果たして見せる!


「ココ……」


 私はロズさんをまっすぐ見つめる。ロズさんも鋭い目で私を見つめ返す。


「……わかった、ついてきて、いいよ」


「! ありがとうございます!」


「……でも、無茶は、しないこと。そして、わたしから、離れないで」


「はい、わかりました!」


 そうして、私たちは小屋を後にした。

評価、ブクマとかしてもらえると泣いて喜びます。

X(Twitter)やってます。イラストとかなろうの更新状況とかあげるつもりです。

フォローしてもらえると嬉しいです。

https://twitter.com/Kimera_287

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