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1話:「どうしてそんな発想しかできないんだっ、お前はっ!!」

ポートリシャス大陸連合警備隊冒険者管理局サラムコビナ支部の建物は、頑丈なグレーの石造りの建造物である。老朽化の兆候は今の所見せてはいない。建設ダイジェストに写真が載る事を意図してデザインされたものではない事は確かだ。もし、それを意識したものならば、もっと見栄えも良い建設にしたことであろう。外見はともかく機能は十分しているこの場所が、「ポートリシャス大陸連合警備隊サラムコビナ支部冒険者管理局遺品回収課」に所属しているベルナルドとラインヴァルトの本拠地である。

識別迷宮ナンバー「00-128」迷宮内の遺品回収から帰還をはたした2人は、支部建物のシャワールームにいた。ロッカー付きの脱衣所の床はコンクリートである。

突き当たりのドアの向こう側に、ベルナルドとラインヴァルトがいる。

そこは通路とシャワールームを兼ねている。左右の壁にシャワーが並んでいる。

仕切などない。シャワールーム内は広く、その奥にはサウナルームもある。

汗と硝煙に、迷宮内の漂っている独特の臭い・・・そして、朽ち果てた冒険者の血と肉片など汚れた遺品と認識票を回収するという、常人では耐えられない重い気分を熱い針の様な湯でゆっくりと浴びて、洗い流している。どちらの身体も鋼の様な強靭な筋肉で、数カ所には刀剣類の傷や銃創のあとがある。

シャワールーム内には、彼等2人の他に、20人ぐらいの男女の職員がいた。

サウナで火照った身体を冷たいシャワーで冷やしているのは半分ぐらいだ。誰もが疲れきった表情をしているのがわかる。

ポートリシャス大陸連合警備隊のシャワールームやサウナルーム及び宿舎は男女一緒である。

サウナルームには10人ぐらいの男女の職員が、ベンチや棚に腰を卸したり、横や仰向けになったりしている。前を隠している者はいない。男性職員も女性職員も性的な興奮をしている様には見えない。

普通なら、性行為を行っている可能性もあるはずだが――・・・ハードで危険な遺品回収作業の影響だろう。帰還したすぐには性的興奮も衰えているのだろうか、それとも、同じ釜の飯を食い、想像絶する危険な迷宮や遺跡での冒険者の遺品を回収作業する中で培われる同胞意識などがあるからか?。

――――その同胞意識は、家族や恋人の絆や男女間の友情などという生やさしいものではない。

遺跡や迷宮での遺品回収は、この大陸・・・この世界で発生している局地紛争や大陸間全土を巻き込んだ戦場よりも危険だ。同じ死線を潜り抜けた者にしかわからない、もとい、わかるはずのない深く強靭な「血の絆」と言われるものだ。

ある職員が新聞や雑誌の取材に答えた時の、大陸連合警備隊を表している台詞がある。「連合警備隊の女性職員は、それりゃまぁ、良い女どもさ、でもよ、恋愛やらなんやらは少し無理かもな。中には運良く恋愛関係に発展して結婚するのもいるさ。しかしよ、俺らの連合警備隊の「血の絆」は、傭兵や冒険者、軍人、そして犯罪組織の「鉄の絆」よりも強靭で深いんだぜ?。戦友としては連合警備隊の全女性職員の事は愛しているさ。その女性職員がドワーフ、エルフ、ホビット、フェアリー、フェルパー、ラウルフ、そして混血種族だろうがなんだろうと関係ないよ。

獰猛で凶暴な魔物と容赦のない迷宮や遺跡内に設置されている罠を回避しながら、死んでしまった冒険者の認識票と遺品となる装身具を回収しなくてはならない。なぁ、一緒に組んで、迷宮内の死線を潜り抜けるのが何も同胞の人間だけじゃないんだぜ?。相棒が毛嫌いしている種族かもしれない。そんなんで、迷宮内の仕事が勤まると思うのか?」

連合警備隊は、種族や出身国を問わずに募集している。基本的な人間の他に、ドワーフ、エルフ、ホビット、フェアリー、フェルパー、ラウルフ、そして混血種族でも連合警備隊に入隊できる。

この大陸・・もとい世界では、人間だけで治安維持をするにはほぼ難しいと言うしかない。

独特の言語などを持つ各種族が存在しているため、種族の1人が何かしらの犯罪を犯したら太刀打ち出来ないとは言えないが、それなりの犠牲は覚悟しなくてはならない。

恐らく、性的な興奮をしていない様子を見れば、後者だろう。職員にすれば男の裸だろうが女の裸だろうが、それで興奮するのはまだまだ修行が足らないと言うことなのだろう。

それと、シャワールームやサウナルームは男女混浴である事は、ポートリシャス大陸連合警備隊に入隊する前の、3日間の基本説明とオリエンテーション、そのあとの六ヶ月の実施訓練の間に、この場所の隅から隅を案内される時に説明される。もし、これが嫌なら連合警備隊に入隊しないことを進める。

なぜ男女混浴のシャワールームとサウナルームなのかと言えば、訳は二つある。男性用のシャワールームやサウナルームの建設に回るほどの予算と維持費費用がないからである。ほとんどの予算は職員ならの命を保護する装備品などに優先的に回されている。もう一つは、他種族の職員と裸の付き合いでもして異文化交流でもしろと言うことである――――ポートリシャス大陸連合警備隊の上層部辺りは、案外こっちの方を心配しているかもしれない。種族同士の軋轢で溝が深くなれば、捜査の出来るものも出来なくなる可能性があるからだ。

さて、冒険者管理局遺品回収課の職員は、迷宮や遺跡での遺品回収作業を終えて帰還すれば、報告などの作業をする前に、まず身体全体に染み付いた汗と硝煙に、迷宮内の漂っている独特の臭いに、迷宮や遺跡内の魔物の返り血の臭いを洗い落とさなくてはならない。迷宮や遺跡から帰還した職員からは凄まじい臭いが全身にこびり付いているため、何かと衛生上に悪いためだ。

「――――幾ら予算がないからと言って、これで良いわけないだろ・・・っ、なぁ、ベルナルド」

シャワールームから出てきてきた、黒色の頭髪と日焼けをした肌で、二重瞼の眼の騎馬騎士のような精悍な風貌の男性が、ロッカー付きの脱衣所で連合警備隊が支給している丈夫な背広型の制服を身に付けながら陽気な口調で言う。その男性の右側頬には、耳から顎に達する細長い刀剣傷がある。

二重瞼の眼の瞳は、青銅色だ。

精悍な風貌のためか、それとも彼のおのずと発散する動物的なほどの、セックス・アピールの磁力に引き込まれるのか、女性には不自由はしないのだが、病気により死亡した妻を想ってか、何かと誘ってくる女性陣を丁重にお断りしている。彼の出身国の故郷には、死んだ妻との間に出来た1人息子がいる。

これがなかなか、しっかりとした子供なのだ。

「――――それが理由だと、この大陸の各支部にシャワールームとサウナルームを余分に建設しなくてはならないな。給料が半分になるかもしれないが、それでもいいのか?、ラインヴァルト」

掠れた声で答えながら、ベルナルドと言われた男性も丈夫な背広型の制服を身に付けながら答える。

その彼は、白色の頭髪で、白く透き通る肌、左の眼が海賊や盗賊が愛用する黒い眼帯で覆われ、鋭く切れ上がる眼の瞳は、わすがに青みかかっている。繊弱な容姿をしており、威圧感や力感とは無縁に見える。容姿からすれば、彼も女性にはまったく不自由はしないのだが、こちらの彼には、故郷に婚約者がいる。その婚約者は彼の出身地国の女性騎士団長なのだが、浮気などできないぐらいの震えがくるような美人な女性で、他国の王族や貴族の求婚も凄まじいほどだったらしいのたが、どんな手を使い――――ではなく、どんな方法で口説き落としたのかは、本人は語らない。

「1人息子に、生活費として仕送りしている俺にとっては困るが・・・・だが、俺はやはり納得できない。もう一度上層部に嘆願書を送りつけてやる」

連合警備隊が支給している腕時計をつけて、これも支給品のバスタオルとタオルを持つ。

ちなみに一般の商店には売ってはいない。他にもコーヒーカップや歯ブラシなどの日用品も支給される。

「だったら、なぜ連合警備隊に入隊したんだ?。他の職業に就いたら良かったじゃないか。特に冒険者管理局に所属している職員は、その辺りに関しては緩いぞ・・・・ふむ、容姿端麗な女性職員が多いからか」

掠れた声で、至って真面目に尋ねる。

「何1人で納得しているんだ?、お前は。そんな理由じゃないっ。給料が良いからに決まっているだろっ!!、ベルナルドよ、結婚して子供が産まれたら、楽しい事もあるが、大変な事だってあるんだからな」

「父親が女にだらしないと、子供は色々と大変だからな」

「――――どうしてそんな発想しかできないんだっ、お前はっ!!」

「――――だって事実なんだからしかたがないんじゃないの?」

シャワールームから出てきたブロンドの髪の女性職員が尋ねてくる。身体が引き締まってたくましい裸体である。バスタオルで髪の毛を拭いている。

ラインヴァルトは危うく声が聞こえた方に視線を向けようとしかけた。だが、見ない。

「アルシノエのお嬢さんよ、少しは恥じらいといものを持ちなさいっ、男が2人いるのに堂々とするなっ。タオルで身体を隠しなさいっ!!」

と不機嫌な声で告げる。

「そんなもの警備隊に入隊すれば、意味のない事よ。それと、人と話をするときは前を見なさいと教わらなかったの?」

何処が吹っ切れた様な、呆れた口調で告げてくる。

この女性職員はアルシノエという名前なのだろう。まったく気にした様子がない。

「――――ラインヴァルト、俺は腹が減ったから、先に飯に喰いに行く。お前は――――愉しむのもほどほどにな」

と掠れた声で告げると、さっさとシャワー・ルームから出ていく。彼が最後に言った「愉しむのもほどほどに」とは、恐らく性行為の事だろう。

「――――をい、こら、ベルナルド、お前、ちょっと待て!!、最後の台詞はどういう意味だっ!?」

少し焦り気味の口調でベルナルドが言うが、彼の姿はない。

「気が利くじゃないの、彼、少しは見習った方がいいんじゃないの?」

「アルシノエのお嬢さんよ、そんな問題じゃないっ。っていうか、ベルナルドっ、本当に待てぇっ!!」

そう告げながらもラインヴァルトも、さっさとシャワールームから出ていく。

「あっ、ラインヴァルトっ」

彼女が呼び止めようとしたが、彼の姿はなかった。


前に投稿した小説とほぼ同じ内容ですが、2人の職員の日常行動を書いていこうと思います。駄文ですが、感想宜しくです。

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