頭おかしい異世界転生
昔々というほどでもないってか最近、三人のシャブ中がいた。
「見て見て~!木目がお空飛んでる~!」
「おまえらこんなんじゃたんねーよー。のうみそとけてぷりんになっちまぅうーー」
「ヴェッwwwアハハハッwwww」
今日も今日とてヤクをキメながら、皆で一緒に幻覚を見ていた。
発言の上から順にシャブ中A、B、Cとすると、Aは虚空に向かってジャンプしながら虫取網を振り回し、Bはソファーに寝っ転がりながらフォークで自分の頭を刺し、Cは床に朝ごはんの覚醒剤を吐きながら笑っている。明らかに全員殺した方が社会のためになる絵面である。Cが吐き終わって追加の覚醒剤を腕にぶっ刺した。
「注射ギモヂ~~ww」
さっさと捕まっちまえ。
だがこの三人、神様が与える才能を間違えたのか、今日までしぶとく逃げ延び生き残っているのである。ゴキブリか何かか?
しかしそこは神様。やっとこいつらを法ではなく天から直接裁きを下そうと腹をくくったようだ。
ざっくり言うと、三人の家にトラックが突っ込んで全員死んだ。ナイス。人々の安寧は守られた。もうこの神を平和の神にするべきでは?
残念ながらそうは問屋が卸さなかった。
トラック、という手段が問題だったのだ。昨今、トラックによる異世界転生で、魂のリサイクルをする方法が神の間で流行っていた。そんなことだから転生を司る神が「あーあ、またトラ転か」とシャブ中どもを転生させてしまったのだ。
事故みたいなものである。最悪。強いて悪者を探すなら、報連相を怠ったことだろう。転生の神は悪くない。彼はあらゆる世界の輪廻転生をワンオペで回しているのだ。何故過労死しないのか。答え:神は死なないから。この世は無情である。
そんなこんなでまた転生してしまった絶望に神界はお通夜状態だったが、ある神の発言で希望が芽生え始めた。
曰く、「転生して脳も体も一新し、薬中じゃなくなるのでは?」と。
その言葉で「いける……いけるぞ……!」と神界の雰囲気が変わ──らかった。
実はこの三人がキメていたヤク、なんととある邪神が作ったものだった。その依存性は魂に付随し……
「靴とティッシュの結婚式!!!」
「おくすりおいちい~」
「スゥッwwハァッwwア゛ーwww」
結果はご覧の通りである。神々は泣き、あらゆる世界で雨が続いた。
そしてさらに大変なことがあった。転生といえばチートという風習があるため、転生の神はその三人にも強大な力を与えてしまった。これでその世界の人々には止めることができない。
また神々は泣いた。洪水でいくつかの世界が沈んだ。
そうして地獄は幕を開けた。
冒険者として数々の魔物を討伐し、それで得た金で世界中のありとあらゆるヤクを買い占め、途中から面倒になったのか奪い、立ち行かなくなったマフィアは壊滅し、ヤクが足りなくなったのか植物の力でヤクを作り、そのヤクを買い取ろうとした犯罪組織を全てボコボコにし、ヤクを作り、ヤクを作った。
この世界を担当する神は胃痛で倒れた。現在も療養中である。可哀想に。あらゆる世界の神がお見舞いに行った。そのせいであらゆる世界が邪神の手に落ちた。
何の化学反応が起こったのか、三人が人々から慕われるという謎現象もあった。神々は一様に?を浮かべ、神として信仰する人間もいると知ったときは「一緒にすんじゃねぇ!」と激怒した。あらゆる世界で火山は噴火し、雷が落ち続けるという異常気象が起こった。
そんな日々も今日で終わり。なんと、三人の寿命が訪れたのだ。これには全神々がスタンディングオーベーション。あらゆる世界は祝福と加護で満ち、奇跡と幸福で溢れた。
ウッキウキで三人の逝く末を見守る神々。悪に堕ちたかのように「死ーね!死ーね!」と大合唱する様は邪神かと見紛うレベルであった。
「天使のお迎えだ……!眼鏡の翼がお綺麗ね~」
「あ゛あ゛~!しゅごい~!きもちよくていっちゃいそうなの~~!!」
「アウアウアーwwwwwオエッwwww」
最期まで狂ったやつらである。「この頭のおかしさもここで見納めか……」と神々は感慨に耽った。心労でこちらもおかしくなっている。
「「「……」」」
三人がようやく黙った。死んだ。神々はガッツポーズし、喜びのあまりあらゆる世界に光が降り注いだ。
さて、これにて一件落着。神々は元の仕事に戻り、いつも通り世界は廻る……
……と思われたが。
大事件が発生した。またあの三人組が転生した。神々は絶叫した。あらゆる世界は震え、人々は神に祈った。
不幸な事故だった。神々からすればストレスの発生源だが、曲がりなりにもその世界の多くの人から慕われていたのだ。よって、転生の神が人々に尽くした褒美として強大な力とともに転生させてしまったのだ。
神々の心が折れ、あらゆる世界に歪みができた。いくつかの世界は消滅した。
「カーテン拾ったぜ!!」
「あかぺんしゃーぺんぼーるぺん」
「ン゛ホォwwwww」
神々の受難は続く……。
見なくていい設定
A
頭がおかしい。まだ話は通じる。通じないけど。呂律も怪しくないし、会話もできる。ただ幻覚症状が一番酷い。
B
頭がおかしい。幼い感じがする。脳がぐずぐず。呂律が回ってない。会話はできるが成立はしない。
(例)
「こんにちは」
「ぱそこんこんこんこんぴゅーた!」
C
頭がおかしい。ゲラ。ずっと笑ってる。笑いながら刃物振り回したり爆弾投げたりする。一番話通じない。AとBをシャブ中にしたのはこいつ。出会い頭に注射ぶっ刺したり粉吸わせたりした。