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最終話 永遠の愛

 あの事件から半年が経ちました。季節は夏を迎えようとしています。梅雨の時期も近づいているため、少し雨が多くなっていましたが、今日は気持ちのいいほどの快晴でした。


 国王陛下はあの事件の後数日後にご崩御され、私たちは半年間喪に服していました。国王陛下の葬儀の際には誰しもが涙を流し、かつて行った偉業をたたえていました。それだけ大きな存在だったのだと私は知ることになりました。

 その間も公務は滞ることはできませんでしたから、ジェイク様が担当されることになりました。

 慣れない公務に疲れて帰られる日々を送ってらっしゃいましたが、それでも彼は負けずに挑んでいきました。そうしているうちに私もできることがないかと探し始め、微力ながらお手伝いをすることにしたのです。


 ヘルクレスは王族から外され、身分を平民とし極刑かもしくは国外追放を言い渡されるか、どちらかだそうです。かなり彼に騙されたものもいたらしく極刑を望んでいる声が上がっている中、そこまでする必要がないと言ったのがほかでもないジェイク様だったのです。

 ジェイク様は彼に様々なことをされてきて、邪険にも扱われてきた。しかしそれを理由に死に追いやるのはどうか、という考えを持っていました。それ以上に、一度人生をやり直してほしいという気持ちが大きかったようです。

 当の本人は魂が抜けてしまったかのように、牢でぶつぶつと何かをつぶやきながら過ごしているそうです。もはや、誰かを害するだけの力は残っていないのでしょう。


 ツヴァイヤ殿下も体を癒し、現在はリハビリという形で稽古を行っています。一度、王位を譲るべきかとジェイク様は本気で悩んだそうでしたが、それを断ったのがツヴァイヤ殿下でした。


「俺は将軍でいる方が、気が楽だ。机の前でうんうんうなりながら書き物をするなど、したくもないしな!」


 と笑い飛ばしてしまったそうです。まったく、何というさわやかな方なのだろうと、私とジェイク様は同じように考え、笑みを浮かべてしまいました。オリヴィア様もそれでよかったのかと尋ねましたが、夫の決めたことを妻が従わずにどうすると言い出し、その代わり彼女が受けた王妃となるための教育を私が受ける事になり、ヒーヒー悲鳴をあげながらついていくのがやっとでした。やはり、王妃となる方はすごいのだと思います。


 そんな半年が経って、私たちはある決断をしました。王位継承と結婚式、その両方を一緒に行う事です。国内の政情も安定しない今、政をおろそかにすることはできない。そのため、式典は最小限に抑えるという決断でした。

 ジェイク様は少し寂しがっていましたが、私はそれでも嬉しいと言って、表情を明るくしてくださいました。そして今、私は一つのドレスの前に立っています。


「これが、父が用意してくださったウェディングドレス……」


 真っ白な生地に、ところどころ装飾が施されていています。この式典のために無理をしたのでしょう。そのドレスを着る事すら私にはもったいない気がしたのですが、それでも、これを着る事が親孝行になるのだと思い、私はキュラーヴァを呼びました。


「お呼びですか、奥様」

「はい。ドレスを着ます。手伝ってください」

「承知いたしました。きっと陛下もお喜びになると思いますよー。ああ、あちらはエマネが支度をしているらしいです」


 そう、エマネさんも無事にやり過ごすことができたそうです。私たちが結婚式を挙げることを聞いた途端、大泣きをされて喜んでいました。まるで自分の孫が巣立つかのような気分だと、彼は仰っていましたが……。


「本当に、良い人に囲まれていますね、私は」

「そうですよ。みんな良い人です。だから、頼ってくださいね」

「はい。わかっています。これからもよろしくお願いします、キュラーヴァ」

「ええ。では……」


 ウェディングドレスに着替え終えた私は部屋の外に出ました。そこには父ロイドの姿もありました。私は一礼して、父が差し出した手に自分の手を置きます。


「まさか、ヴァージンロードを一緒に歩くことになるとはな」

「あら、私がどこにも結婚するつもりがないと?」

「まあ、正直に言えばな。……似合っているよ、エレナ」

「ありがとう、お父様」


 そうして私たちは式典場へと向かいました。

 赤いカーペットが敷かれ、その先にはお祝いに来てくださった隣国の王とジェイクが待っていました。

 カセナさんとオリバー様がバスケットに入った花びらを散らしながら、先に歩いています。私はゆっくりと父とともに歩き、檀上の前で別れました。あたりを見渡すと、リードオール様やツヴァイヤ様、オリヴィア様も参列されてらっしゃいました。皆さん拍手で私たちを迎えてくれます。


 ジェイクは私に小さな声で私に言いました。


「似合っているよ」

「ジェイク様も」


 私たちは二人笑みを浮かべて壇上の方を向きました。緊張してきましたが、大丈夫。


「国王となられるジェイク殿、そして王妃となられるエレナ嬢。この度は誠におめでとうございます。まずは、前国王に向けて、誓いの言葉を」

「はい」


 私たちは同時に頷き、胸の前に手を置き、お互いに誓い合いました。


「私はこの国をさらに発展させることを」

「私は国王となる夫を支えることを」

「ここに誓います」


 私たちの後ろでも、来賓の方々が同じように胸の前に手を置き前国王が愛した剣に向かっていました。

 しばらく祈りが続いた後、隣国の王は言いました。


「では、続いて……。ジェイク・ポーレタリア王。あなたはこの場にいる者、そして世界にいる者に向けて、妻となるものを一生愛することを誓いますか?」

「誓います」

「エレナ・アヴェレーナ王妃。あなたはこの場にいる者、そして世界にいる者に向けて、夫となるものを一生愛することを誓いますか?」


 私はジェイクを見て、ゆっくりと目を閉じた後。もう一度目を開いて言いました。


「誓います」

「それでは、誓いの口づけを」


 ジェイク様は私の肩を抱き、私もまた彼の肩を抱き、誓いの口づけをしました。背の高さ的には、逆なのかもしれませんが、これはこれでいいのです。


 私の愛の話はこれにて終わり。ここから先、どんな風になったかはご想像にお任せします。


 ですが、一つだけ。人生の最後の最後まで幸せだったことを、お伝えしておきますね。


fin


ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。これにて完結となります。

前作も含め、いろんな方に支えられて完結に至れたと思います。誠にありがとうございます。

次回は短編をしばらく書くかと思いますが、また長編にも挑戦してみようと思いますので、

どちらも手に取ってもらえればうれしいです。


それではまた会える日まで


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よければブックマーク、下の " ☆☆☆☆☆ " より評価していただけると、今後の創作活動の励みとなります! よろしくお願いいたします!


※追記:感想欄のほうはご返信しないですが、拝見させていただいています。ありがとうございます。オヴェリア→オリヴィアでした。修正しました。

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