第6話 解呪の儀
翌日、感応増幅師が王宮から公爵邸へとやって来た。
ベッドではロインが横になっている。
「アナスタシアさん、無理はしなくていい。厳しいと思ったら中止してくれ」
自分の体調が優れない中、アナスタシアのことまで気にかけてくれる。
その優しさがとても温かく感じた。
「大丈夫ですよ。あなたの命、救って見せます。それが、聖女である私の務めですから」
アナスタシアの祖母も光の女神から加護を授けられた聖女だった。
『加護を授かったのだから、私は多くの人を救わなければいけない』
幼少期、祖母が口癖のように言っていた言葉を今でも思い出す。
祖母は聖力を使い果たして、まだ55歳という若さでこの世を去った。
祖母は亡くなった時、当時の国王から《大聖女》の称号を与えられた。
それだけ、祖母は国に認められ、頼りにされていたのだ。
アナスタシアはそんな祖母が憧れだった。
いつか、私も祖母のような皆んなに必要とされる聖女になりたい。
その夢は叶わなかったが、今はそんなことはどうでもいい。
ただ、目の前に居る人を救えれば。
目の前で苦しんでいる人がいたら、全力で助ける。
それが、加護を与えられし者の使命であると思っている。
勝手なことをするなと教会にいた時は怒られたこともあった。
ただ、アナスタシアは思う。
命を救うことの何が勝手な事なんだと。
「感応増幅師のセシルです」
「よろしくお願いします」
「聖力を上げればよろしいんですね」
「はい、お願いします」
セシルはアナスタシアの手を握った。
すると、みるみるうちに聖力が上がっているのを感じる。
自分が保有している聖力の何倍もの量だ。
「どうですか? これ以上はアナスタシアさんのキャパが持たないと思います」
「十分だと思います」
これだけの聖力をぶつければ呪いを解くことも可能だろう。
「ロイン様、目を閉じていてください」
「わかった」
ロインはそっと目を閉じた。
「では、行きます」
その様子を父、ガルンと使用人たちが見つめている。
ガルンは両手を合わせて、祈っている。
これが、この親子にとって最後に残された希望なんだ。
『光の女神の加護を授かったアナスタシアの名を持って命じる。ここは聖域にして我が領域。力よ無に帰せ!』
体内の聖力を一気にロインにかかっている呪いにぶつける。
「さすが悪魔の秒読み、一筋縄では行きませんね」
呪いがアナスタシアの聖力を跳ね返してくる。
「上等です。たかが呪いに私の聖力が負けるわけありません!」
さらに多くの聖力をぶつける。
アナスタシアの聖力が底をつきかけた時、ロインに刺さっていた真っ黒の矢は粉々に砕けたのを確認した。
「呪いは、解けました……」
そう言うとアナスタシアは聖力を使いすぎた代償として、その場に倒れた。
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