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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
6章 地下の迷宮

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81 呼び出し

 答案がぜんぶ返された翌日、掲示板けいじばんの前には人だかりができていた。

 成績優秀者の名前が掲示されるのだ。

 成績がいい人以外の名前は張り出されないけど、赤点の人は張り出される。補習の日時が書いてある赤点の掲示には、オッペンの名前がいくつかあった。


 一方、成績優秀者の掲示では、1年生の総合成績のところに、「1位ケイニス、2位エルツ、3位マーカス」と張り出されていた。


 ユウリは掲示を見てほっとしたように言った。


「よかった。奨学生の全額学費免除には、学年10位以内をキープしないといけないんだ」


「そうなの?」


「うん。1年の成績の平均で、10位以内に入っていればいいんだけど」


 奨学生は成績が悪いと奨学金取り消しになる、ということをイーアは初めて知った。

 それを知って、イーアは一瞬、不安になった。

 ウェルグァンダルの奨学生にも成績の取り決めがあるのだろうか……?


(でも、赤点はないから、きっと大丈夫だよね……)


 イーアがユウリといっしょに掲示を見ていると、ちょうど、掲示板の前にマーカスがやってきた。イーアはマーカスに話しかけた。


「マーカス、すごいね。3位だよ」


 マーカスは悔しそうにつぶやいた。


「フン。エルツに負けたか」


「でも、すごいよ。マーカスは入学の時よりずっと順位があがってるもん。入学の時は、わたしと大差なかったのに」


 マーカスは鼻で笑った。

 

「君といっしょにしてほしくないな。入学試験は調子が悪かっただけなんだ。次は負けないぞ。エルツ。凡人が天才に勝つところをみせてやる」


 マーカスはユウリに向かって堂々と宣言をして、去って行った。

 ユウリはわざとマーカスのことを無視して、つぶやいた。


「ケイニスはさすがだね。勝てそうにないや」


 イーアは掲示板の前をはなれながら、ユウリに言った。


「これで試験も終わったし、あとは冬休み! 楽しみだね」

 

 ところが、そのとき突然、黒い影のような、カラスみたいな生き物が飛んできた。

 生徒達があわてて左右によけていく。

 猛スピードで飛んできた黒い鳥はイーアの前でとまり、翼と口を大きく開いて叫んだ。


「なんだ、この成績は。即刻、塔に来い」


 聞こえたのは、ガリの声だ。……ウェルグァンダルからの呼び出しだ。

 イーアの成績を見たガリが怒っている……。

 声は淡々としていた、というより、むしろあきれているような声だったけど、あのガリがわざわざ「来い」と呼び出すということは、きっと、怒っている……。


「どうしよう!」





 すぐに来いと言われたので、イーアは放課後、すぐさまウェルグァンダルに向かった。

 なにしろ、ガリが怒って「奨学金を取り消す」と言えば、それでイーアの学校生活は終わってしまう。


 塔の入り口で不気味なベルを鳴らすと、少ししてリグナムが出てきた。


「いらっしゃーい。久しぶりだね」


 イーアは緊張しながらリグナムにたずねた。


「久しぶりです。リグナムさん。ガリはいますか?」


「もちろん、今日もいないよ」


「え? いないんですか? すぐ来いって言われたのに」


 ガリがいないと聞いて、イーアはひょうしぬけして、少しほっとした。


「ガリがわざわざ君を呼び出すなんて……何かしでかしちゃった? まぁ、入りなよ」


 リグナムは意外とするどい。


「しでかしたというか……テストの点がよくなくて……」


 イーアは塔の中に入りながら、リグナムにテストのことを説明した。


「赤点は一個もないから、怒らなくてもいいのに」


 イーアがなげくと、リグナムは大笑いしながら言った。


「そりゃ、ガリは超成績優秀だったからさ。100点以外は許せないんじゃないかな。赤点ギリギリなんて点数、きっと、ガリは生まれて初めて見たと思うよ」


「100点!?」


 そんな点数、とれるはずがない。……ユウリは、とっているけど。どうやら、ガリは学生時代、ああいうタイプの超優等生だったらしい。

 リグナムは笑いながらつづけて言った。


「だって、ガリって、1年で3年分の科目をほぼ終えちゃったらしいよ。しかも、ほとんどの科目で成績トップ。初等魔学校にも行ってなかったのにさ」


「そうなんですか!?」


「うん。ガリがウェルグァンダルに来たのは、君ぐらいの年の時だけど。その時までガリは学校なんて行ってなかったんだ。それまではドラゴンといっしょにいたらしいから。なのに、ここにきてから、ほとんど独習で、ものすごいスピードで魔術を学んでいったんだよ」


「そんなにすごいんですか」


 ガリの天才っぷりは、ユウリやケイニスよりもすごいかもしれない。


「まぁね。ガリは塔主としては最悪だけど、魔導士としても召喚士としても天才なんだよ。塔主としては本当に最悪だけど。あーあ。昔は、年末って門弟の皆さんがあいさつに来て大にぎわいだったのに。ガリが塔主になってからは、ほとんど誰も来やしない……」


 その時、塔の中に「ゲオー、ゲオー」という音が響いた。


「来客……ゲオ先生だ!」


 リグナムはそう言って、玄関にむかって急いで走っていった。



 イーアは立ちどまってリグナムが戻ってくるのを待った。

 入り口の方からリグナムの声が聞こえた。


「ゲオ先生! お久しぶりです!」


「久しぶりだ。リグナム。元気そうで何より。年末の挨拶あいさつに来たんだが、塔主はいらっしゃるかね」


 聞こえてきたのは、年配の男性っぽい低い声だった。


「ガリはいません。でも、弟子を呼び出したらしいから、じきに戻ってくると思います……あ、そうだ! ゲオ先生。ガリの初弟子を紹介します。イーア!」


 イーアは呼ばれたので、廊下をちょっと戻った。

 リグナムの横に白髪の威厳いげんのあるおじいさんが立っていた。

 おじいさんだけど、背筋がまっすぐで背が高くて格好いい。


「イーア、こちらは塔主補佐役のゲオ先生。とてもえらい先生なんだよ」


 イーアは頭を下げてあいさつをした。


「はじめまして。よろしくお願いします」


 ゲオはほほえんだ。


「よろしく。君が新しい入門者か。なるほど、素質にめぐまれているね」


「そうなんですか? グランドールのテストは赤点ギリギリなのに?」


 疑わし気に聞き返したのは、リグナムだ。

 たしかに、成績が悪すぎて呼び出されたって話の後じゃ、疑われても仕方がない。


「少なくとも召喚士としての素質は人並みはずれている。さて、塔主がお戻りになられたようだ」


 ゲオはそう言って、廊下の先の階段の方を見た。

 リグナムは驚いたように聞き返した。


「え? ガリが戻った?」


 たしかに、階段の所に、ガリがいた。

 ガリはイーアを見て、いつものように無表情に言った。


『ゲオと話す。おまえはしばらく待て』


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