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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
6章 地下の迷宮

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80 期末試験

 マジーラ先生が宣言した通り、林の中の地下への入り口は翌日には封じられてしまい、先生や守衛さんが交代であの入り口を見張るようになった。


 ちなみに、シャヒーン先生はイーアたちが捕まった翌日、マジーラ先生にこってりたっぷりしかられたらしい。


「監督なしで夜に野外を歩きまわらせるなだの、危険なオリジナル占いを教えるなだの、身に覚えのないことふくめて、いっぱいしかられちまったからね。あんたたち、しばらくは静かにしておいておくれ。これ以上やると、あたしがクビになっちまうよ」


 シャヒーン先生は怒られすぎて頭痛がするとぼやきながら、そう言っていた。

 どっちにしろ見張りがいて地下には入れないから、イーア達は地下の探索をいったん中止にした。


(モルドーに会えなかったのは残念だけど。グランドールの秘宝を白装束たちから守るには、この方がいいもんね)


 双竜模様の扉のカギとなる宝玉は、今もユウリが保管している。

 先生たちの見張りが強化されて、扉のカギはイーア達が持っているから、白装束の魔導士の一味がモルドーのいる地下迷宮に忍びこむことはできないだろう。

 

 それより問題は、先生たちの中にいるという白装束の共犯者だ。

 どんなにたずねても、マーカスは口を割らなかった。

 何度かたずねている内に、イーアはマーカスの様子から、指示役への尊敬と、それから、恐怖みたいなものを感じた。

 秘密をもらせば、マーカスの身が危なくなるのかもしれない。


 聞きだすのがむりなら見つけようと思って、イーアたちはマーカスを見張ることにした。

 だけど、マーカスはあの後しばらくケガで寝こんでいて、その後は冬休み前の試験準備期間になり、最近は勉強ばかりしていた。


 しかたがないのでイーア達も試験勉強をすることにした。

 この日、イーアは自習室でユウリに教えてもらいながらテスト勉強をしていた。

 グランドールはエリート学校なだけあって、試験前はほとんどの生徒が真剣に勉強をしている。

 そんな中、イーアは頭をかかえていた。


「ぜんっぜん、わからないよー!」


 バイトや犯人探しが忙しくて、まったく勉強していなかったから、イーアはどの科目もさっぱりわからなくなっていた。


「どこがわからない? もう一度説明するよ」


「ぜんぶ」


 といった会話をしている内に、ユウリは他の生徒にも勉強を教えてほしいと呼ばれて、行ってしまった。

 イーアはひとりでぼやき続けた。


「まいったよー。このままじゃ、赤点ばっかになりそうだよー」


 成績が悪すぎて退学になったらどうしよう……。

 イーアが心配になっていると、突然、どさっと、イーアの前に本が何冊も置かれた。


「エルツみたいな天才に教わったってむださ。凡人は凡人流の勉強をしなきゃね」


 イーアがふりかえると、そこには、なんとマーカスがいた。


「ほら、凡人向けの参考書だ。俺はもういらないから、君にあげるよ。せいぜい赤点にならないようにがんばればいいさ」


 そっぽを向いてそう言うと、マーカスはイーアの礼も聞かずに足早に歩きさっていった。


 イーアはマーカスの参考書を開いた。

 「よくわかる魔導語」とか「はじめての薬学」とか書いてある参考書は、教科書よりずっとわかりやすかった。

 しかも、参考書にはマーカスのきれいな字の書きこみがたくさんあって、それがとても役に立つ。

 ちょっとわからないなと思ったところには、大抵マーカスのメモが書いてあるのだ。


(わかる……。これなら、なんとか、わかる!)


 イーアが山積みの参考書で勉強を始めたところで、キャシーとアイシャが通りがかった。


「あれ? イーア、その参考書の山、どうしたの?」


「マーカスがくれたんだよ」


「マーカスが? あのマーカスが?」


 キャシーが信じられないと言った様子で聞き返し、アイシャがなぜだかうれしそうに笑いながら言った。


「ほらぁ~。うふふぅ~。だから、言ったとおりだよぉ~。うふふふぅ~」


「まさか。絶対にただのアイシャの妄想だと思ってたのに」


「実は最初からそうだったんだよぉ~。マーカスは~。うふふふぅ~」


 ふたりはよくわからない会話をしながら去って行った。



 そんなこんなであっというまに試験期間になり、そして、試験がすべて終わった。

 試験期間が終わるとすぐ、答案はどんどんと返された。


「先生たち、こんなにいそいで採点がんばらなくてもいいのにね」


 イーアは返ってきた薬学の答案用紙をながめながら、つぶやいた。

 オッペンもなげいた。


「ほんとだぜ。結果なんて知りたくねーよ。しばらく夢みさせてくれよ」


「あたしは、すぐ返してもらえるほうが安心できるかも」


 そう言うキャシーは、薬学のテストはしっかり92点をとっていた。


「オッペンは何点?」


 そうたずねながらキャシーはオッペンの答案を見て、あわてて叫んだ。


「オッペン、22点って、これ、完全に赤点じゃない! 赤点は来月から補習でしょ? で、その後、追試に受からないと、留年よ?」


「補習!? 留年!? やべぇ! まじかよ! ……補習がんばろうぜ、イーア」


 こっちを見てきたオッペンに、イーアは言った。


「わたし、赤点じゃないよ? ほら、45点」


 マーカスの参考書のおかげか、イーアは赤点の科目はひとつもなかった。赤点ギリギリの点数はあったけど。

 オッペンは叫んだ。


「この裏切り者ぉ! 補習は、おれだけかよ!」



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