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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
5章 白装束の共犯者

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69 犯人?

 翌日、シャヒーン先生の部屋。

 イーア達が昨日のことを報告をすると、シャヒーン先生は言った。


「階段下の入り口からも誰も出てこなかったよ。もちろん結界は閉じたままさ。念のため、あたし特製の蜘蛛の糸を張っておいたんだけどね。今朝確認したら糸は破られていなかったよ。昨晩から誰も出入りしてないってことさね」


「でも、おれらが見張ってたとこからも、誰も出てこなかったぜ?」


 そうオッペンが言い、ユウリは考えながら言った。


「だけど、ぼくらは朝まで見張っていたわけじゃないから。あの後誰か出ていった可能性はあるよ」


「今日、また地下に行ってみよ? なにか手がかりがあるかも」


 イーアがそう提案したところで、シャヒーン先生は言った。


「頼んだよ。あたしゃ、今日は会議でね。行けそうにないのさ。だけど全員出席しないといけない会議だから、会議中は教員は誰も地下をふらつけないはずだよ。今日は地下には誰もいないだろうね」



 イーア達はシャヒーン先生の部屋を出て、林の中の地下への入り口に向かった。

 地下に入ってすぐ、イーアはコプタンを呼んだ。


『わたしたちの他に地下に人がいないか探して。探してくれたら、今日はイナムの実をあげるよ』


 イーアは昼休みに拾っておいたイナムの実を持ってきていた。

 コプタン達はイナムの実を見て大興奮、『ヒャッハー! 臭い実だ!』『イェイイェイ! 臭い実臭い実!』と叫んだ後で、『巨人を見つけてくるよ!』と、走り去っていった。


 コプタンたちに頼みはしたものの、イーアは心の中では、どうせ誰も見つかるはずはない、と思っていた。

 だって、先生たちは会議中だ。


 むしろ今日は地下に人がいないことを確認してから、地下の探索をじっくりとするつもりだった。

 昨日は地下の地図を作成しただけで、何も見つけていないから。


 ところが、そんなに時間が経たないうちに、アプタンふたりが、目にもとまらぬ猛スピードで戻ってきた。


『いたいた。イェイ! 見つけたイェーイ!』

『いたよー! 巨人、いたよー!』


 イーアはびっくりして聞き返した。

 

『いたの!? どこに!?』


 おどるアプタン達に地図をさしだし、両手で持ってもらうと、昨日と同じく地下2階に人のマークが浮かんだ。


『どんな人だった?』 


 イーアがたずねると、アプタンのひとりは言った。


『とうめいだよ! イェイイェイ!』


『とうめい?』


 イーアは意味が分からなくて聞き返した。


『イェイ! とうめいだよ! 目には見えないよ!』

『とうめい巨人だよ! イェーイ!』


 イーアはとまどいながら、もう一度たずねた。


『目に見えないなら、人間じゃないってことだよね?』


 目に見えない人間なんていないはずだ。

 でも、アプタンたちは断言した。


『ここにいる巨人と同じだよ! イェイ!』

『見えなくたって臭いでわかるもん! とうめい巨人! イェーイ!』


 目には見えないけど人間と同じ臭いがするらしい。

 嗅覚がすぐれたアプタンが自信をもって言うなら、きっとまちがいないんだろう。

 アプタン達はおどりながら歌うように叫んだ。


『おくれ! おくれ! 臭い実! おくれ!』

『臭い実、臭い実、イェイイェイイェイ!』


 イーアはアプタンたちにイナムの実を渡して、それから、全員を帰還させた。

 考えこむイーアに、オッペンがたずねた。


「イーア。小人はなんつってたんだ?」


「地下に人がいるけど、とうめいで目に見えないって。でも、臭いはわたしたちと同じ人間だって」


「な、なんだよ、それ。おばけってことか?」


 オッペンはぶるっと震えた。

 そう言われると、イーアも背筋が凍るように感じた。

 たしかに、目には見えない人間といえば、幽霊がいる。……幽霊が本当に存在するなら。

 イーアはおばけにはあったことがないから、信じていない。だけど、この地下はいかにも亡霊が出そうな場所だ。


 ユウリが冷静につぶやいた。


「透明。どうりで、見張ってても見つけられなかったわけだ」


「なんで目に見えないのかな?」


 イーアがたずねると、ユウリは落ち着いた声で言った。


「魔法や魔法の道具で姿を消す方法はあるはずだよ。ものすごく高度な魔法だけど。それより、戻ろう。相手が目に見えないなら、気がつかないうちに遭遇してしまうかも」


 イーア達は、あわてて来た道を引き返して外に出た。

 外の草むらにでたところで、ユウリは言った。


「この入り口にトラップを張ろう。今日はそのために必要な物を用意してきたんだ」


 ユウリはまず入り口の地面に手を当て、呪文を唱えた。


「<堀土ボグ・ディ>、<湧水ル・ウィラ>」


 地面が少しへこみ、そこに水たまりができた。

 でも、地面には枯れ葉が多く、草が茂っているから、そこに水たまりができていることは、見た目ではよくわからない。


「犯人が出てきたら、たぶん、水たまりに落ちると思う。気がついて浮遊魔法を唱えないかぎり。でも、これだけじゃわからないから……」


 ユウリはカバンから魔法陣と呪文が書かれた呪符を取り出した。

 ユウリはその呪符を水たまりの中に置き、呪文を唱えた。水たまりが一瞬だけ赤い光を放った。


「これでよし。隠れて待とう。近くにいる必要はないから、見つからない場所にいよう」


 イーア達3人は少し離れた茂みの影で待った。

 やがて、日が暮れてきた頃。突然、バシャンと音がした。


「クソッ。なんだこの水たまり。ずっと晴れてたのになんで水たまりが……」


 そういまいましげにつぶやく声がして、草むらの中を何かが動いて行く音がした。

 音は遠くに去って行った。


 しばらくして、ユウリが言った。


「引っかかったはずだ。行こう」


 ユウリが呪文を唱えた。

 すると、草むらの中に赤い光が点々と見えた。


「成功。あれがターゲットの足跡だよ。追いかけよう」


 足跡が赤く光るのは、ユウリから5、6メートルくらいの範囲だけで、しかも呪文を唱えた数秒後には消えてしまう。

 でも、ユウリが呪文を唱えると、そのたびに足跡は赤く光ったから、追跡には困らない。

 足跡は昨日見つけた光る目印のルートをたどるように林の中を進んで行った。


 足跡を追いかけて行くと、やがてイーア達の寮が見えてきた。

 足跡は寮に向かってつづいていた。


(犯人はわたしたちの寮にいる?)


 イーア達は寮の中に入って、足跡を追って行った。

 足跡はいつもイーア達が使っている魔動昇降機エレベーターに続いていた。

 イーア達は1階ずつ降りて足跡がないか確認していった。


 足跡が赤く光ったのは、ユウリ達の部屋がある階だった。

 足跡はお風呂場に続いていた。

 ユウリはつぶやいた。


「洗い流すと魔法の効果は消えちゃうな」


「風呂場に突入してとっ捕まえようぜ?」


 オッペンはそう言った。

 だけど、ユウリが返事をする前に、お風呂場からカバンとぬれた靴をもって出てきた不審な生徒がいた。


「なんだよ。3人バカ面ひっさげて、アホみたいにぼけーっと何見てるんだ?」


 その生徒は、焦りをかくすためかいつもより一層バカにした声で言い放った。

 その生徒は、マーカスだった。


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