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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
4章 学園祭

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51 医務室

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  ・

  ・


 どこかから悲しそうな声が聞こえた。


「ぼくがいっしょにいれば。ぼくがコンテストなんかに出なければ。ぼくがイーアとずっといっしょにいれば……」


 ユウリの声だった。

 ユウリのとても悲しそうな悔しそうな声が聞こえる。

 イーアはゆっくりと目を開けた。


 イーアは見たことのない部屋の中で寝ていた。

 毛布の横に、うつむいたユウリの頭があった。


(ユウリ、どうしたんだろ……)


 とても落ちこんでいる様子のユウリをなぐさめようと思って、イーアは声をかけた。


「ユウリ?」


 イーアがつぶやくと、ユウリはがばっと顔をあげた。


「イーア! よかった!」


 その様子を見て、イーアは気が付いた。

 ユウリが落ちこんでいたのは、イーアの心配をしていたからだった。

 イーアは自分が地下で白装束と戦って、その後で気絶したらしいことを思い出した。


「ここは……?」


 地下ではない。暗い地下とは対照的に、まぶしすぎるくらいに明るい部屋だ。

 赤い目でユウリは言った。


「医務室だよ。イーア達が地下で強盗に襲われて倒れていたところを、先生たちが救出してくれたんだ。先生たちは、イーアの方はだいじょうぶだと言ってたけど。目を覚まさないから心配で……」


 心配してユウリはずっとここにいてくれたようだ。


「うん。わたしはだいじょうぶだよ」


 イーアは体を起こした。ものすごい疲労感があるけど、今は特に痛いところもなく、体も普通に動いた。


 医務室にはベッドが並んでいた。

 隣のベッドの横には、背中を丸めた小太りの小柄な中年女性が座っていた。下町や田舎町のどこにでもいそうな庶民っぽさが漂うおばさんだ。おばさんは、ベッドに寝ている誰かの手を握って、小声で何かを語りかけていた。


 あのベッドで眠っているのは、たぶんオッペンだ。

 あのおばさんは、きっと、オッペンのお母さんだろう。

 イーアのいる場所からオッペンの様子はよく見えなかった。

 オッペンは、どうなったんだろう。ガリは、すでに手遅れかもしれないと言ってた……。

 不安で心臓の音が早くなっていく中、イーアは小声でユウリにたずねた。


「オッペンは?」


 ユウリはうなずき小声でささやき返した。


「オッペンは命にかかわる状態だったけど、危ない状態は抜けたって」


 イーアはほっとしてため息をついた。


「よかった……。ほんとに、よかった……」


 正直、オッペンはすでに死んでしまったんじゃないかと、戦闘中から何度も思っていた。でも、なんとかオッペンの命は救えたようだ。

 ユウリは説明を続けた。


「シャヒーン先生は発見されてすぐ意識が戻って、今はもう元気そうだよ。何が起こったのかシャヒーン先生が他の先生たちに説明して、それで、学園祭は途中で中止になったんだ。先生たちは強盗を探したけど、その時にはもう地下には誰もいなかったらしい」


「強盗……? 何が盗まれたの?」


 そういえば、シャヒーン先生は侵入者の白装束のことを強盗だと言っていた。本当に強盗なのかはわからないけど。

 ユウリは言った。


「地下の保管庫があけられていて、<生命の霊薬>っていうものが2本なくなってたって。他は何も盗まれていないらしいよ」


 <生命の霊薬>が2つ、それは、ガリが持ってきた分だ。ということは、何も盗まれていない。

 結局、白装束の目的は何だったんだろう。

 イーア達に見つかってガリに倒されたから、何も盗まず逃げ帰ったのだろうか。

 イーアが考えていると、ユウリはぽつりと恐ろしいことを言った。


「あとで先生たちがイーアにも話を聞くつもりだと言っていたよ。強盗のことと、あと、イーアが霊薬の空きビンを持っていたから、それについて」


「げっ……!」


 ちょっと面倒なことになりそうだ。


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