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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
4章 学園祭

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43 学園祭でぶらぶら

 イーア達はお化け屋敷が行われる大教室に向かった。

 歩いている内に、イーアの心臓の鼓動はおだやかになり恐怖感はうすれていった。

 学校の中は平和で明るいお祭りの雰囲気でいっぱいだ。

 イーアも学園祭の明るい空気で、だんだんまたウキウキした気分になってきた。

 (よーし。学園祭を楽しむぞー!)と心の中でイーアは叫んだ。

 ところが、お化け屋敷前の廊下に到着すると。そこにはすでに長蛇の列ができていた。


「うわっ、すげぇ列!」


 オッペンは叫んで立ちどまった。列にはグランドールの生徒だけじゃなくて、学外から来たお客さんもたくさん並んでいる。

 イーアは長い長い列を見ながらつぶやいた。


「まだ始まってないのに。これじゃ、いつ順番になるかわからないね」


「また後でこようか?」


 ユウリの提案に、イーアはうなずいた。


「うん。ユウリのコンテストが終わった後で、またこよう」


 お化け屋敷には後でまた来ることにして、イーア達は一度校舎の外に出て、出店の並ぶ中庭を歩いて行った。

 中庭にはテントが並んでいて、生徒達が色んなお店を開いている。

 ゲームをするお店もあれば、食べ物やちょっとした呪符や薬を売っているお店もある。


「来年は、わたしたちも何かやりたいね」


 そう言いながらあたりをみていたイーアは、金色の巻き髪の少女がきょろきょろしながらうろうろしているのに気が付いた。


「あ、ローレインさんだ」


「ローレイン? だれだ?」


 オッペンはローレインのことを知らないらしい。イーアは教えてあげた。


「ケイニス君の知り合いの貴族クラスの子だよ」


 ユウリはローレインの様子を見て言った。


「誰か探しているのかな?」


「お友達とはぐれちゃったのかもね」


 ローレインはイーア達に気がつく様子もなく去って行き、イーア達はそのままぶらぶらと出店を見ながら過ごした。

 おもしろいお店がたくさんあったので、あっという間に時間はすぎていき、11時の鐘がなった。

 イーアはふと気がついてユウリにたずねた。


「ユウリのコンテストって何時からだっけ?」


「コンテスト自体は13時半開始だけど、出場者は12時半にグラウンド集合なんだ」


 自然魔法のコンテストは校舎からちょっと離れたところにあるグラウンドで行われる。

 イーアとオッペンはもちろんユウリの応援に行くつもりだった。

 だけど、出場者が12時半集合ってことは、ユウリはコンテストまであと1時間ちょっとしか時間がない。


「じゃ、そろそろお昼ご飯にする?」


「そういえば、そうだね。ぼくはもう食べないといけないかも。……あ、師匠だ」


 ユウリはホーヘンハインの師匠を見つけたらしく、小走りに人混みの中を進んでいった。

 水色のローブを着た魔導士が、走ってくるユウリを見つけて笑顔を浮かべて小さく手を振っていた。

 あれがユウリの師匠らしい。

 イーアはユウリの師匠をはじめて見た。


「魔導士のローブって、あんな色もあるんだね」


 ユウリの師匠がまとっているのは美しい空のような色のローブだ。以前ユウリを迎えに来た馬車もあんな色だったから、あれがホーヘンハインのカラーなのかもしれない。

 ウェルグァンダルは何かと黒くて暗いから、イーアはちょっとうらやましく思った。

 オッペンがつぶやいた。


「あれがユウリの師匠か? 貴族っぽいな」


「うん……」


 オッペンの言う通り、ユウリの師匠は魔導士のローブを着ていても貴族っぽい上品なオーラがでていた。

 金色のきれいな長い髪の毛を後ろで結んでいて、色白で端正な顔立ちだ。絵画の中にでてきそうに美しい。

 その師匠と一緒に立っていると、ユウリまで貴族の男の子のように見えてくる。髪の色や瞳の色が似ているせいもあって、ユウリとユウリの師匠はまるで年の離れた兄弟のように見える。

 ふたりが話をしている光景は、なんだかそこだけ別世界のようで、まるでユウリはもうイーアとは違う世界にいるみたいに感じた。


 ユウリは人混みをかきわけ急ぎ足で戻ってくると、イーアとオッペンに言った。


「師匠がコンテストを見に来てくれたんだ。それで、いっしょにご飯を食べようって言ってくれたから……」


 ユウリは師匠と食事にいくつもりみたいだ。

 正直にいうと、イーアは嫌だった。ユウリの師匠にユウリを取られてしまうみたいで。

 イーアはこのままどんどんとユウリが手の届かないところに奪い去られていってしまうような気がして、いやだった。

 でも、「行っちゃヤダ」なんて、そんな小さなこどもみたいなわがままを言うわけにはいかない。

 イーアはうなずいて小さく手を振った。


「うん。じゃ、またコンテストのあとでね」


 ユウリが師匠といっしょに去って行くのを見送った後、オッペンはイーアにたずねた。

 

「おれらはどうする? おれらもなんか食うか?」


「そうだね。時間はまだまだあるけど。ちょっとお腹すいてきたかも」


 その時、「イーア!」と呼ぶ声が聞こえた。

 声の方向を探すと、キャシーとアイシャが手を振りながらこっちにむかって歩いてくるのが見えた。イーアも手を振り返した。

 ちかくまで来ると、アイシャがのんびりとした声で言った。


「探してたんだよぉ。イーア。いっしょにまわろぉ」


「うん。そうしよ」


 キャシーはイーアに学園祭の冊子を見せながら言った。


「ほら、すごくかわいいカフェがあるの。調理部が魔法のお菓子を出してくれるんだって。さっきお店の前を通ってきたんだけど、ここは絶対に行かなきゃ!」


 魔法のお菓子にひかれて、イーアは即答した。


「じゃ、そこに行こう!」


「あとねぇ、占術部の恋占いだよぉ。これは毎年外せないんだよぉ」


 アイシャがそう言い、キャシーも言った。


「恋占いはグランドールの学園祭名物で、当たるって有名なの」


 そこで、これまで黙っていたオッペンがうんざりしたような声で言った。


「うわっ。ありえねぇ。かわいいカフェと恋占い?」


 キャシーがオッペンを睨みつけた。


「なによ。何か文句ある?」


 オッペンはしかめっ面で文句を言った。


「ありまくりだぜ。んな、ふわふわ女子っぽいとこ、行ってられっかよ。おれは別行動だ。じゃあな、イーア。1時半にグラウンドで会おうぜ」


 オッペンはそう言いながら、もう片手を上げて歩き去ろうとしていた。


「うん。じゃ、またね」


 オッペンの後ろ姿を見送り、イーアはキャシー達と、まずは調理部のカフェに行くことにした。


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