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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
3章 しばし平和な学園生活

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38 ドルボッジ:試合終了!

 こうして、暴風吹き荒れ、大樹の枝が踊り狂い、人とサルが飛びまわるドルボッジが続いた。

 そして、得点は9対7になった。イーア達のボールになった。

 次の攻撃で点をとれば、勝利が決まる。


 だけど、イーアはその時、ものすごい疲労を感じていた。


「う……ん……。この、感覚って……」


 体の中が空っぽになった感じがする。頭がクラクラする。

 イーアは悟った。

 この感覚は、魔力切れだ。

 こんなになるまで魔法を使ったことがないから、ここまでひどい感じは初めてだけど。


『チルチル?』


 チルランが心配そうにイーアの傍で点滅していた。

 呼び出したチルランが少しずつ魔力の回復をしてくれていた。

 でも、これ以上、オクスバーンとモキュッチの召喚状態を維持することはできない。


 イーアは心の中で魔力消費の計算をしなかったことを反省した。

 そもそも、自分にどれくらい魔力があるのかもオクスバーンやモキュッチの召喚にどれくらい魔力が必要なのかも、まったくわかっていなかった。


 イーアは知った。

 召喚のタイミング、組み合わせ、魔力の量の把握と時間の計算……もしも召喚術で戦うなら、考えるべきことがたくさんある。

 召喚術は普通の魔法よりクセが強くて複雑だ。


『そろそろわしは帰る時間かな? それじゃ、人の子どもたち。楽しかったぞぉー』


『キュキュ!』


 オクスバーンとモキュッチはそう言って、満足げに帰っていった。

 オッペンが叫んだ。


「げっ、壁が消えちまった!」


 いままでずっとオッペンとイーアの前で壁のようにそびえ立ってボールを防いでくれていたオクスバーンがいなくなると、急に心細くなる。

 でも、ボールを手に持ち、ユウリが落ち着いた声で言った。


「だいじょうぶだよ。イーアの召喚のおかげで、残りはあと一点。次の攻撃で終わらせる」


 ユウリがマーカスにボールをあてれば、それでゲーム終了。イーア達のチームの勝ちだ。

 オッペンはユウリに声援を送った。


「そうだな。よっしゃ! 勝とうぜ!」


 その時、「マーカスを囲め!」というダモンの声が響いた。ユウリはマーカスを狙うだろうと、ダモンたちも考えていた。

 ダモン達3人がマーカスの周囲を三角形をつくるように完全に囲んだ。真ん中のマーカスは棒立ちだけど、この状態でマーカスにぶつけるのは難しい。


「げっ。マーカスが完全に守られちまった」


 うろたえるオッペンにユウリは冷静に言った。


「だいじょうぶ。想定内だよ。これで、先輩達はボールを避けることができない。次は、あてるか取られるかのどっちかだ」


 ユウリは風で作った大砲の筒にボールを入れ、小声で呪文を唱えた。

 敵陣に霧がたちこめはじめた。

 ガボー、グドロの声が聞こえた。

 

「また、めくらましなんだな」

「どうする? あと1点で負けちまうぜ?」


 続いて、ダモンの声が聞こえた。


「試合終了には早いな。未経験者の1年を相手にしている以上、こっちは移動魔法以外使わないつもりだったが。これ以上、意地を張っていられないか。ガボー」


「わかったんだな。プライドを曲げたとしても、ドルボッジ部として負けるわけにはいかないんだな」


 そして次の瞬間、ガボーが大声で吼えるように叫んだ。

 聞き取れなかったけど、それは何かの呪文だったようだ。

 敵の陣地にたちこめていた霧が晴れた。

 ガボーが霧を吹き飛ばしてしまった。


「先輩達、あんな魔法使えたのかよ!」


 オッペンが叫んだその時。「<風砲弾>」というユウリの落ち着いた声が響き、風でできた大砲から、ボールが発射された。

 ボールはダモンめがけて高速で飛んでいく。


「オゴン!」


 ダモンがあごの前でボールをとめた、と思った瞬間、そのボールは、破裂した。

 それは、ボールじゃなかった。ユウリが作ったボールの大きさの水の塊だった。

 そして、次の瞬間、水塊の後ろに続いて発射されていた本物のボールが、間髪入れずにダモンの額にぶつかった。

 ボールは大きく跳ね返った。

 ドルボッジ場全体に、長いホイッスルが響き渡った。


《ゲームセット!》


 ドルボッジ・コートのアナウンスが響き、オッペンが跳び上りながらガッツポーズをして叫んだ。


「やった! 勝ったぜ!」


「勝った!」


 イーアも叫んだ。ユウリは冷静なままで、何も言わずにただうなずいた。


「やられたな。まさかダミーを用意するとは。おもわず反応してしまった」


 水びたしの顔を腕でぬぐいながら、ダモンはいさぎよく負けを認めた。

 グドロはひざをつき、ぼうぜんとした表情でつぶやいた。


「まさか、俺達が、素人の1年相手に……」


 ガボーは両手を床についてうつむいたまま、うめくように言った。


「信じられないんだな。これは、きっと、悪夢なんだな……」


 マーカスははれあがった顔で、無言で歯ぎしりをしていた。

 

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