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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
3章 しばし平和な学園生活

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36 ドルボッジ:さらなるハンデ

 オクスバーンは長い枝を振りながら、イーアに話しかけた。


『ちょっと見ない間にずいぶん大きくなったのぉ。イーア。ほんとに人間は、生まれたと思ったら瞬きする間に大人になって年をとって死んでしまうわい。ところで、ここはどこじゃ? せまくるしいところじゃのう』


 精霊語なので、イーア以外の人達はオクスバーンがなんと言ったかわからなかっただろう。

 ドルボッジ場はオクスバーンがあらわれるまでは広く感じられたけど、オクスバーンにとっては、ちょっとせまそうだ。


『ここは、ボール遊びをするとこ。オクスバーン、飛んでくるボールをとめて、相手にボールをぶつけてほしいの』


 オクスバーンにドルボッジがどういうものか説明するのはちょっと大変かも、と思ったけど。


『ふむふむ。ボールのあてっこ遊びじゃな。子どもたちはみんな、わしといっしょに遊びたいんじゃな。しかたないのぉ』


 オクスバーンはすぐに理解して枝をわさわさとうれしそうに動かした。

 オクスバーンの幹の横から顔を出して敵陣を観察していたオッペンが言った。


「ダモン先輩がまた打ちこんでくるぜ!」


「少しはおもしろくなってきたな。オルルゴ……」


 そう言って、ダモンはボールを、イーア達のいる方ではなく壁際にむかって飛ばした。

 ボールはオクスバーンを超えたあたりのところで、イーア達のいる方めがけて曲がった。

 ダモンのコントロールでボールが自在に曲がって襲ってくる。


『ほほぉ! では行くぞい!』


 オクスバーンの太い枝がムチのようにしなって動き、イーアの方へ飛んでくるボールを打ち返した。しかも、オクスバーンは一度打ち返したボールを即座に別の枝でさらに打ち、ボールを敵陣に打ちこんだ。


 オクスバーンが打ち返したボールはすごい勢いでダモンの方へ飛んでいった。

 だけど、ダモンは瞬時に移動魔法で横に動いてボールをよけ、そして跳ねかえったボールを手元に引き寄せた。

 ダモンは口笛を吹いた。


「今のは、危なかった。とんでもない木だな。さぁて、そろそろ本気を出すか」


 ダモンは空中に浮かんだ。浮遊魔法だ。


「ようやく、避ける必要がでてきそうだぜ」


 そう言って、グドロとガボーも空中に浮かんだ。

 オッペンが感動したように言った。


「すげぇ、みんな浮いてるぜ?」


 得点ボードの横で腕組みをして見物していたマーカスが、バカにしたように言った。


「当たり前だろ? プロのドルボッジじゃ、プレイヤーはみんな空中を飛び回るんだ。君達3人、本当にドルボッジを見たことがないんだな。そんなド底辺が存在するなんて、今まで知らなかったよ」


 イーア達3人は憮然として黙りこんだ。

 そこで、ガボーがオクスバーンを見ながら、ぶつぶつと文句を言った。


「にしてもだな。たしかになんの魔法を使ってもいいって言ったけども。これじゃ、プレイヤーがひとり増えた状態なんだな。なんかフェアじゃないんだな」


 オクスバーンはガボーの言葉を理解していないはずだ。だけど、何を思ったか、オクスバーンは不意にマーカスの方へ枝を伸ばした。


『ほれほれ、そこで独りぼっちで遠巻きに見ておる子よ。えんりょせんで、おぬしも遊びに加わるが良い』

 

 オクスバーンは、マーカスのことをいっしょに遊びたいのに遊びに入れないシャイな子だと誤解して、親切にも仲間に入れようとしているみたいだ。

 オクスバーンは枝でマーカスの胴体を掴んでもちあげた。


「おい! やめろ! このモンスター!」


 マーカスは必死に抵抗した。だけど、オクスバーンのおせっかいの前では無駄だった。


『さぁ、みんなで楽しく遊ぶのじゃ!』


 オクスバーンはマーカスを遠慮なくダモンたちの陣地の中に投げ入れた。

 オッペンがうれしそうに叫んだ。


「そうだ! マーカスも加われ! これで人数があうぜ! マーカスのやつ、ボコボコにしてやらぁ!」


 ドルボッジ場にホイッスルのような音が響き、その後にドルボッジ・コートの音声が響いた。


《プレイ中断。エリアA、プレイヤーが加入しました。プレイヤーは4人となります。エリアBプレイヤーは3人となります。プレイヤーの人数が異なります。このままプレイを続行しますか?》


 グドロは、空中からマーカスを見下ろして言った。


「こいつが加わったら、さらなるハンデじゃねーか。マーカスは何もできねぇだろ」


 ガボーはさらに文句を言った。


「あの木にあててもポイントが入らないんだな。でもマーカスにあたったらポイント入るんだな。これじゃ断然不利なんだな!」


 たしかに、オクスバーンはプレイヤー認定されていないから当ててもポイントが入らないけど、マーカスにあてればポイントが入る。

 マーカスは良い的になるから、あきらかにマーカスが入った方が不利だ。

 だけど、ダモンはむしろうれしそうに笑った。


「いいさ。これくらいハンデがある方が、おもしろい。召喚OK、こっちにマーカス追加でやってやる。ドルボッジ・コート! プレイ続行だ!」


《承知しました。プレイ続行》


 再び笛が鳴った。

 そして、ゲームは再開された。


 勝つために、当然、ユウリはマーカスを狙い打ちにした。

 先輩達はオゴンが使える上に常に空中を飛び回っているから、ボールをあてるのは至難の業だ。

 でも、マーカスは飛び回れるほど移動魔法を使いこなせない。飛んでくるボールにオゴンを使うこともできない。だから、ただのサンドバッグ状態だ。


 みぞおちにボールをあてられ床にしゃがみこんだマーカスは、苦しそうな表情で床をたたいて叫んだ。


「クソッ! 俺ばかり狙うなんて、卑怯だぞ!」


 ユウリは冷淡に言った。


「勝負だからね。この試合をはじめたのは君なんだ。死ぬほど後悔して、これからは二度とバカなことをしないようにしなよ」


 ボコボコにされているマーカスを見て、イーアはちょっと可哀そうな気もしたけど、ユウリを止める気にはならなかった。

 こうして、オクスバーンとマーカスが試合に加わってからは、一気にイーアのチームが優位にたった。


 3発マーカスに連続して当たったあと、ダモンたちはマーカス狙いのボールを止めようとした。

 だけど、その頃にはユウリは、<風砲弾>の発射場所を自在に変えるだけじゃなく、回転をかけて変化球を撃てるようになっていたので、何度目かにはボールはダモン達の防御をかいくぐってマーカスに命中した。

 そして、得点ボードを見てオッペンが叫んだ。


「よっしゃ! これで5対5だ! 追いついたぜ!」


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