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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
3章 しばし平和な学園生活

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33 試合開始!

 強そうな上級生3人の紹介を終えると、マーカスはニタニタ笑いながら言った。


「これから先輩たちがドルボッジで君達の性根を叩き直してくださるんだ。感謝しろよ」


 それを聞いて、イーアは思わず聞き返した。


「ドルボッジ? ケンカじゃないの?」


 イーアはてっきり、マーカスは強そうな先輩達を味方にして殴り合いのケンカをするつもりなんだと思っていた。それで、「死ぬほど後悔させる」くらいにイーア達をボコボコにするつもりなんだと思っていた。

 だから、戦う気満々だったのに。ドルボッジ? 


 マーカスは肩をすくめた。


「これだから、野蛮人は。殴り合いのケンカや魔法を使った決闘が校則で禁止されていることも知らないのか? バレたら全員停学になるようなバカなこと、するわけないだろ? 代わりに、もっといいことをするのさ」


 校則でケンカが禁止されていること……たしかにイーアは知らなかった。そもそも校則なんて見たこともない。

 マーカスはニヤニヤと笑いながら、上級生達の方を見て言った。


「ダモン先輩。こいつら、ドルボッジのルールも知らないんです。教えてやってください」


 赤ら顔のダモンは笑い、ボールを手に説明をした。


「ルールは簡単。そのセンターラインの線を挟んで向かい合い、このボールをぶつけあうだけだ。敵にボールをぶつけた回数で点数をつけ、先に10点獲得したチームがゲームをとる」


「それだけ?」


 イーアはまた、思わず聞き返した。

 ただのボール当てゲームに聞こえる。これでどうやって「死ぬほど後悔する」ことになるのだろう?

 ダモンはニヤリと笑って言った。


「それだけだ。が、言い忘れたが、敗北条件がもう一つある。プレイヤーの誰かがKOされて立ち上がれなくなったらその時点で負けだ。お前達は最後まで立っていられるかな?」


(KO? 立ってられない?)


 なんだか、不気味な話だ。ダモンは言った。


「さぁ、ドルボッジで勝負しろ。普通は1ゲーム10点先取で何セットかやるんだが、今日は1ゲームで十分だ。おまえらが勝てば、俺達が土下座して謝ってやる。やらないっていうなら、残り10本、そのチビに叩き込んでやるぞ」


 ダモンの指の上のボールがクルクルと回転を始め、そして、ダモンは全く動いていないように見えたのに、ボールはいきなり恐ろしい高速でオッペンの方へ飛んでいった。

 ボールはオッペンのすぐそばの床に激しい音をたてて衝突した。

 イーアは理解した。

 あのボールがぶつかれば、殴られるのと同じようなダメージを受けるだろう。あごに当たれば、一発ノックアウトだってありえる。


 ボールは床にぶつかった後、後ろの壁にぶつかり、その後、吸い込まれるようにダモンの指の上へと飛んでもどっていった。

 ダモンはにやりと笑った。


「今は、わざと外してやった。次は外さない。さぁ、どうする? おそれをなして、しっぽをまいて逃げるか?」


 ユウリは、(挑発なんかにのらずにオッペンを連れて帰ろう)と冷静な目でイーアに告げていた。ドルボッジ場の真ん中にいるオッペンを救出して逃げるのも大変だろうけど、ユウリならできるかもしれない。

 だけど、肝心のオッペンは(試合、やってやろうぜ!)と熱い目でイーアに訴えかけていた。それに、イーアも逃げたくなかった。

 イーアは力強くうなずいた。


「勝負!」


 オッペンは叫んだ。


「よっしゃ! 勝って土下座させてやるぜ!」


 ユウリはため息をついてつぶやいた。


「しかたないな」


 ダモンはうれしそうにニヤリと笑った。


「そうこなくっちゃな。とっとと、そっちの陣地に入りな。マーカス。扉を閉めろ!」


 マーカスがドルボッジ場の重たい鉄の扉を閉めた。

 イーアとユウリはオッペンのいる陣地の方へ入った。


「オッペン、だいじょうぶ? 回復する?」


 オッペンは鼻血を手の甲でぬぐいながら元気よく言った。


「ぜんっぜん、へーきだぜ? こんなん蚊に刺されたみてーなもんだ。ボールは10発全部おれが当たってやるよ!」


「オッペン、10発当たったら負けだよ。ボールはキャッチするか、よけなきゃ」


 イーアが指摘すると、オッペンはまちがいに気が付いて「お、おう」と言って頭をかいた。

 ダモンが大声で言った。


「ドルボッジ・コート、ゲーム開始準備!」


 ドルボッジ場内に引かれたラインから光が立ち上り、光の壁のようなものが出現した。

 光の壁はイーア達の陣地と相手の陣地の四方と天井を囲んでいる。

 ガボーが説明した。


「周囲の壁は、ボールをはね返す壁なんだな。人は通れるけどボールははね返されるんだな。センターラインだけは、ボールは通過できるけど人は通れない壁なんだな」


 センターラインを挟んで、イーア達の陣地とダモン達の陣地は、床がうっすら色分けされていた。

 ドルボッジ場の天井の方から声が聞こえた。


《ゲーム開始の準備をします。エリアA、プレイヤー3名。エリアB、プレイヤー3名。以上、3対3でゲームを開始しますか?》


 このドルボッジ場は音声でやりとりできるアシスタント機能付きらしい。

 思わずイーアは感心してしまった。


「すごいね。ただの体育館じゃないんだね」


 ユウリがうなずき、いつもどおり冷静な声で言った。


「こんなところにも魔導技術が使われているんだね。でも、イーア、今は試合に集中しよう。このスポーツ、かなり危険そうだ」


 ダモンがドルボッジ場へ返事をした。


「ドルボッジ・コート。それでOKだ。オプションルールなし、フィールド条件なし。禁止魔法なし。1ゲーム先取」


《オプションルールなし、フィールド条件なし、禁止魔法なし、1ゲーム先取のゲームを開始します。よろしいですか?》


「OK」


《それでは、ゲームを開始します》


 ドルボッジ場内に笛のような音が響いた。


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