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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
3章 しばし平和な学園生活

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32 マーカスの逆恨み

 オッペンを見捨てるわけにはいかない。

 イーアとユウリは、オッペンと上級生が待っているドルボッジ場へむかった。

 本当はマーカスと絶交したい気分だったけど、イーア達はドルボッジ場の場所を知らないから、マーカスに案内させた。

 イーアは歩きながら小声でユウリにたずねた。


「ドルボッジ場ってどんなとこ?」


 ユウリが答える前に、マーカスがイーアの声を聞きつけて、バカにしたように言った。


「ドルボッジをする場所に決まってるだろ。君はドルボッジも知らないのか? これだからオームの野蛮人は。ドルボッジは移動魔法が必須だから1年はできないけどね。帝都じゃ大人気のスポーツだよ」


 イーアとユウリは、しかめっ面になった。

 オームではそんなスポーツは行われていないから、ドルボッジがなんだかさっぱりわからない。


 ドルボッジ場はグランドールの本校舎から離れた林の中にあった。


「ほら、あれがドルボッジ場だ」


 マーカスが指さした建物は、4階建てくらいの高さで、外側はレンガの壁でできていて、とても頑丈そうだ。

 イーアはドルボッジ場へと走っていった。ドルボッジ場の金属製の扉は半分開いており、イーアはそこから中に飛びこんだ。内部は床に線が引かれた体育館のような所だった。

 天井が高く屋根のところまで一つの空間になっている。2階と3階に当たる部分には観客席みたいな部分があった。


 ドルボッジ場の中に、昼休みケンカになりかけた3人のマッチョな上級生がいた。3人は半袖半ズボンの何かのユニフォームみたいな服を着ていた。

 そして、オッペンが床に倒れていた。 

 

「オッペン! だいじょうぶ!?」


 オッペンはイーアの声に反応して振り返った。オッペンの顔はひどく殴られたように赤くなっていて鼻血が出ている。


「おう……なんともねぇ、ちょっとボールをとりそこねただけだ」


 なんともなくは見えない、ひどい顔だ。

 イーア達に遅れて到着したマーカスが、ドルボッジ場に入るなり大声で言った。


「先輩、こいつら、また先輩たちの悪口を言いまくってましたよ。ブサイクすぎだの、脳みそまで筋肉なバカだの。今日はずっと悪口を言い続けてます」


 イーアは驚きすぎて、とっさに何も言えなかった。

 イーアもユウリも、そんなことは言っていない。

 いかつい上級生の3人が口々に言った。


「とことん生意気な一年どもだ」

「礼儀ってものを教えてやるんだな!」

「その根性叩き直してるぜ!」


 上級生たちはマーカスの言うことを信じて、怒っている。

 イーアが「そんなこと言ってない!」と抗議しようとしたところで、先にオッペンが叫んだ。


「ぜんぶマーカスの作り話だって言ってるだろ! おれはムキムキバカ面トリオとしか言ってねぇって!」


 イーアは心の中で叫んだ。


(オッペン! ムキムキバカ面トリオは十分悪口だよ!)


 ユウリがため息をついた。


「どうせぼくらが何を言っても、先輩達はマーカスの言うことを信じるだろうな」


 マーカスは笑いながら言った。


「もちろんさ。俺は先輩たちと仲がいいんだ。お前達の悪い所は前からたくさん話してある」


 マーカスはイーア達を陥れるためのウソを以前から先輩たちに吹きこんでいたらしい。

 なんでそんなことをするのか理解できず、イーアは困惑した。

 マーカスは続けて言った。


「君達に俺を笑いものにしたことを死ぬほど後悔させてやる。今すぐ泣いて謝れば、先輩たちを説得して許してやってもいいけどな」


 イーアはマーカスが何を言っているのかすぐには理解できなかった。

 ユウリはうんざりした表情で言った。


「ぼくは君が勝手に笑いものになった件しか知らないよ。召喚獣は勝手に暴走したんだ。イーアのせいじゃない。それは逆恨みだよ。そんなくだらない逆恨みで、先輩達にでたらめを吹きこんでぼくらに制裁を加えさせようと企むなんて」


 それを聞いて、イーアは思い出した。


「ひょっとして、召喚術の授業のコプタンのこと? あれは、オッペンとユウリは関係ないよ! わたしの召喚失敗は、たしかに悪かったけど。でも、あれは、わざとじゃないんだよ」


 オッペンも叫んだ。


「そうだぜ。イーアは全然悪くねーぞ。マーカスが勝手に鼻に子豚いれてただけだろ。それに、どっちにしろ俺は関係ないぞ!」


 でも、マーカスは額に青筋をたてて怒鳴った。


「わざとじゃない? どうせ、わざとじゃないのにいつも俺を陥れて笑いものにするのが君のクセなんだろ? イーア。それに、俺を一番バカにしてあざけり笑ったのが、オッペンだ! 俺はオッペンが一番許せないんだ! 百歩ゆずってイーアのことは許してやってもいいさ。でも、お前だけは絶対に許せない! オッペン! エルツは……どうせ、来なくていいって言ったって、イーアについてくるんだろ?」


「もちろん。君のバカらしい逆恨みからイーアを守るためにね」


 全く落ち度のないユウリは、落ち着いた声でそう言った。

 マーカスはそっぽを向いて言った。


「ふん。まぁ、それでも、心の広い俺は、許してやってもいいけどな。君達が俺に心から謝罪して感謝するっていうなら、今日のところはゆるしてやる」


 (コプタン事件は最初から謝るつもりだったのに。そういう言い方されると謝りたくなくなるよ)と思いながら、イーアは言った。


「わたしはあやまってもいいけど。でも、マーカスとそっちの三人も、ユウリに謝ってよ。昼休み、ユウリをバカにしたこと」


 正直、今のイーアはあまりあやまりたくない。あの授業のすぐ後は、イーアはマーカスに申し訳なく思っていたけど。今はユウリへの悪口とオッペンにしたことのせいで、マーカスへの怒りが申し訳なさなんて吹き飛ばしてしまっていた。


「はぁ? なんで、俺がエルツに謝らなきゃいけないんだ」


 マーカスはそう言って顔をゆがめた。

 イーアはきっぱり宣言した。


「マーカス達が謝らないなら、わたしも謝らない」


 マーカスは顔を赤くして怒り、そっぽを向いた。


「フンッ。世界が滅んだって俺はエルツにだけは頭をさげるもんか!」


「交渉決裂だな!」


 オッペンが元気よくそう言った。まるで、オッペンは交渉決裂を望んでいたみたいに。

 マーカスはゆがんだ顔で言った。


「それじゃあ、君たちは死ぬほど後悔するがいい。さぁ、君たちに俺が敬愛する先輩たちを紹介してあげよう。あちらがダモン先輩。ドルボッジ部の部長だ」


 ダモンは角ばった顔の赤ら顔で、直径20センチくらいのボールをひとさし指の上に浮かべていた。ボールを移動魔法で浮遊させているようだ。ダモンは身長も高くて肩幅が広くて、その腕はイーアの腕数本分の太さがありそうだ。


「真ん中にいるのがガボー先輩。副部長だ」


 ガボーは3人の中では一番背が低いけど一番頭が大きい。どっしりした体形だ。


「グドロ先輩だ。エースだ」


 グドロは唇がとても分厚い。身長は3人の中では真ん中だけど、逆三角形な体型で筋肉がとても大きくくっきりしている。 

 3人とも、たしかに決して美少年とはいえない顔をしている。

 そして、十代とは思えない筋肉量のマッチョっぷりで、とても強そうだった。


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