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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
3章 しばし平和な学園生活

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25 ガネンの森の仲間たち

 ティトは考えこむように首をかしげながら、ガネンの森の精霊について説明をはじめた。


『ガネンの森で戦えそうなのといえば……オクスバーンのじぃさんはでかいから、盾につかえるかもしれないな。でかすぎるから、ここでは呼べないけど』


 イーアは『友契の書』をペラペラとめくって、オクスバーンを探した。


『オクスバーン……あっにゃ!』


 『太古の霊樹オクスバーン』のページがあった。その絵を見て、イーアは昔、オクスバーンの大木のふもとで遊んでいたことをなんとなく思い出した。


『うふふ。なつかしーにゃー』


 イーアが懐かしがっていると、ティトは言った。


『チルラン、タムタム、ホムホムもいいかもしれない』


『チルラン? タムタム? どんにゃ子にゃっけ』


『呼んでみろよ。その方がてっとり早いぞ。あいつらは小さいから』


 イーアは『チルラン、来て』と言ってみた。


 ぽわんと、ダイヤのような形の橙色の小さい光が空中に出現した。

 チルランの体は数センチくらいで半透明で、上部が丸い小さな顔になっている。そして胸のあたりに丸いオレンジ色の部分がある。

 チルランはそんな形のかわいい妖精だった。


『チルチル、チルチル』


 そんな音をたてながら、チルランはふわふわゆらゆら揺れている。

 イーアは思い出した。


『あー。チルラン。森のにゃかによくうかんでにゃー』


 ガネンの森にはたくさんのチルランがいた。

 ティトは説明した。


『チルランは、ちょっとだけ霊力を回復してくれるんだ。人間は魔力って言ったりするらしいけどな』


 召喚は、召喚獣を呼ぶのにも呼んだ状態を維持するのにも魔力を使う。

 召喚士の魔力がなくなれば、召喚獣は元の世界に帰ってしまう。

 でも、チルランを呼んでおけば、その魔力をちょっとずつ回復できるらしい。


『タムタムはどんにゃこにゃっけー』


 イーアはタムタムを呼んでみた。

 ぽんっと空中に5センチくらいの小さな妖精があらわれた。

 おなかが太鼓みたいな妖精だ。

 タムタムタムタムと、腹鼓を打ち続けている。


『にゃんか、元気ににゃる音楽!』


 イーアは思わず部屋の中で音楽に合わせて踊りだした。

 ティトは解説した。


『タムタムの音楽で元気になると、攻撃力や成功率があがるって言われている。ほんのちょっとだけだけどな』


 イーアは今度はホムホムを呼んでみた。

 ホムホムは直径10センチくらいの、ふわふわとした丸い綿毛の塊みたいな妖精だ。よく見ると、毛の中にふたつ小さな細い腕がついているのがわかる。

 ホムホムもガネンの森のあちこちに漂っていた。

 イーアが呼びだしたホムホムは、ちょうど食事中だったのか、小さな何かを食べていた。


 ティトは解説をした。


『ホムホムが傍にいると体力や傷の回復が早くなるんだ。あと、幸せな気分になれるらしいぞ』


 イーアはさっそく幸せな気分になってきた。


『幸せな気分、にゃれるねー。ホムホム、にゃに食べてるんにゃろ?』


 イーアがそうつぶやくと、ホムホムは食べかけの小さなかけらを差し出した。


『いいよ、いいよ。ホムホムがたべて』


 イーアは遠慮しておいた。

 それを見て思い出したようにティトは言った。


『そういえば、色んな実がなるやつもいる。病気の時はヤモヤモの木、腹が減った時はグムグムの木かアロアロの木を呼べば、果実をくれるかもしれない。いつも実がなっているわけじゃないから、必ずくれるとは限らないけどな』


『グムグムの実、アロアロの実、おいしいにゃ!』


 イーアは昔、ガネンの森で果実を食べた時のことを思い出した。

 あの頃、イーアはただの果実のなる木だと思っていたけど、みんなただの木じゃなくて精霊の一種、霊樹だったらしい。

 そういえば、グムグムの木もアロアロの木も枝や長い葉が勝手にぐにゃぐにゃ動いて実をさしだしてくれたり、歩いたりしていた。

 あの頃のイーアは、植物は歩くものだと思っていた。


 ティトは説明を続けた。


『レントンの木の実は霊力を回復してくれる。それから、ケガした時はカンパベルの花を呼べばいい。アロアロの草でこすってもいいけど、カンパベルの方が効果が高い。ただし、死にそうなやつがいる時は、カンパベルは呼んじゃだめだ。生気をとられて死んじゃうかもしれない』


 難しい特徴があるものもいるけど、ガネンの森には、とにかく薬効のある霊樹や霊草がたくさんいた。


『お薬屋さんができそうにゃねー』


『ガネンの森はいろんなやつがいるからな。ちょっとしたケガや病気なら、たいてい誰か治せるやつがいる。でも、たくさんの人間を治療するほどはいないから、薬屋は無理だぞ』


 薬屋は無理でも、自分と周囲の人間の治療なら十分できそうだ。

 それに、どんな場所に行っても召喚さえできれば飢え死にすることがなさそうだ。


『とってもべんりにゃ!』


 あまり強くはないけれど役に立つ精霊がガネンの森にはたくさんいた。

 ティトは言った。


『あとは……獣の仲間はみんな得意なことがあるけど、いちいち説明してられないな。なんとなくわかるだろ』


『そうにゃね。一度に聞いてもおぼえられにゃいにゃ。今日は勉強おーわり!』


 イーアは『友契の書』を手に持ってタムタムの音楽にあわせて鼻歌を歌いながら、ベッドにとびのると、グムグムの木、アロアロの木、レントンの木をどんどん呼んでいった。

 ガネンの森の霊樹たちは弱いから呼ぶのに必要な魔力が少ないようで、チルラン、タムタム、ホムホムに追加して3体の霊樹を呼んでもイーアはまだ平気だった。


 こうしてイーアの部屋には妖精が漂い、霊樹が茂り、すっかりガネンの森の中みたいになった。

 イーアは今日はもうリラックスすることにして、ベッドの上で手足をのばした。


 グムグムの木はおいしそうな実を腕のようによく曲がる枝で自らもぎとって、イーアにさしだしてくれた。

 地面に着くほどの長い葉をもつアロアロの木は、その長い葉で実をひと房つかんでイーアに渡してくれた。

 3種類の霊樹の中で一番背が高いレントンの木はてっぺんが天井にぶつかりそうになって、窮屈そうに身ぶるいした。すると、勝手にレントンの木の実がベッドの上に落ちてきた。

 木々に囲まれたベッドの上で、グムグムの実とアロアロの実とレントンの実を順番に食べながら、イーアは幸せな気分で言った。


『召喚って、いーね!』


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