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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
3章 しばし平和な学園生活

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24 強くなるための方法

 イーアがガネンの森の精霊たちを思い出そうとしているのは、ガリにアドバイスされたからだ。

 ウェルグァンダルで、イーアはガリにどうやったら強い召喚士になれるのかたずねた。


 ガリは最強の召喚士といわれている。だから、きっと、最強になるための、ものすごいトレーニング方法を知っているはず。

 と思ってイーアはたずねたのだけど、ガリの答えは意外と地味だった。

 ガリの答えは、一言でいうと『まずは召喚獣を知ること』だった。

 ガリは言った。


『自分を知り、自分が呼べる召喚獣のことを知り、適材適所で呼べ。それができるようになったら、世界をまわり、より強い精霊と契約を結ぶ。ウェルグァンダルの召喚士の見果てぬ夢は、そうやって世界中のすべての精霊と契約を結ぶことらしい。俺は興味ないが』


 イーアはそれを聞いて思わず叫んだ。


『たのしそう! 世界中の精霊とにゃかよくにゃる!』


 ガリは興味がないらしいけど、イーアは召喚士の夢に共感した。

 いつか世界中のすべての精霊と仲良くなって、召喚できるようになりたい、と思った。

 でも、ガリは冷たく言った。


『お前にはまだ早い。今のままでは強力な精霊と契約を結ぶ前に命を落とすことになる。精霊は友好的とは限らない。多くの召喚士が精霊に殺され命を落としてきた。今年も死人が出ている』


 死人が出ていると聞いて、イーアは意気消沈した。

 精霊と召喚契約を結ぶということが、そんなに危険なことだとは知らなかった。

 ガリは続けた。


『召喚契約の旅に出たければ、精霊に襲われても勝てる力を手に入れろ。まずは今呼べる召喚獣の能力と特徴を知り、適切なタイミングで召喚できるようにすることだ。単体では弱くても組み合わせれば力を発揮する者もいる。まずは、召喚獣を知れ。すべてはそれからだ』



 というわけで、イーアは『友契の書』にのっている、自分が呼べる召喚獣について知ることにしたのだ。

 ガネンの森の仲間たちは『友契の書』に最初から60種類くらい登録されていた。

 『友契の書』があれば精霊と仲良くなるだけで召喚契約が結べる。だから、イーアが昔ガネンの森で仲よくしていた精霊がみんな召喚可能になっている。


 ちなみに、今は召喚可能な数が68に増えていた。

 ウェルグァンダルで会ったモプーヌ、ククック、マホーキが追加されている。

 ククックということは、なんとクーちゃんを召喚可能らしい。寮にはキッチンがないから、今は呼んでも料理は作ってもらえないけど、キッチンがあるところなら出張シェフにみたいに料理を作ってもらえそうだ。


 イーアは『友契の書』を眺めながら喜んだ。


『こんにゃにいるのってすごい! 呼び放題にゃ!』


 精霊と契約するのが命がけだという話を聞いた後では、とてもありがたく感じる。

 でも、ティトはイーアの横で『友契の書』をのぞきこみながら、ぼそりと言った。


『だけど、ガネンの森に強いやつはいないぞ。ガネンの森じゃ、ラシュトが一番強いんだ』


『そうにゃの?』


『ああ。平和な森だからな』


 たしかに、ガネンの森にそんなに強い精霊がいたら、そもそも白装束の魔導士に滅ぼされていなかっただろう。

 ちょっとがっかりしながら、イーアはふと疑問に思ってティトにたずねた。


『イーランは? とても強いにゃにゃい?』


 イーアが奨学生試験の時になぜか呼びだせた神獣イーランは、『友契の書』にはのっていなかった。

 ティトはあくびをしながら言った。


『イーランは、ガネンの森に住んでるわけじゃないんだ。世界中を旅してるんじゃないか? たまにふらっとガネンの森にも遊びにきて、霊獣の困りごとを聞いて気が向いたら助けてくれたりするんだ』


 イーアはそれを聞いて思い出した。たしかに、ガネンの森にはイーランの来訪を祝うお祭りがあった。

 一度だけ、イーアはそのお祭りの日にティトと遊んでいて、イーランに出会ったことがあった。

 あの時のイーランはとても大きくて荘厳な外見だった。

 でも、あの時は、イーランを見かけただけで、仲良くなったわけではない。

 イーアは首をかしげた。


『こにゃいだは、にゃんでイーラン出てきてくれたんにゃろ?』


 今になってみると、奨学生試験の面接の時にイーランを召喚できたのが、不思議でならない。

 すると、ティトは言った。


『ああ。あれは、たまたまイーランがガネンの森に来てて、おれがイーランと会って話をしてる時だったんだ。一番強い奴出てくれって妙に古めかしい言葉でイーアが呼ぶから。おれが出るわけにはいかないから、おれの代わりにイーランにちょっと顔を出してもらえないか頼んだんだ。まさかほんとに行ってくれるとは思わなかったけどな。気軽に引き受けてくれたぞ』


『そうにゃったにゃ? おかげで、すんごい召喚の才能の持ち主にゃと誤解されにゃったよ』


 人が召喚できるはずのない神獣イーランを呼び出してしまったあの件は、ティトの話によると、とても気軽な偶然だったらしい。

 ティトはまた眠そうにあくびをしながら言った。ティトは夜はたいてい眠そうにしている。


『イーランって強いのか? イーランが戦うところは想像つかないな。そういえば、イーアのことをちょっと見どころがあるって言ってたぞ。でも、気まぐれだから、イーランの助けなんて期待しない方がいいぞ』


『そうにゃね』

 

 イーアはうなずいた。いつかはイーランとも仲良くなって召喚できるようになりたい、とは思うけど。

 今はやっぱりガリの言う通り、すでに呼べる召喚獣の特徴を知って適材適所で召喚できるようになるのが一番だ。

 単体で戦闘力が強い召喚獣はいなくても、これだけの数がいれば、きっと、色んなことができるはず。


『ひとりじゃ弱くても、みんにゃで力をあわせれば! ティト、みんにゃのことを教えて!』 


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