表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
4章 落日の帝国 ~あるいは長いエピローグ~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/226

4-50 落日の王城

 燃え盛る城の中、誰もいない玉座の間に、国王がひとり目をつぶり座っていた。

 深紅のローブの魔導師が足音を響かせ、ひとり孤独な玉座へと近づいた。


「陛下」


 疲れ切った表情で目をつぶったまま白髪の王は言った。


「アスカルか。状況は?」


 アスカルは淡々と報告をした。


「帝都は完全に陥落(かんらく)しました。<白光>も今はクロー派が主導権を握り反乱軍側についたようです。スタグヌス派の残党は戦いを続けていますが、もう勝ち目はありません。この城はギアラド人勢力を中心とする反乱軍に攻められており、まもなく落城するでしょう」


 国王は両目を開き、アスカルを見た。


「ならば、なぜ来た? わしがここで死ぬこともわかっているのだろう」


「責任をとりに。こうなった責任は<星読みの塔>塔主の私にもありますから」


「まさか、こうなると知っていたのか?」


「いいえ。何度も申し上げているように、確たる未来は誰にもわかりません。ですが、私はエレイが真実を伏せているのを知って放置してきました。それがこの結果につながるであろうことを知りながら」


 国王は信じられないといった表情で、あえぐようにたずねた。


「なぜだ? 我が(めい)ごよ。なぜ?」


「エレイは苦しみすぎました。この国のために、文字通り、その身を犠牲にさせられ、人生を失い……。伯父上。この国はあまりに多くの者を犠牲にしてきました。その玉座からは苦しむ下々(しもじも)の姿は見えないでしょう。父がラナ人を妻に(めと)るために王族を離脱してなお、伯父上のご厚意で、私は何不自由ない暮らしをさせてもらいました。ですが、私に流れるラナの血は、王族には見えない下々の姿を見せてきました。私は、伯父上が玉座におられる限り、彼らの側につくことはありません。ですが、彼らの苦しみ、怨嗟(えんさ)の声、新しい国を求める声を聞き続けてなお、エレイや弟子を売り渡すことはできませんでした。せめてもの(つぐな)いに、私が死出(しで)の旅をお供いたします」


 国王は力なくうなだれ、城を破壊する音が響く中、しばし沈黙した。やがて国王はアスカルを見て、懇願(こんがん)するように言った。


「……アスカルよ。かわいい姪よ。まだ間に合う。せめてお前だけは生きなさい」


「いえ。すでに手遅れでしょう。未来を見ることのできぬ私にも、この状況はあきらか……」


 落ち着いた声でそう言い、燃え落ちる玉座の間をアスカルは見渡した。

 アスカルが最後まで言い終える前に、突如、天井が崩れ落ち、玉座の上に落ちた。そこにあった国王の姿は消えていた。


「伯父上……」


 アスカルにも巨大な柱が落下しようとしていた。

 だが、柱に潰される直前、アスカルの体はふきとばされた。


 体当たりしてきたのは、久しぶりにその顔を見る、一番できの悪い弟子だった。


「オッペン!? どうしてここに?」


「なんでって、助けにきたんだよ。窮地(きゅうち)のプリンセスをたすけるのはヒーローの仕事だからな。母ちゃんと同じくらいの年のプリンセスでも」


「だまれ! バカ弟子が! 命をかけることか! 死んだら笑えないぞ」


「だいじょうぶだって。弟子を信じろ! おれも今日はもう未来予知はできねぇけどな! こっちだ!」


 オッペンはアスカルを抱えて、火の壁の切れ目にかけこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ