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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
4章 落日の帝国 ~あるいは長いエピローグ~

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4-46 ラムノスとベグラン

 時はさかのぼり、不死者の王がイーアに倒されるしばらく前。

 ナミンの家にはその日も穏やかに陽光がそそいでいた。木々も草花もおだやかにその日をたのしんでいる、すべてが心地よい日だった。


「ナミン先生、お客さんだよー」


 ナミンの家の入り口で、ナミン、かつてラムノスと呼ばれた者はやさしげな笑顔で訪問者を迎えた。


「久しぶりですね。ベグラン。元気そうでなによりです」


 ベグランは信じられないというような目でナミンを見て、暗く険しい表情で、苦し気につぶやいた。


「なんで、あんたはここにいるんだ」


「ここは私の家です。いつでもここにいますよ。では、散歩にでもいきましょうか」


 木々の間の小路を歩きながらベグランは苦々しく言った。


「なんでだ。あんたのことだ。今日、俺があんたの首を狙って来るのはわかってたくせに。なんで、あんたは逃げも隠れもしないで出てくるんだ」


 ナミンは穏やかな声で言った。


「旧友に居留守をつかうつもりはありませんよ。私を殺さなければ、あなたがウラジナルに殺されるでしょう」


 ベグランは早口にまくりあげるように言った。


「そんなことは、どうでもいい。あんたがいなきゃ、俺はとっくにガキの頃にどこかの路上でくたばってたんだ。なのに、あんたは命の恩人のくせに俺を利用するわけでもなく、見返りを得るわけでもなく、あげくの果てに俺に殺される? そりゃ、あんまりでしょう?」


「私はそうは思いません」


「俺の納得がいかないって言ってんだよ。ああ、わかってますよ。どうせ俺みたいな三下は、あんたにとって利用価値もない。英雄偉人になるように生まれてきたあの子達とは違って。俺がどこで何をしようと、未来は変わらない。そうでしょ?」


 ナミンは淡々と言った。


「未来は知りすぎないほうが人生は楽しいものです。たしかにここまでくれば、私が何をしようと、あなたが何をしようと、アグラシアの運命は大きくは変わりませんが」


「じゃあ、俺が何もしないでこのまま<白光>からとんずらしちまっても、未来は変わらないんすね? よかった、よかった。てっきり、あんたが殺されるところまでがあんたの望む未来を成立させる条件で、あんたは俺に殺される気なのかと思っちまったよ。はいはい、どうせ俺にはそんなたいそうなお役目はありゃしやせんよ。どうせ俺はあんたの夢見る未来には一枚もかんじゃいないんだ。じゃあ、さよなら」


 すねたように言って帰ろうとするベグランに、ナミンは言った。


「世界の未来は変わりません。ですが、この家の子ども達とあなたの未来は大きく変わります。あなたが私の首を持って帰れば、他に犠牲はでません」


「そんな......」


 ナミンはほほえんだ。


「あなた達は死ぬにはまだ若すぎる。私はすでに未来を見ています。ベグラン、あなたはまだ未来を見ていないでしょう?」


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