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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
第4部 3章 不死者の王

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4-41 ウラジナル2

 不死者の王の片腕がオーロラ色のドラゴンの攻撃によって切り落とされた時、ウラジナルの胸は高鳴った。


「来たな。ダークエルフ!」


 ウラジナルの予想通りに、あの少女はヨルヴァ城にあらわれた。

 ついにダークエルフを始末する時がきた。

 そう信じこみ、不死者の王に武器を拾わせ、ウラジナルは次の指示をだそうとしていた。


 その時、扉を叩く音がして、ウラジナル配下の魔導師コルレイが入ってきた。

 コルレイは地位こそ<実践者>だが、今の<白光>の中でもトップクラスの戦闘力を持っている。


 ウラジナルはそのコルレイに<光の休息所>に許可なく入った者を誰であっても殺すように命じてあった。

 特にクロー派の人間が入ってきた時には、裏切りとみなして必ず殺すようにと。

 そして、ウラジナルはベグランにエルツ・クローを誘い出すようにも命じた。


 エルツという少年はウラジナルにとっては、あの憎いダークエルフとつながっている獅子身中の虫だった。

 だが、ホスルッドが平民との間につくった隠し子、帝国貴族の間では軽蔑される私生児でありながら、エルツはクロー派の魔導士達の間ではクロー派の将来を担うホープのように扱われていた。


 エルツがクロー派の魔導士の心をつかんだのは、当主ホスルッドの溺愛のためというより、エルツ自身のその才能だった。

 ホスルッド似の秀麗な外見と、いかにもクローらしい自然魔法の才能を持っているあの少年は、一見おとなしそうだが、実は誰よりもクローらしいと言われていた。


 もともとルールも権力も無視する型破りな個性で知られるクローの一族では、反逆者とつながっていることすら、クローらしい、で片づけられてしまう。

 秩序を重視するウラジナルにとっては、ダークエルフ以上に憎悪をかきたてられる相手だった。

 相手が孫のような年齢の少年にすぎなくても、許せはしなかった。殺したくてたまらなかったが、いかにウラジナルといえど、クロー派全員を敵にまわすわけにはいかなかった。


 だが、エルツが反旗を翻し向こうから戦いをしかけてきた、そして戦闘の中で死んだ、という形であればクロー派も文句はいえない。

 理屈が通じないホスルッドだけは黙っていないかもしれないが、相手がホスルッド一人なら、<白光>団長ウラジナルはその権力で何とでもできる。


 そのために、ウラジナルはあえてエルツをここに誘い出した。

 ウラジナルは、コルレイの口からエルツを殺したという報告がでてくることを期待した。

 だが、コルレイは告げた。


「ウラジナル様、外でホスルッド殿とその息子エルツが自然魔法の打ち合いをしております。このままでは、ここにも被害が生じかねません」


 ホスルッドにかぎつかれたか、と内心舌打ちしながら、ウラジナルは命じた。


「命じたであろう。今、邪魔をする者は誰であれ息の根をとめろ、と」


 ウラジナルから見れば愚鈍にすら見える実直な男コルレイは、当惑したように言った。


「邪魔というより、あの二人はただ魔法試合に興じているように見えるのです。この建物内に入ってくるわけではありませんので。こちらから戦いを仕掛けるわけには……」


「ここに被害が生じそうなのに、それが邪魔でなくて、なんだというのだ!」


「しかし、エルツだけではないのです。ホスルッド殿はエルツをとめようとしているのかもしれず」


「構わん。二人とも殺せ。いかにホスルッドといえ、外にいるベグランとお前が協力すれば始末可能なはずだ」


「ホスルッド殿を? ですが、クロー本家の二人を殺したとなれば……」


 クロー派との全面抗争になるだろう。

 だが、ウラジナルは怒りに駆られコルレイをどなりつけた。


「今は帝国の命運がかかっている時だということがわからぬのか! クロー家がどうなろうと些事(さじ)!」


 その時、突然激しく室内が揺れた。

 固定してなかった魔道具が、斜めになった床を転がり流れていき、ウラジナルは椅子にしがみついた。

 揺れがおさまった時、建物全体が激しく傾き、そして、見えるはずのない空が見え、天井から光が注いでいた。


 ウラジナルは天井を睨みつけた。

 建物自体が半壊し、天井に張り巡らされていた魔法陣が消えている。

 ウラジナルは急いで不死者の王を操作しようとした。

 だが、不死者の王との接続は切れていた。

 今まさにダークエルフの息の根をとめなければいけないこの瞬間に。

 不死者の王は巨大な木偶(でく)となってしまった。


 ウラジナルは椅子を叩き、怒声を上げた。


「エルツ・クロー!」


 あまりの怒りでウラジナルの額には血管が浮き出ていた。


「コルレイ! 皆を呼べ。不死者の王の操作装置と結界を、早急に修復させろ!」


「はっ」


 弟子達が建物内の修復と魔法陣の再作成を始める中、ウラジナルは通信用の水晶を手にとり、いらだちを隠せない声でどなった。


「ベグラン! 貴様、何をやっている! ここを壊されるとは! この責任はとってもらうぞ。言い訳は無用だ。今すぐ、クローの子ネズミを始末しろ。貴様に渡してあるだろう。ググンエルの槍を。報復にクローに拷問される? 今すぐにあの子ネズミをしとめなければ、クローが考え付く拷問の何百倍の苦痛を、貴様にこの手で味わわせてやる!」


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