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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
第4部 3章 不死者の王

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4-31 幽閉されたアラム

 ギルフレイ侯爵領ヨルヴァ城内。


「ぼくは帝都にでもどこにでも連行されますから、領民を避難(ひなん)させてください。このままでは、子どもや老人まで皆、あの怪物、不死者の王の軍勢に殺されてしまいます」


 アラムは必死に訴えたが、帝国軍の将校は「不死者の王」と死せる兵士達のことを信じてくれなかった。

 帝国軍の指揮官はむしろ優しい声でアラムを(さと)すように言った。


「怪物? 不死者の王? そんなものはおりませんよ。落ち着いてください、ギルフレイ卿。我々は、侯爵領内の反乱軍を掃討(そうとう)するまで、ギルフレイ卿をこの城で保護するように命じられているだけです。何も心配することはありません。ここでゆっくりお休みください」


 部屋から帝国軍将校が出て行くと、アラムは絶望的な表情でため息をついた。


「だめだ。あの人達は何も知らされていない。ぼくが精神を病んでいると思ってる」


 アラムの傍に(ひか)えているメイドが無表情なまま落ち着いた声で言った。


「お気をたしかに。いざとなれば我々がアラム様を脱出させます」


「それじゃだめだよ。ベレタ。帝国軍の包囲を()かなければ、領内にいる人達が不死者の王に殺されてしまう。このままじゃ、フレイヤ人だってみんな殺されてしまう」


「我々の最優先(さいゆうせん)事項(じこう)はアラム様の安全です」


 この城の中には、ここでメイドのふりをしているベレタを(ふく)め、かつてのアンドルの部下が何人もいる。

 アンドルには<白光>の部下のほかに、戦地に連れていく子飼いの精鋭(せいえい)がいた。

 元々庶民として育ったアンドルは、普通の大貴族と異なり、部下に実力と忠誠以外を求めず、どんな出自であっても平等に扱った。

 そのため子飼いの部下は皆、平民であり、少数民族の者も多かった。


 その中には、ギルフレイ侯爵領内の先住民族フレイヤ人が幾人(いくにん)もいた。

 アンドルの前の侯爵とその息子はフレイヤ人の虐殺や拷問を行っていたため、アンドルが父と兄を殺した時に、フレイヤ人の一部はアンドルに協力するようになった。


 ベレタはその一人だった。一見、線の細い女性だが、実は凄腕(すごうで)の戦士だ。


 アンドル配下のフレイヤ人達はもともと帝国ではなくアンドル個人に忠誠を(ちか)っており、帝国にはむしろ敵意を(いだ)いていた。

 アンドルの死後、彼らの一部は反帝国をかかげるフレイヤ人組織に加わり、残った者はバルゴとともにアラムの身辺警護に当たった。

 

 警護の者達は普段はアラムのメイドや執事、召使いのふりをしている。

 だから、帝国軍がこの城にやってきた時、暴れたバルゴは監禁されてしまったが、冷静に事態を見ていた他の者は皆、今も城内で何食わぬ顔で働いている。

 彼らはその気になればすぐに城内の帝国軍兵を制圧できるだろう。


 だけど、そんなことをしても今は意味がない。

 帝国軍を城から追い払っても、侯爵領を包囲している帝国軍はいなくなるどころか、むしろ、増援が送られてしまう。


 今はおとなしく何の力もない無能な領主の演技を続けるのが最善の一手、とアラムは判断した。

 そして幸か不幸か、演技の必要すらなかった。

 帝国軍の指揮官は、アラムのことを、反乱軍の脅威(きょうい)の前に精神を病んでしまったかわいそうな少年領主だと思いこんでいる。

 

 ベレタは冷静な声で言った。


「領内の者達は自ら身を守りましょう。できなければ、それまでです。それに、あの化け物は、召喚士の方々が対応してくれるのでは?」


 アラムはよわよわしくうなずいた。


「うん。そうだね。不死者の王のことは、姉さん達を信じよう」


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