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ダークエルフの召喚士 ~精霊の森の生き残り、魔法学校へ行く~  作者: しゃぼてん
第4部2章 新型兵器

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4-13 会議中の異変

 今日の会合の目的は、一斉攻撃の打ち合わせだった。

 これまでは、アグラシアの各地で蜂起した民衆と帝国軍の間で戦闘が頻発していたけれど、全面的な戦争にはなっていなかった。


 多くの人が死傷するような戦争になるのは避けたいと、イーアはずっと思っていた。

 だけど、帝国軍の弾圧は激化していた。

 このまま長びけば、帝国による処刑と虐殺で数え切れないほど多くの人が命を落とす。

 犠牲を減らすためには、戦うしかない。

 今は皆がそう考えていた。


 そしてすでに反帝国勢力は協力すれば帝都を落とせそうなほどに大きくなっていた。


 バララセ解放軍がバララセ北部の帝国支配地帯へ攻撃している間に、アグラシアの反帝国勢力が協力して帝都へ進軍、帝都内の革命主義者が蜂起し、一気に帝都を落とし、王族と政府や軍の高官を押さえる。

 そうすれば最小限の戦闘で革命が達成できると、革命軍の幹部は考えていた。



 古城の一室に帝国に反旗を(ひるがえ)した各勢力の使者や代表が集った。

 イーアは革命戦争には加わらないし、みんなに声はかけたもののイーア自身は反帝国同盟のメンバーではないのだけれど、皆に言われてなんとなく会議に出席することになった。


 会議はうまくいきそうだった。

 そもそもすでにあらかた調整は終えていて、各勢力の攻撃準備も終わっている。

 後は今日の会合で、作戦の詳細と一斉攻撃の日時を決めるだけだった。


 だけど、アグラシアの動乱の隙を狙って、隣の大国、チュラナム共和国が帝国への侵攻を狙っているという不穏な話がでた。


「つまり、反帝国同盟が帝都を落としたとたんに、共和国の大軍が攻めこんでくるということですか?」


 アラムがそう尋ねると、ケイニスは言った。


「すでに、国境沿いの共和国基地にかつてないほどの大軍が集まっている。いつ侵入してきても不思議はない。帝都を落とす前に、背後から共和国が侵攻してくる可能性もある」


「共和国と手を組むという案は?」


 フレイヤ人のリーダーがそうたずねた。机の上に置かれた水晶からザヒの声が聞こえた。


「新たな支配者を受け入れることになるだけだ。共和国側から打診はあったがな」


「その打診、ギアラドは断ったのか?」


 そう尋ねるフレイヤ人リーダーの声は鋭かった。


「俺としては帝国を滅ぼせればそれでいい。受けようかと思ったが、そういう時に限って本物のギアラドの王がしゃしゃりでてくる。共和国の奴らは利用するだけしてギアラドを切り捨てる、と言って反対してきた」


 どうやら、ガリの反対によって、ギアラド人勢力は共和国と手を結ぶことはやめたらしい。


「なるほど。実は我らが元にも同じような話が来た。そちら同様、共和国を信用できぬ故、断ったが」


 フレイヤ人のリーダーがそう言った。

 チュラナム共和国はアグラシア帝国内の様々な組織に協力を持ちかけているようだ。

 共和国にとって敵の敵は味方、ということだろうけれど。

 共和国の目的は勢力の拡大だ。あわよくば帝国領土を奪い取り、アグラシア全域を支配しようと虎視眈々と狙っている。


「共和国を恐れていては何もできない。奴らが攻めてきた時はその時。今は帝国政府を倒すことに……」

 

 革命軍のジャルバンがそう言った時、突然、イーアは一瞬、全身から力が抜けたようになって、前のめりにつっ伏した。




「イーア姉さん!」


 心配そうに呼ぶアラムの声が聞こえた。


「……?」


 イーアが顔を起こすと、ンワラデが不安そうな表情でつぶやくのが見えた。


「今、凄まじい霊力の異変が起こりました。ただ事ではありません」


 いつの間にかアラムはイーアの傍にきていて、心配そうにイーアの顔をのぞきこんでいる。


「イーア姉さん、だいじょうぶですか?」


「だい、じょ……ぶ、だけど、さっき、一瞬、力が抜けて……何が起こったんだろう」


 何か大変なことが起こったことを、イーアは感じ取っていた。

 まるで一瞬で急に霊力を奪いとられたみたいな感じ、周囲の霊力、世界の霊的位相がめちゃくちゃになったみたいな感じがしていた。


 だけど、イーア以外の人でこの会議室で異変を感じたのは、召喚士のンワラデだけみたいだった。

 他の人はあまり感じなかったらしい。


 会合はそのまま進み、作戦が決まり、会議が終わりかけた頃。

 緊急連絡を受けて通信機を耳に当てていたケイニスが険しい表情で言った。


「一斉攻撃を中止する必要があるかもしれない。国境近くの共和国軍基地が突然消失したらしい。おそらく帝国軍による攻撃だが、部隊が展開したわけではない。正体不明の何かが使われた。わかっているのは、それがとてつもない破壊力を持つということだけだ」



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