4-7 塔主の部屋
ウェルグァンダルの塔主の部屋。
壁には、イーアとザヒの戦闘の様子が映しだされていた。
次期塔主を決める召喚バトルは、可能な限り現塔主が見届けなければいけない。
そのためガリはイーアに道具を渡し、決闘の様子を映しだせるようにしてあった。
何も知らない幼い岩竜がゴロゴロ転がって遊んでいる室内で、何かを考えているようにガリは立ち尽くしていた。
幼い岩竜が構ってほしそうに、ガリの足に何度もぶつかっていたが、ガリは無視していた。
ガリの手の中にある『友契の書』は他の召喚士のものとは異なり、表紙にドラゴンの姿が浮かび上がっていた。
その『友契の書』から声が響いた。
『ガディオン。人間とは肉親、恋人、様々な愛に惑わされ、殺し合い続ける愚かな生き物です。我々ドラゴンには理解しがたい存在ですが、私は何千年も、その姿に魅了され続けてきました』
『何を言いたい? ウェルグァンダル』
『あなたもたまには人間らしくわがままを言っても良いのでは? 守りたい者がいれば守ればよいのです』
『俺は人間ではない。ドラゴンだ』
ガリは即座にそう答えたが、慈悲深き竜は告げた。
『いいえ。あなたは黒竜リアウェニヴァの子であると同時に、人の子です。ドラゴンであるために、人間であることを否定する必要はありません。そして、あなたの兄弟達も私も、あなたのちょっとしたわがままにすら付き合わないほど狭量なドラゴンではありません。わかっているでしょう? ガディオン』
ガリは返事をせず、無言でウェルグァンダルの紋様が浮かぶ『友契の書』を見つめた。




